付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「百合×薔薇~彼女の為の剣と、彼の為の乙女の園」 伊藤ヒロ

2011-04-14 | 学園小説(不思議や超科学あり)
 この話も『涼宮ハルヒの憂鬱』と同じで、面白いけれどなんか好きになれない作品。ひとことでいえば、「自分の夢に他人を巻き込むんじゃねえ!」ってことなんだけれど、傍若無人なキャラが中心になる話って、それだけで評価が厳しくなるのですが、これはもうしばらく読んでみようかな……という気にはさせられました。

 『おかまでないなら女装が好き』なはずと姉のしらゆきに決めつけられ、花邑べにおは国立バーネット女学院に転入させられてしまう。男なのに。
 そして、転校早々「この女学院は、僕が支配ります。……僕の事は、お姉さまと呼ぶように」と姉のシナリオ通りに宣言し、クラス全員を敵に回してしまう。
 だが、ここは「花使い」たちの園。少女たちの中から何万人に一人の確率で発生する超能力者たちばかりを集めた学園だった……。

 学園超能力バトルにソロリティものと姉妹ものを足してしまったら、できあがったものは番長マンガでした……という感じ。親分子分ではなくお姉さまと妹だし、彼女たちの能力は『舞-乙HiME』というより『ジョジョの奇妙な冒険』じゃないかとは思います。
 男女入れ替わりというと『とりかへばや物語』が有名だけれど、「男が女の姿で学校に入る」というと『クロノ×セクス×コンプレックス』もそうですよね。女以上に女らしく、つい男っぽい部分が出てしまっても、そこがステキと怪しまれるどころかますます人気が出るというあたりは、佐伯かよのの『キャンパス・シンデレラ』かな(こっちは教師だけれども)。でも、この作品みたいな話になると、もはや「男の娘」として完全に別ジャンルになるのかな。気がつくとそういう作品が増えてませんか……?
 個人的には、更衣の観察シーンをもちっとネチッこく描写してくれると、もっと良かったかなと思いました。

【百合×薔薇1】【彼女の為の剣と、彼の為の乙女の園】【伊藤ヒロ】【高見明男】【学園内抗争】【百合の会ソロリティ】【蘭の会議】【姫百合派】
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「空き家課まぼろし譚」 ほしおさなえ

2011-04-13 | ミステリー・推理小説
「どんな人でも、いつかは死ぬ。そして跡形もなく消える。でも、生まれてつかのまここにいるというだけで、実はじゅうぶん希有なことなのかもしれない」
 空き家課・間宮明の言葉。

 海市協会空き家課は、日本海沿岸の小都市である海市の景観を守るため、空き家となった古い建物を保全して賃貸の仲介を行うのが仕事。
 間宮明は課長の娘である小学生、三上汀を職場見学で同行させたことから、彼女の不思議な力の開花を目のあたりにしてしまい……。

 ミステリではあるけれど謎解き小説ではなく、間宮が仕事で扱うことになった空き家にまつわる謎を、汀の幻視の力を借りて解決していくという、どちらかといえば都市奇譚。いや、写真の写された直前の状況を幻視で再現するという力が解決にかなり役立ってはいるけれど、事件そのものは日常の謎とまでいえないものも多いので、奇譚というよりミステリ風味の人情談義に近いかも。今は亡き夫が薔薇の花を植えた理由は何かとか、お嬢様学校の跡地で起きた幽霊騒ぎの真相とか、読者としては登場人物たちが見て触って考えた結果を聞くだけで推理の余地とかはまったくないので、そういう話を期待する人にはお薦めできません。
 面白かったのは「まやかし師」の話。存在しないゲームの紹介本とか、存在しない虫の昆虫図鑑とか、クラフト・エヴィング商會のようにありもしないものをいかにもあるように見せた作家が残した遺産の謎話で、汀の親友である菅谷栞の登場篇。
 もったいないと思ったのは、理由があるとはいえ間宮の行動が単に手癖が悪いようにしか見えず、汀や栞がただ小生意気な子供にしか見えなかったこと。読者は謎解きにいっさい参加できず、ただ登場人物の謎解きを見守るだけなので、もっと応援したくなるキャラクターだったら良かったのにと思いました。 

