付け焼き刃の覚え書き

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「同志少女よ、敵を撃て」 逢坂冬馬

2021-12-09 | 戦記・戦史・軍事
「物語の中の兵士は、必ず男の姿をしていた」
 そこには性暴力を振るわれた女性も、戦って敵を殺した女性の姿もない。

 モスクワ近郊の村に住んでいた猟師の娘、セラフィマは侵攻してきたドイツ軍によって虐殺された村の唯一の生き残り。彼女は母を殺したドイツ人狙撃兵に復讐すべく、自らも狙撃兵となった。
 彼女は第39独立親衛小隊へ配属となり、やがて戦場へと出るのだが……。

 ドイツ兵は殺すべき敵だけれど、自分たちをコルホーズに押し込んで悪口さえ言えないソ連邦だって尊敬すべき味方じゃない。仲間の中にもスパイだか密告者はいそうだし、指揮官はいけ好かない女だし、同僚はすぐに死んじゃうし……で、もともとドロドロな東部戦線というか大祖国戦争を舞台に、復讐譚とか微百合要素を入れたりしながら、魔女と呼ばれた狙撃兵部隊の視点で語る戦争小説。
 スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの『戦争は女の顔をしていない』をインスパイアしているであろうことは、最終章でも語られている通り。そもそも最初の一節を読んだ時点で、『戦争は女の顔をしていない』を戦記小説として語りたいのねと悟ったとおり。ただ、クリスティー賞を取ったくらいには、二転三転する仕掛けは用意してあります。

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