付け焼き刃の覚え書き

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「クリスタル・シンガー」 アン・マキャフリイ

2010-02-19 | 宇宙・スペースオペラ
「目玉の上、そして後ろまで(理論を)詰めた方が良い。生き残れるか否かは反射的に出てくる知識にかかってるかもしれん」
 ヘプタイト・ギルド会長ランゼッキの忠告。

 物語においては主人公のライバルとして才能はあるけれど高慢でいけ好かないキャラクターが登場することがよくあります。そのライバルというか主人公のイジメ役を主役にしたような話が、この『クリスタル・シンガー』。そういう理解で間違っていないと思う。
 面白い話で、分厚い割には何度も読み返すのだけれど、そのたびに主人公である キラシャンドラ・リーの勝ち気で唯我独尊ぶりに辟易するのです。才色兼備とはいえ付きあって楽しい人間じゃないですね。こういうタイプの主人公は男性ならいくらでもいるのですが、こういう一方的なキャラはそもそもキライなのです。
 まあ、それだからこそ前半の彼女の挫折もさほど苦にせずに読んでいけるわけだし、彼女が生業とすることとなるクリスタル・シンガーという職業は、単独作業・疑心暗鬼・健忘症が職業特性なので適性ばっちりですね。社交的な人間には務まらない過酷な職業なのです。

 広大な宇宙に点在する人類社会をつなぐ核となるクリスタル。そのクリスタルはギルドによって独占・封鎖されている惑星ボーリィブランでのみ産出される。採石士は「シンガー」と呼ばれ、自らの歌声をカッターの波長と同調させて水晶を切り出していく。石が良いだけでは意味がない。それを切り出すシンガーの歌声が正しくなければ、クリスタルはただの石クズになってしまうのだ。
 だが、ボーリィブランが封鎖されているのはギルドの利益のためではなかった。それは惑星の環境が、降りた人間に治療不能な変化を与えてしまうのだ……。

 禍福は糾える縄の如し。世の中はギブアンドテイク。シンガーとなることで莫大な富と権威と不老長寿に近い能力を手に入れられる一方で、それに見合うものが失われるのです。
 ボーリィブランへ到達するまでの周囲の人々の不可解な反応にドキドキし、ギルドでの適応訓練の過程にハラハラした後は、植木等の無責任シリーズを思わせるとんとん拍子の大出世! これを鼻持ちならないと思うか痛快無類と感じるかは読者次第。

【クリスタル・シンガー】【アン・マキャフリイ】【絶対音感】【健忘症】【共生】【山師】

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1 コメント

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Unknown (ユキノ)
2010-02-22 23:05:51
続編も読みましたか?
たしかにキラシャンドラは性格が...。
友達になれそうもありません。

でも、世界観が好きです。
歌声をカッターにするという考えが印象的で
マキャフリイが気になり始めた本です。
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