【まぼろし譚】【ほしおさなえ】【薔薇】【カメラ】【オルガン】【架空本】【菅谷冬彦】【モスキート】【メフィスト】
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「アルテミス・スコードロン~春は出会いの季節です」 扇智史

2011-04-13 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「全てを貫く志で、全てを超える高みに達する。その日まで、共に戦いましょう」
「もうやめることにしたの。私の中だけであなたの考えを判断するのは。私はあなたを信じたし、だからあなたに全てを賭ける」

 極アジア自由経済共同体・国立関東練兵女学院戦術科2年、一ノ瀬沙希の言葉。

 太陽系を突如襲撃した謎の敵「鴉」との戦いが続く地球。思わせぶりに……主人公たちが実戦に参加し、昇進し、多くの仲間や部下を失っているところから話が始まり、主人公・久堂春音と先輩・一ノ瀬沙希ら、主戦力となる機動装甲や複式機甲砲台の搭乗員として訓練を受ける女子生徒たちの日々とその葛藤を描く。

 成績がふるわない新入生が、天才と讃えられる先輩によって抜擢され、周囲の嫉妬や好奇の目にさらされ、悩み苦しみつつも、次第にその才能を開花させていくという、『エースをねらえ!』から連なるスポ根ものの王道路線を突っ走っている最中。状況的にはほとんど『トップをねらえ!』の第1話のままみたいなんだけれど、なんとなく『E.G.コンバット』にも化けそうな予感。『春は出会いの季節です』というタイトルだけでは判りにくいけれど、シリーズ化を想定した第1話的な位置づけなので、先物買いで手を付けるが吉。(2007-10-23)

『リペア』

【アルテミス・スコードロン】【春は出会いの季節です】【扇智史】【機動兵器】【女子校】【特訓】
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「レイセン File3:ワンサイド・ゲームズ」 林トモアキ

2011-04-12 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
『科学は大前提として、利用されるためにある。
 遍く全ての人々に利用されるためにある。
 特定の誰かに利用されるためではない』

 もし科学に善悪があるなら、そこが境目となるのだろう。

 日本にはオカルト事件に対処する組織が3系統存在する。
 組織力は安定しているが運用の柔軟性に欠ける陸上自衛隊・第40普通科連隊。
 逮捕権という切り札でオカルト犯罪に対抗できる警察庁特別資料室。
 南北朝の昔から引き継がれた技術と知識で絶対的な災厄に対抗しうる宮内庁神霊班。
 省庁再編の流れはオカルト部門にまで押し寄せ、再編はともかく互いの能力把握と交流を兼ねて、南の島でコンペが開催されることになったのだが……。

 人相が悪くひきこもりなだけの普通の青年が、天界魔界をひっくり返すような事件に巻き込まれつつ公務員のお仕事を務めていく話で、うちの長男の言葉を借りれば「周囲の人間(とかそれ以外)が人格的に問題あるので、結果的にヒデオ大活躍」の話。
 キャラが多くて追いかけるのがたいへん。あくまで『戦闘城塞マスラヲ』が面白かった人向けの作品ですね。孤島の海岸でキャッキャウフフとか、大砲でドカーンとか。
 
【レイセン】【File3:ワンサイド・ゲームズ】【林トモアキ】【上田夢人】【戦神】【杭打ち】【晒しし者】【バーベキュー】【全身タイツ】【ポロリもあるよ】
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「彼女はつっこまれるのが好き!3」 サイトーマサト

2011-04-11 | アイドル・声優・芸能
 アイドル声優・音無まどかの誕生日が間近に迫り、村人Bこと常村良人はラジオ放送のスタッフらとサプライズ・パーティーの準備をする一方で、なんとかプレゼントを用意したいと考えるのだが……。

