付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「本好きの下剋上14」 香月美夜

2018-07-16 | 本屋・図書館・愛書家
 貴族院に入学したローゼマインは最短記録ですべての講義に合格してしまった。図書館に通いたい一心だ。
 晴れて図書館通い許可ができたローゼマインだったが、貴族の常識がまだ十分に身についていない彼女は、次々にトラブルに巻き込まれていく。大領地ダンケルフェルガーとの対決、アナスタージウス王子からの呼び出しとエーレンファストで報告を受け取る保護者たちは「どうしたら、そんなことになるのだ」「いったい何が起こっているのだ」と頭を抱えるばかりだった……。

 騎獣を駆る騎士見習いたちが空を自由に舞い戦う、模擬戦ディッターに参加するローゼマインの戦いが山場になる14冊目。領主候補生にして文官見習いであって騎士見習いではないけれど、実戦に参加しているし、本で戦術とかに目を通しているから、ただがむしゃらに敵陣に突っ込むだけのエーレンフェストの騎士見習いたちよりは解っているのです。
 ローゼマインの図書館大事ゆえの奔放さとか、2年間も眠り続けて貴族教育が不十分とはいえ、ローゼマインが何かするたびに騒ぎが大きくなってしまうのは、彼女だけのせいではなく、かつての政変で大規模な粛正がおこなわれたために社会システムのあちらこちらに支障が出たまま回復しきっていないのが諸悪の根源。だから、読者としてはマインがうかつでそこつだと思うより、「そりゃ仕方がないよー」という立場になっちゃいます。

【本好きの下剋上13~司書になるためには手段を選んでいられません】【第四部 貴族院の自称図書委員II】【香月美夜】【椎名優】【TOブックス】【ビブリア・ファンタジー】【しいなゆう】【四コマ漫画】【チェインドライブラリー】【お茶会】【採寸】
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「VRMMOでサモナー始めました1」 テトメト

2018-07-15 | VRMMO・ゲーム世界
 友人に誘われた少年ユウは、新発売のネットゲーム「FWO(ファンタジー・ワールド・オンライン)」にサモナーで参加することになった。
 キャラ名や容姿にこだわりのないユウは、スキャンデータをほとんどいじらずにキャラメイクしたのだが、もともと小柄で女顔のユウのアバターは、男性体なのにどう見ても美少女になってしまったのだ。その上、召喚獣を確保するためにはドロップアイテムを諦める必要があり、金欠状態が続いていたユウは、たまたま手に入れたレアドロップの装備「うさぎさんセット」の能力強化に目がくらんで装備してしまったため、どこからどう見ても男の娘になってしまったのだ……。

 VRMMORPGの世界では、性別変更できないはずなのに男主人公のアバターが女性にしか見えないケースが頻繁に見られますが、これはその中でも開き直って男の娘になってしまった話。ことあるごとに男ですとエクスキューズはするけれど、外観より能力重視で女性用装備を装備して「リアルじゃないからはずかしくないもん!」と言い切ります。
 それから、サマナーやテイマーが主人公の話は、召喚獣や従魔が活躍する話が多いですけれど、これは主人公がかすむほどの暴れっぷりを見せてくれます、うさぎさんが。「ボーパル」なんて名前を付けるから……。
 「ボーパル(Vorpal)」にそういう意味があるのかなと思ったら、もともとはルイス・キャロルの造語で、それがモンティ・パイソン経由でウィザードリィで首刈りウサギの名前になり、そのまま普通名詞扱いされるようになって現在に到る……っと。そういや、モンティ・パイソンにそんな話があったなあ……ウィザードリィではなかなか侮りがたかったけれど……ここまで来ちゃったわけだ。
 というわけで、ひとことでまとめると「男の娘が使役するウサギさん無双の話」。

【VRMMOでサモナー始めました1】【テトメト】【秋咲りお】【TOブックス】【もふもふ冒険ファンタジー】【かわいいは絶対不変の正義】【ルパンダイブ】【ソロモンの悪夢】【ポートピア殺人事件】【マリーのアトリエ】
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「デッドプール2」 監督:デヴィッド・リーチ

