付け焼き刃の覚え書き

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「鋼鉄のワルキューレ」 水樹ケイ

2009-04-05 | 架空戦記・仮想戦史
 ドイツ最強の戦車が誕生した。重戦車ケーニヒスティーガーに最新のディーゼルエンジンを搭載して機動力を高めた最速の王虎である。しかし、既にドイツには新たな製造ラインを組み立てる余力はなかった。
 司令部が壊滅した戦車大隊を救い、大きな戦功をあげた士官がいた。しかし、その士官は通信担当の女性だった。
 強力だが量産できない戦車。優秀だが正規の指揮系統には組み込めない士官。
 本来ならば、そのまま闇に葬られるはずだった最強の重戦車と美貌の女性士官は、戦局の悪化により崩壊寸前の東部戦線、北部ポーランドに実験中隊として投入された。だが、輸送途中の敵襲により、中隊は戦車を支援するはずの歩兵の大半を失ってしまう……。

 本屋にふらりと寄ったら、陳列前の新刊に漆黒のハードカバーが転がっていて、気になってそのまま手にとってレジ直行。女性戦車兵の話ってほとんどないものね。今のところ霜越かほるの『双色の瞳』、士郎正宗の『ドミニオン』、伊吹秀明の『出撃っ!猫耳戦車隊』、野上武志の『セーラー服と重戦車』、ゆうきりんの『ぱんほー!』くらい……あ、けっこうあるな。……。
 でも、コメディでもSFでもファンタジーでもないというと、これが最初かな……?
 最初はごく普通の仮想戦記ではないの?と思っていたのだけれど、「兵器」と「戦場」と「人」のどこに力点があるかというと「人」にある、そういう小説でした。ストーリーがケーニヒスティーガー(私の世代にとっては「キングタイガー」)を駆るフリーデ中尉とソビエト戦車軍団の撃破王であるヒョードルとの戦いを軸にしているので、冒険小説っぽい雰囲気が濃厚になっています。
 主役側が、強力だけれど数を揃えられない試作兵器の部隊で補給や支援も満足に受けられず、操縦するのは優秀だけれど正規の戦車兵ではない。敵方のメインキャラは、単身で敵の偵察に乗り込むような歴戦の勇士で撃墜王だけれど、その経歴が明るみになれば粛正されることは必至。その一方で、邪魔な上司は己の手を汚さないよう敵の攻撃を利用して葬っていく……って、この構図はホワイトベースとシャア・アズナブルだなあと思ったら、読むのにヘンなバイアスがかかってしまいましたよ。

 戦史にも兵器にも詳しくないので、本当にこんな戦車が存在する余地はあったのかと訊かれても答えられませんが、面白いから気にしません。松本零士や新谷かおるの戦場マンガが好きなら愉しめるタイプの話だと思います。
 
【鋼鉄のワルキューレ】【ケーニヒスティーガー in WW2東部戦線】【水樹ケイ】【佐藤道明】【学研プラス】【1944年11月】【ディーゼルエンジン】

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