 痛高級車、痛ヘリ、痛ジェットとお金持ちは息をするように大金を趣味に投じていますが、そんなのにつきあっていられません。よくぞ、周囲が染まらないなと感心していますが、もしかしたら既に自分たちの考える「普通」が世間一般の「普通」とかい離してしまっているという可能性もあります。比較対象があまりにもバブリーなので気がついていないだけで。
 身近な「普通の高校」と「お嬢様学校と言われる高校」「進学校に区分される高校」などの話を聞いていると、格差と言うより「自分の周囲の環境」を「世間一般」と認識するのは怖い気もします。それが肌にあって幸せなら良いですが、もし苦しかったら一歩横へ動いてみるのも一考。自分の考える「普通」はごく一部の普通であって、世の中にはいろんな「普通」があるということを知った方が良いです。

【彼女はつっこまれるのが好き!3】【サイトーマサト】【魚】【アイドル声優】【水着だらけの運動会】【デパートで買い物】【誕生日】【ウォーターランド】
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「ありすとBOBO(2)」 川崎康宏

2011-04-10 | その他SF(スコシフシギとかも)
「自然との調和が最新のテクノロジーを生むんだね」

 防衛省の施設を謎の人型ロボットが襲撃する。
 事故としてもみ消そうとする防衛省だが、アメリカ軍はこのロボット兵器の奪取または破壊を目的に工作員を送り込んだ。
 特に意味はないけど、海外派兵もしない日本にアメリカが持っていない兵器が存在するのは許せないと……。

 ふと立ち寄った本屋で面陳されていて、「あ、ありすの新刊だーっ」と買ってみたら、刊行は1年前……。
 GA文庫って、よっぽどラノベを置いている店でないと置いてないし、置いてあってもバックナンバーをそれなりに置いてあるところは皆無に近いので、新刊で見つけられないと遭遇は困難。『織田信奈の野望』も新刊以外は書店で見つからなかったしね。

 個人での銃の所持が合法化され、少女が護身用に拳銃を携行するのが珍しくなくなった時代の探偵物語。
 今回は、下町の中小企業と米軍特殊部隊と自衛隊が死闘を繰り広げて死屍累々の話で、結論は「ものづくりニッポン万歳!」という感じかな。「日本製品は余計な機能つけすぎなんだよ!」「グリーンニューディールは野菜を食うとこからはじめろっ!」と罵り合いながらの殴り合いも健在。

「日本でしか造れないものがある。メイドインジャパンの高品質を支えているのはわしらの技術だよ。車もテレビも日本製が世界一だ。なのにそれを造っているわしらのことは誰も顧みない。コストダウンだなんだと圧力をかけ、あげくに生産拠点を海外に移しやがる」

 でも、終盤の弁護士事務所の人材派遣話はどうなるんだろ?

【ありすとBOBO2】【下町決戦兵器マスラオ】【川崎康宏】【千葉サドル】【大田区】【町工場】【マーチン・ゼクー】【職人気質】【遺伝子組み換え人間】【技術実習生】【パワードスーツ】【パームガン】
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「オサキ江戸へ~もののけ本所深川事件帖」 高橋由太

2011-04-09 | 時代・歴史・武侠小説
 周吉は江戸の献残屋の手代で、店の一人娘のお琴に惚れられているが、ちっとも気づかない。
 気づかないと言えば、周吉は妖狐のオサキに憑かれたオサキモチだが、オサキにいわせれば周吉の方がよほど化け物じみているのだが、本人はちっとも気づかず、あくまで自分は普通だと思いこんでいる。
 ところが巷に神隠しの噂が広がる中、お琴が行方不明になり、周吉も辻斬りに襲われて……。

 献残屋というのは簡単に言えば、武家を相手にした贈答品専門のリサイクルショップみたいなものですね。その従業員であるオサキ使いの若者と妖狐のコンビが江戸市中……というより店の界隈で起こる事件の解決に乗りだし、それに謎の老剣術遣い・柳生蜘蛛ノ介が絡むという話。
 イラストからして編集部は畠中恵の路線を狙っているのかなあと思いますが、なんというかチームプレイ的な話が多い「しゃばけ」シリーズに対して、こちらはバディムービーのテイストで、これはこれで面白く読ませていただきました。時代も設定もぜんぜん違うけれど、周吉とオサキの関係には『夏目友人帳』を思い出しました。依存し合っているようでいない、ギブアンドテイクともちょっと違った感じ。
 続刊も早いとこ手に入れたいと思います。

