付け焼き刃の覚え書き

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「羽林、乱世を翔る3」 イスラーフィール

2022-10-02 | 架空戦記・仮想戦史
「余は弱いのだ。だが弱いと思われるよりも薄情と思われた方がましだ」
 第13代将軍、足利義輝は自分に力が無いことも愚かなことも知っている。知っていてなお生き方を変えられず、朝廷との関係を良くしようとも親三好に転じることもできないだけだ。

 1560年、織田信長が桶狭間の戦いで今川義元を討ち取った。
 尾張半国も掌握できていない信長が東海道の三国を支配する守護大名を下すなど常識ではあり得ず、単に運が良かったでは片づけられない大番狂わせだ。そこで人々は考える。直前になって尾張を訪れた右少将、飛鳥井基綱が何かしたのではないかと。
 その頃、幕府では近衛稙家が公方に対して基綱を幕府に引き込み利用せよと助言していたが、義輝はそれを拒絶する。公方と基綱は婚姻関係を通じて縁戚関係であり、基綱の出自である朽木家と足利家の関係は深い。だが、それでもそれはできないという。
 基綱は親三好ではないが、彼は強い。強い者は強い者とのみ取引する。基綱は三好とは取引するだろうが、幕府のためには動かないと確信していたのだ……。

 右少将から新蔵人へ任官、祝言を挙げるところまで。
 足利義輝は現状認識できていないのではなく、ちゃんと自分や周囲の人間の能力とその限界、置かれている状況やその関係を把握した上で、基綱から見れば先のない選択肢しか選べなくなっている自暴自爆。かろうじて一歩踏み出そうとしても、現状把握できていない幕臣にご破算にされるだけなのです。
 つまり、側に置く人間は選ぼうね。

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