2018-07-14 | 超能力・超人・サイボーグ
「雪だるま、つくろう」

 デッドプールは悪人を殺しまくるヒーローとして世界中を駆け回っていたが、ある事件を契機にX-MENに見習い加入することになった。
 しかし、未来から現れた機械の腕を持つ戦士ケーブルから、孤児であるミュータントのラッセル少年(糖尿病)を守るためにはルールを守るX-MENでは対応できないとして、独自にリクルート活動を行って、ミュータントたちを集めた。
 最強鬼ヤバヒーローチーム「X-フォース」の結成である……。

 ストーリーそのものはシンプルな王道もので、別にバットマンでもトム・クルーズでもサラ・コナーでも主役にはまるんだけれど、デッドプールさんをはめると酷い話になっちゃうんですよね。初っ端から「ローガン」、最後は「ウルヴァリン」、マーベルからDC、ディズニーまで全方位に万遍なくケンカを売る芸風です。いちばん矢面に立ったのは、個人としてはウルヴァリンだけれど、作品としては「アナと雪の女王」かな。「スターウォーズ」もけっこう酷い言われようだったけど。
 忽那汐里のユキオも出番は少ないながら可愛らしく印象的な立ち位置で、バニッシャーは出現シーンのインパクト絶大で、インド系のタクシー運転手は「やっぱりやりやがったな……」という感想。
 硝煙が濃く立ちこめ、血しぶきが霧のようになり、四肢が千切れ飛びまくる話だけれど、あくまでファミリー映画。ゴッドファーザー的な意味合いで。

【デッドプール2】【デヴィッド・リーチ】【ライアン・レイノルズ】【クソ無責任ヒーロー再び見参】【スーパーヒーロー・コメディ映画】【R指定】【恵まれし子らの学園】【ジョシュ・ブローリン】【モリーナ・バッカリン】【ジュリアン・デニソン】【ザジー・ビーツ】【T・J・ミラー】【盲目の老婆】【レスリー・アガムズ】【カラン・ソーニ】【ブリアナ・ヒルデブランド】【ユキオ】【忽那汐里】【シャークネード】【ふんどし】【グリーン・ランタン】
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「ドン松五郎の生活」 井上ひさし

2018-07-13 | その他フィクション
 小説家、松沢先生の飼い犬ドン松五郎は、犬が幸せになるにはまず人間が幸せにならなければ始まらないと、仲間を集めて世直しを始めるのだが……。

 夏目漱石の『吾輩は猫である』に倣い、犬の視点から人間社会を風刺する新聞小説。それをまとめて書籍化し、実写映画化したこともある作品。

「これでは時間の無駄ではないか。ショーなどというまだるっこしい形式をとらずに踊子全員裸にして並べ、客にたっぷり眺めさせ、堪能したところで次と入れ替えればいい」
 ストリップショーで客が踊子を熱心に見るのは丸裸になったときだけと聞いたドン松五郎。ならば最初から全員素っ裸にしておけば面倒がなくて良さそうなものだけれど、人間の男は隠されているものに何かを感じるらしい。

 そうだよねえ。
 あからさまに女性のパンツばかり見せびらかすお色気アクションアニメに色気は感じないし、でっかい大砲を連発するだけのミリタリーSFアニメにも燃えないわけで、やはりタメが大事なんですよ。(個人の感想です)

【ドン松五郎の生活】【井上ひさし】【山下勇三】【新潮文庫】【中日新聞】【誘拐】【革命】【ストリップ】
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「10年ごしの引きニートを辞めて外出したら (5)」 坂東太郎

2018-07-12 | 異世界転移・召喚
 バリア修復の手がかりを探す過程で、元の世界に戻れる可能性が出てきたユージたちは、旅で知り合った仲間や日本にいるネット掲示板住人の力を借りて実験を開始。どうやら、産地が同じ物品であれば送り返せるというところまで到達した。
 しかし、喜ぶ従妹のヨーコに対し、ユージは団長になった開拓地や冒険した仲間たちを残し、還ってしまっていいのかとひとり考えていた。それに自分はもう人殺しなのだ……。