【オサキ江戸へ】【もののけ本所深川事件帖】【高橋由太】【付喪神】【辻斬り】【桜】【鬼隠し】【鬼寺】
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「柳生十兵衛秘剣考」 高井忍

2011-04-08 | ミステリー・推理小説
 "柳生十兵衛"で検索すると真っ先に『百花繚乱』関係の書籍やグッズがずらりと表示されてげんなりしますが、これはこれで表紙イラストがいろんな意味で中身と合っていない気がします。

 男装の女武者・毛利玄達と、ラテン系武芸オタな柳生十兵衛が、諸国放浪の間に遭遇する謎を解いていく剣豪ミステリ。

 ラテン系は言い過ぎかな。武芸オタとしても剣豪武蔵の方が上っぽいです。
 60年ほど前に死んだはずの卜伝を名乗る人物の正体はなにか?とか、他の者の足跡のない雪中で斬り殺されていた武芸者には何が起こったのか?など、隻眼の剣豪と女武者がさまざまな剣豪の秘伝や逸話にかかわる謎を解いていくというのが主眼の短編集。
 こういう話は大好物。剣豪小説として面白いだけでなく、さりげなく歴史上のエピソードと絡めて新解釈を打ち出しているので、時代ミステリとしてもポイントが高いです。

【柳生十兵衛秘剣考】【高井忍】【時代ミステリ】【密室殺人】【宮本武蔵】
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「Aの魔法陣リプレイブック~ガンパレード・マーチ篇」 芝村裕吏

2011-04-07 | 異世界結合・ゲート・ゾーン
 ファンタジーの真ん中で、老人が1人、現実を駆使してファンタジーと戦う姿が見える。

 ゲームデザインの神様・鈴木銀一郎、ついにガンパレに参戦! 1945年呉軍港、1972年ベトナムをプロローグに、1999年の「熊本城攻防戦」、2000年の「銀冠作戦」までをプレイしたTRPGキャンペーンをセッションログと、それを小説に起こしたものを交互に配置し、最後にTRPGシステム「Aの魔法陣」第4版を収録したもの。

 私らの世代のゲーマーにとって「鈴木銀一郎」の名前は「シミュレイター」誌と共にありました。そして「シミュレイター」というのは、シミュレーション・ゲームを戦史から研究したりするゲーム雑誌の古参で、同時期には既にホビージャパンの『タクティクス』があったのだけれど、そしてRPG紹介としては『タクティクス』のドンキーコマンドがもっとも古いのだけれど、今、私らが普通のイメージするRPGリプレイは『シミュレイター』誌に掲載された「七つの祭壇」が最初。さらにカードゲーム・ブーム初期のヒット作「モンスターメーカー」のデザインも鈴木銀一郎……ということで、ガチガチのウォーゲームから萌えカードゲームまで、ゲームといえば、すべて鈴木銀一郎の名前と共にあったようなものです。

 そのいわばゲームの神様が『Aの魔法陣』をプレイし、しかもガンパレを、「熊本城攻防戦」と「銀環作戦」に本人の同一存在として挑んだとなれば、もう万難を排して読むしかありません。
 刮目せよ!という感じ。
 1934年生まれの老ゲームデザイナーが、幻獣との戦いをリアルな戦争作法(指向はアメリカ軍)で切り回し、しかも山場ではきっちり派手なロールプレイを決めて、渋く戦いに収まりをつけるというオールドファン泣かせの逸作。是空とおる・小太刀右京・三輪清宗・海法紀光といった若手エースプレイヤーたちに、ぜんぜん負けてません。
 組み合わせ的にすごく良く、いかにもミリタリーからファンタジーまで何でもありのAマホを象徴するセッションでした。

