付け焼き刃の覚え書き

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「彩雲国物語 蒼き迷宮の巫女」 雪乃紗衣

2010-04-07 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「好きなもののために在り、そのために生きれば、いつだって世界は心地良い」
 それはあたりまえのことだけれど、王たるものには許されないことだという、門下省長官・旺季の言葉。

 何もしない者には誰も期待しない。いきなり性根を入れ替えたと言われても急に信用できるものではない。
 地震、飛蝗害、そして水害と各地の状況が伝わり始め、このままでは3年で人口が半減することが明らかになる。ほとんど選択肢のない手の内から朝廷は矢継ぎ早に最善と思える手を打っていくが、それは王である劉輝の権威を失墜させ、力を削ぐことでしかなかった。しかし、それ以外に打つ手がないのも事実であり、劉輝に反対することはできなかった。どちらにしろ、もう誰も王には期待していなかった……。

 すべてが王の手から離れていく中、木っ端御史と蔑まれながらも秀麗はただ縹家を動かそうと努力を続けます。けれど、それは劉輝のためではありません。嫌いなものを少しでも減らすため、人々を助けるため。秀麗は最後の時まで役人であり続けようとします。
 最悪の非常時に一官吏に何が出来るのか?……と、だんだん小川一水の『復活の地』みたいになってきました。そもそも、大臣クラスから無名の文官まで、事務方が命令系統を守って与えられた職務を黙々と遂行し、ぎりぎりまで待って耐えて、それでもどうにもならなくなったとき何をするのか……という話ですね。それは門下省長官も異能なき縹家の者たちにしても同じです。
 始まった頃のラブコメっぽさは微塵も残っていません。基本的に、主人公側の方が少数派なのは仕方がないとして、相手の方が有能で、自分の幸せよりも他人の不幸を減らすことを優先して考えているのですから、なんともなりません。
 あとは旺季の不在中に劉輝がどこまで1人で頑張れるか、まだ正体のはっきりしない別の黒幕がどう動くかになるのでしょうか。

【蒼き迷宮の巫女】【彩雲国物語16】【雪乃紗衣】【由羅カイリ】【か弱き者の最後の砦】【食糧隠匿】

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