 オリジナル展開で、ウェブ版より短く切り詰めての5巻完結。うまいこと、適当な巻数でまとまったなと思いました。
 とはいえ、結局、掲示板の住人たちの出番が掲示板のみで終わって残念。ニートが異世界に転移して右往左往する話も、異世界に飛ばされた人間が元の世界とインターネット経由でいろいろ情報や物品を取り寄せる話も他にいくらでもあるけれど、異世界に飛ばされた日本人を救おうとネットの掲示板で知恵を出し合っていた同じようなニート集団が、事件をきっかけにニートを辞めて外出し、人と人との関係を強化して新たな道に踏み出す閑話はありませんでした。
 書籍化にあたって切り詰めるなら、むしろ異世界のユージのパートだったと思いました。ユージの異世界冒険と、掲示板の住人のおっかなびっくり現代日本での旅と、どちらが面白かったかといえば後者が好きですから。なにより、ユージが冒険者と商人に連れられ、森の奥から街まで出かけるのも冒険ですが、何年も引きこもっていた男がたかだか徒歩で往復1時間かけて夜中のコンビニに出かけるのも冒険だった……というウェブ版ならではの視点が面白かったんです。

【10年ごしの引きニートを辞めて外出したら (5)】【自宅ごと異世界から転移する?】【坂東太郎】【紅緒】【オーバーラップ文庫】【快適環境で異世界交流する@ホームコメディ】【小説家になろう】
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「枢軸の絆」 内田弘樹

2018-07-11 | 戦記・戦史・軍事
 第二次世界大戦というと社会の教科書ではほんの1ページか2ページで端折られ、本当か嘘か「日本とアメリカが戦争していた」ことから知らない者がいると言われる時代。ミリタリーにちょっと興味がある程度の人間だと、知っていても日本とドイツとイタリアとその他数カ国が、アメリカやイギリスと戦っていた……くらいなんだろうけれど、痩せても枯れても世界大戦というくらいで世界中のさまざまな国や武装勢力が大なり小なり関わっていた戦いでした。
 そんな世界大戦を、米英ソなど世界の国の過半を占めた連合国と戦った、日本、ドイツ、イタリア以外の枢軸国陣営の諸勢力について語った美少女系ミリタリーマガジン『MC☆あくしず』の連載記事をまとめたもの。
 ヴィシー・フランスから南京政府、ロシア解放軍まで、枢軸国側の主義主張に殉じたというよりは、周囲の空気に流されてとか、事実上の占領下なので逆らえなくてとか、敵の敵は味方だからとか、そんな理由で参加してはたいていは酷い結末に陥った国々の、日和見と蛮勇と優柔不断と他人から理解しがたい正義の物語。

【枢軸の絆】【Band of AXIS】【内田弘樹】【EXCEL】【イカロス出版】【異色の戦史解説書】【ベルギー】【イギリス自由軍団】【オランダ】【スイス】【白系ロシア人部隊】【ロシア国民解放軍】【満州国】【蒙古聯合自治政府】【フィリピン第二共和国】【インド国民軍】【自由インド兵団】【ベラルーシ】【ポーランド】【ルーマニア】【ギリシア】【スペイン】【ノルウェー】【コサック】【デンマーク】
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「威圧感◎」 日之浦拓

2018-07-10 | 異世界転生
「明日はどんな一日になるかな? 今から楽しみだな……」

 存在感の薄さのあまり、運転手に気づかれずに車に轢かれて死んでしまった薄井透は、あの世でも天使たちにスルーされて目の前で門を閉ざされるなど、死ぬ前も死んでからもさんざんなことばかり。それは魂の薄さが理由だと、魂を濃くするために異世界へ元の姿形のまま送られて人生やり直しさせられることとなったのだが、チートな能力は魂の濃さから派生するものなので、魂が薄すぎる透に成長補正も身体強化とかチートな力を与えようとすると存在そのものが消えてしまう。
 せめて、存在感の薄さくらいは何とかしてやろうと神から周囲に対する『威圧感』だけ与えられたのだが、その威圧は日常生活に支障が出そうなくらいのものであり、またその対象は人間やモンスターに限定されなかった……。