【Aの魔法陣リプレイブック】【ガンパレード・マーチ篇】【ログインテーブルトークRPGシリーズ】【銀環作戦】【高機動幻想ガンパレード・マーチ】【熊本城攻防戦】【是空とおる】【小太刀右京】【三輪清宗】【海法紀光】【敵は芝村】【TYPE208 エレガンスA】【松本テマリ】
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「ガンパレード・マーチ~アナザー・プリンセス(1)」 長田馨

2011-04-06 | 異世界結合・ゲート・ゾーン
「君は誰よりも重い鎖で戦場に繋がれている。ただ僕はね、どうせ繋がれるなら、少しくらい鎖をきれいに飾ってもいいかと思っているだけだよ、秋草くん」

 人型戦車は、でかくて良いマトだし、死角も多く、運用ははなはだ難しい。しかも、整備の手間は通常の戦車以上にかかる。
 常識的に考えれば、人型戦車を前日に与えられ、次の日には運用しようとするなど正気の沙汰ではない。
 しかし、命令とあればやらざるを得ず、そんな部隊をなんとか使ってやるのが0101小隊<二度寝天国>の仕事だった……。

 熊本城決戦以前の山鹿戦区あたりを舞台にしたコミック版ガンパレの1巻。
 雑誌掲載だと1話あたりのページ数が月刊連載としては物足りなくてヤキモキさせられていますので、コミックとしてまとめ読みできるのは大歓迎。緻密な戦場描写をしっかり堪能できます。
 リタガン準拠の構成なのだそうなので、この先の展開も楽しみですね。

【ガンパレード・マーチ】【アナザー・プリンセス】【長田馨】【芝村裕吏】【促成栽培小役人】【前進観測班】【5121小隊】【にゃあ】
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「7秒後の酒多さんと、俺。(2)」 淺沼広太

2011-04-05 | 学園小説(不思議や超科学あり)
 胸が大きくてかわいくて性格も良いけれどドジっこの酒多さん、料理下手で接客も横柄だけれどそこがM趣味のお客に受けている縁さん、プライベートな人間関係はダメダメなのにウェイターとしては神がかりてきな捌きをみせる川原と、超能力学園モノというより、にぎやかバイト系小説の2冊目。

 人生にはモテ期が3回あるというが、面堂朗は今、そのモテ期が3回分1度に来ているのかもしれないし、まったくの勘違いかもしれない。違っていたら怖い。
 新人バイトの美人女子大生の鬼頭さんは、女性とは普通に話すのに面堂が相手になると「あああああ」としか話せなくなるヘンな人で……。

 普通に、面白いバイト小説でいいよね?
 一応、3巻への引きで終わっているけれど、別に困らない気がするんだ……。

【7秒後の酒多さんと、俺。】【淺沼広太】【飴沢狛】【青春ラブコメ】【メイド喫茶】【球技大会】【ホットケーキ】【偽ツンデレ】
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「県庁おもてなし課」 有川浩

2011-04-04 | その他フィクション
「巧く掴めるキャッチコピーが作れたらその企画は八割勝ってる」
 作家・吉門喬介の言葉。

 観光立県をめざす高知県は、観光部の下にあらたに「おもてなし課」を設置し、高知出身の有名人に観光特使を依頼するが、看板ばかり変えても体質は変わらないお役人仕事。おもてなし課職員の掛水は、特使に依頼した作家・吉門喬介にその手際の悪さや発想の貧困さをめちゃくちゃに罵られ……。

