付け焼き刃の覚え書き

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「ライトノベル☆めった斬り!」 大森望&三村美衣

2021-10-26 | エッセー・人文・科学
 「ライトノベル」と名付けられて10余年。そろそろ「で、結局、ライトノベルってなによ?」と言われるくらいには知名度が上がったらしく、2004年から2005年にかけて総括するムックや書籍が相次いで刊行されます。
 その中で、翻訳家・書評家の大森望とジュブナイルSF研究家・ライトノベル書評家の三村美衣が、対談形式で時代毎にその傾向や人気作などについて語り、その合間合間にブックガイドでそれぞれの時代の代表作を紹介するもので、「ライトノベル三十年史」と銘打っているのは、1976年の平井和正『超革命的中学生集団』あたりがライトノベル第1号だろうという考察からで、1970年から2000年代あたりまでが対象です。
 この本でのライトノベルの定義は、

1)ティーンエイジャーを主なターゲットにしたエンターテインメントであること
2)ただし、大人が子供に向かって書くのではなく、若い作家が同時代感覚を共有する若い読者に向かって書いていること
3)おたく文化/同人誌文化の強い影響下にあり、会話とキャラクターの比重が高く、カバーや本文にマンガ的なイラストが使われることが多いこと

 なんですが、3番目に注意。マンガ絵は必須条件ではないので、まとめれば「マンガ絵が使われることの多いジュブナイル」というのが近い気がします。なので『銀河英雄伝説』や『少女小説家は死なない』あたりまで入ります。
 ただ、マンガ絵を重視していないかというと、70年代にポケット版のハヤカワSFシリーズを文庫に落としてマンガ家にカバーを書かせたらドカンと売上が伸びた話もしています。藤子不二雄とか松本零士とか。具体的には初版1万5000部が5万部になるくらい。

「ライトノベル文庫スタイルの創始者は(二代目SFマガジン編集長)森さんだと言ってもいいくらい。そのおかげで、SF読者が一気に若返った」

 ただ、現在では作家も読者もそのままスライドしてますから、また違った分析と評価になるでしょうね。

「(ブギーポップ以降)蘊蓄と漢語を多用した、男性的なっていうか、昔の歴史小説っぽい、あるいはミリタリーっぽい文体が出てきた」
 押井守、佐藤大輔、新城カズマ、秋山瑞人……だから中年読者が抵抗なく読める。

 『ロードス島戦記』や『炎の蜃気楼』といったライトノベル代表作だけでなく、今では忘れられてしまったけど面白い名作までをフォロー。「自分たちが面白いとは思えないものをお義理で紹介するのも失礼な話」とセレクトしていったら、約4分の1は、一般的なライトノベルのベストにはまず入らないようなものになってしまったとか。

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