付け焼き刃の覚え書き

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「復活の日」 小松左京

2010-02-17 | 破滅SF・侵略・新世界
「セックスは、人間にとってそれほど本質的なものじゃないですよ、ママ。セックスが人生の重大事みたいに考えるのは、小説家の冥蒙ですよ」
 イルマ・オーリックに語った吉住の言葉。生き残った人類1万人のうち女性はたった16人という世界でも人間は懸命に生きようとしている。冥蒙(めいもう)という表現に時代を感じますし、この表現が的確なのか悩んでしまいますが。

 その年のインフルエンザは悪質だった。
 チベット風邪と呼ばれるようになったそれは、今までのインフルエンザと比較して致死性が非常に高い上にワクチンの効果が出にくいタイプだったのだ。懸命にワクチンの開発が急がれ、軍や政府機関はその確保を最優先事項とした。
 しかし、どちらにせよ無駄なことだった。新種のインフルエンザと平行して、未知の致命的流行病が蔓延していたのだ。鶏やアヒルが次々に死んでいき、ワクチン製造に必要な有精卵が不足し始めた。街には回収しきれない死骸があふれ、都市機能・政府機能は次々にマヒしていった……。

 全篇を通じて、ひたすら絶滅に向かって突進していく人類があがくさまが描かれていて、少なくともインフルエンザ流行期に読むもんじゃありません。為すすべもなく人々が倒れ死んでゆく様は壮絶の一言。
 そして後半1/3は、南極に生き残った1万人のサバイバルが描かれます。進んで死ぬ気もないけれど、文字通り命がけでやらなければ人類が今度こそ完全に滅亡してしまうという物語に、最後の最後まで目を離せません。

【復活の日】【小松左京】【生頼範義】【南極】【細菌戦】【中性子爆弾】【流行性感冒】【火炎放射器】【アマチュア無線】

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