 今では観光大使とかふるさと大使とかどこの県も普通にやっていて、ちょっと調べただけでも名前がずらりと挙がってきますが、挙がってくるだけで、部外者が「ああ、なるほど」と納得できるような成果を上げている人は多くありません。すぐにピンと来るのは、滋賀県の西川貴教か栃木県のU字工事くらい。この話の序盤のおもてなし課職員の“お役所仕事ぶり”がごくありきたりな姿だとすると、それも納得かな。
 そんなことを考えながら読む前半はちょっと辛い。というか、この話における物語上の困難の大半は、登場人物たちの“お役人気質”にあって、初っ端から前例踏襲、形式主義、縦割り行政、上から目線、反対のための反対……なんてものを連続で突きつけられるとお手上げ気分。それを思うと、「イナズマロック フェス」って凄かったんだなあ……。
 ただ、これが動き出すと、話が一気呵成に流れ始め、掛水と多紀の“上司と部下”以上“恋人”未満の関係も良いスパイスになって面白くなります。箸にも棒にもかからなかった職員たちが少しずつ変わりだし、かといって県庁全体が変わったわけでもないので障害はいくらでも出てくるのだけれど、役人の泣き所は役人がいちばんよく知っている!とばかりに反撃しての攻防にもにやりとさせられます。
 読後の感想は「なんか馬路村に行きたくなっちゃいました」かな。

【県庁おもてなし課】【有川浩】【ウチダヒロコ】【観光小説】【恋愛小説】【パンダ誘致論】【高知新聞】
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「花物語」 西尾維新

2011-04-03 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「善や正義は意志であり、それ以外の何かであっちゃあ駄目なんだ」
 神原駿河の言葉。

 高校3年生となった駿河の周囲に、もはや暦や戦場ヶ原たちの姿はない。
 そして彼女はあいかわらず馬鹿だった……。

 神原駿河の一人語りで進む、彼女と詐欺師と悪魔の蒐集家の物語。
 自分を馬鹿と認めた上で、自分の中の弱い部分や暗い部分を直視して認めていく話なので、神原駿河が主役で語り手!……ということから期待するのとは逆に、ひたすらマジメで重い話……なんだけれど、ときどきぽつりぽつりと影を見せる阿良々木暦がすべてを台無しにして、なおかつ最後を締めちゃうという……。
 でも、沼地蠟花はしゃべりすぎ。
 最終的に帳尻合ったというか、神原駿河の物語として納得できる結末でした。

【花物語】【ハノモノガタリ】【するがデビル】【西尾維新】【グリード様】【悪魔様】【るがー】【貝木泥舟】【忍野扇】
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「ビブリア古書堂の事件手帖」 三上延

2011-04-02 | 本屋・図書館・愛書家
「無職の人間なんて昆虫ぐらいの価値しかないのよ!」

 タイトルと表紙イラストから予想したとおりの物語。鎌倉の街を舞台に、内気で文学少女な古書店主と体質的に本が読めない青年が、本をめぐる謎を解いていくというもの。本を食べちゃいやしませんけど、文学少女が本の内容を踏まえて謎解きをしていく話が好きな人にはお薦め。
 本屋姉妹の妹の方がほとんど出番なしだったのが、ちょっと意外。その分だけ2人の関係がはっきりしていたので、1巻の本としては正解かな。

【ビブリア古書堂の事件手帖】【栞子さんと奇妙な客人たち】【三上延】【越島はぐ】【日常の謎】【それから】【せどり屋】【落穂拾ひ・聖アンデルセン】【論理学入門】【晩年】【せどり男爵数奇譚】【メガネっ娘】
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「うらにわのかみさま1」 神野オキナ

2011-04-01 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「世の中は理不尽に出来ておる」
 運命を押しつけに来た虎神様の言葉。

 神無月には日本中の神さまが出雲に集まってしまうように、神無年には世界中の神さまが1年間持ち場を離れて留守になってしまいます。
 その隙をついてこの世界に侵入し、新たな神になろうとする「神もどき」を排除するための仕事を与えられたのが虎神さまであり、その虎神さまの力でSF美少女フィギュアそっくりに変身して戦うことになった女子高生・垣華ユウだった。
 戸惑うユウに母はあっさりと告げた。「ウチはね、神様のお手伝いをする家系なのよ」と。

 沖縄を舞台に世界の存亡を賭けた「かけっこ」と「戦争ごっこ」の物語。

【うらにわのかみさま1】【神野オキナ】【龍炎狼牙】【かけっこ】【戦争ごっこ】【Uボート】【顕現!】
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