付け焼き刃の覚え書き

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「タムール記(2) 炎の天蓋」 デイヴィッド・エディングス

2011-12-20 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「権力という不自由なものを容認できるのは、友人にはほうびを与え、敵を罰することができるからですよ」
「すぐれた政治家は人間のもっとも悪い一面をつねにさがしている」

 タムール帝国外務大臣オスカンの言葉。

 タムール帝国では伝説の英雄や昔話の怪物が出没し、人心を惑わせている。太古から蘇った軍勢やトロールの襲撃をくぐり抜け、タムール帝国の都マセリオンに到着したスパーホーク一行は皇帝サラビアンと対面する。
 暗愚を装っていたサラビアンは政治から遠ざけられていたが、ここでも政府転覆の陰謀は進んでいた……。

「学者は往々にして情報の宝庫ですし、政府は学者の発見を無視する傾向がありますからな」
 元パンディオン騎士団長ヴァニオンの言葉。

 もう夫婦そろってエディングスの小説が大好きで、旧版を揃えただけでは飽きたらず、古書店や古本屋で安価で売られているのを発見すれば買いあさり、ベルガリアード物語やマロリオン物語など、中古美品で何セットもそろえては普段用の予備にしたり、贈答に使ったりしてました。
 それが角川書店版も含めてハヤカワ文庫で、今向きのイラストで再版されるようになって万々歳。ウスダヒロのイラストはワールドコンで複製画を購入して額装しましたよ。

 どこが良いかというと、光と闇、善と悪の戦いみたいな壮大な物語を、さまざまな国や種族の運命を呑み込みながら展開しつつ、実際に展開される物語は登場人物たちの軽妙かつ含蓄のある会話のやりとりで彩られてるってところでしょうか。ワクワクして、なおかつ笑えるって部分もあるのが重要。

「あんたがたスティリクム人はよくめそめそする。過去数千年にうけた虐待を慎重にためこんでおいて、暗くてくさいすみっこにすわり、その全部を吐きもどしたり、口いっぱいの吐瀉物みたいにくりかえしかみしめたりするひねくれた喜びが大好きなんだ。自分たちの悩みをなんでもかんでもエレネ人のせいにしようとする」
「おれは自分が生まれる千年前に起きたことよりも、自分が平然とおかした罪のほうによっぽど負い目を感じるね」

 千人議会にて、泥棒にして人殺しなストラゲンの言葉より。

 外交の駆け引きで、譲歩を引き出したい相手に対してよくぞここまで言うなという感じ。単にユーモアがあるだけでなく万事に於いてシビアだよね。

「政治家が真実を言うなんて、だれも思ってやしません」
 さんざん嘘八百の酷いことを言ったことを責められた、ストラゲンの弁明。

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