 威圧感でゴブリンが怯えて目の前でうずくまっていても、それをあえて殺せない普通の感覚の青年のスローライフ。トマトを育てるのに水を少なくした方が美味くなるとか、潮の流れが強い海で育った魚の方が身が締まっているとか、鉄は熱いうちに叩けとかいうけれど、適度なプレッシャーは何にでも効くらしく、「威圧で野菜が美味い!」とか「不治の病が治りました!」くらいはともかく「頑固な汚れも、つけ置き威圧で驚きの白さに!」……って、威圧感万能だなあ。
 話は面白いけど、イラストレイターは大変だなあと思った作品。ヒロインは猫の獣人なんだけれど、獣寄りなんですよ。獣人といっても普通の人間にケモノの耳や尻尾だけがついたものから野獣が二足歩行したものまでデザインの振り幅が大きいのだけれど、これは髭とか四肢のバランスとかかなり獣寄り。確かに可愛いけれど、肉球の付いた手にペンや食器を持たせたり、手を組ませたりと苦労してるように見えました。

【威圧感◎】【戦闘系チート持ちの成り上がらない村人スローライフ】【日之浦拓】【こよいみつき】【HJ NOVELS】【成り上がらない系異世界スローライフ】【ケモナー】【肉球】【スライム】
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「モスクワ」 レオ・グルリオー

2018-07-09 | エッセー・人文・科学
「じゃあ君は、我々の大臣がバスに乗るべきだというのか」
 通り過ぎる高級リムジンを使う人々をどう思うかと、著者が知人に尋ねた時の回答。
 モスクワ市民でもノーメンクラトゥーラと呼ばれる共産党・政財界のトップクラスの人材は庶民と比較して恵まれて贅沢だが、それに対する市民感情は憤りではなく羨望であった。各種特権が職業に付随するのはあたりまえのことなのだ。

 今回は1933年から1975年まで、何度もモスクワに長期滞在して取材を続けていたアメリカのジャーナリストが、戦時下の様子から70年代の住宅事情や買い物風景まで記録したもの。革命後の窮乏と闘争の時代から第一次5カ年計画を経て、豊かな時代に足を踏み入れかけた途端のスターリンによる粛正劇に絶望してモスクワを離れた著者が再び舞い戻り、経済が躍進しつつも資本主義社会と比較するとどこか古ぼけていて、非効率な街の様子と、対照的に完璧を目指す芸術やページェントを語ります。

「この10日間に凶悪犯罪は何も起きていない」
 1974年秋、警察庁長官は記者会見でそう語ったが、その間に殺人鬼が1人脱獄して、10数件の婦女暴行の末に再逮捕されていた。
 当時のモスクワでは犯罪統計は集計されていなかったし、マスコミもほとんど犯罪を報じていなかった。

 それなりに経済発展しても当時は公共サービスも不十分で、物資不足もあいかわらず。申請にやたら手間暇と時間がかかる公共のサービスに疲れ果てた人々は、「ワーシャ」と呼ばれる闇のサービスに水道修理などを依頼しています。

【モスクワ】【タイム 世界の大都市】【レオ・グルリオー】【ピート・ターナー】【ディック・ローワン】【タイムライフブックス】【鉄のカーテン】【メトロ】【結婚事情】【人民の敵】【赤の広場】【モスクワ戦線】【フルシチョフ改革】【ブレジネフ時代】【フルシチョビイ】【間違い電話】【墓標】【スボートニク】【日光浴】【冬】【農産物マーケット】【闇市】【ワーシャおじさん】【ロック音楽】【バレリーナ】
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「悪魔の孤独と水銀糖の少女」 紅玉いづき

2018-07-08 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「自分が何者であるかは、自分を愛した人だけが決めてくれる」
 世界で最後の死霊術師達の孫娘、シュガーリアに迷いはない。

 黒い海の向こう、莫大な財宝が眠るという黄金の島は、この数十年というもの、足を踏み入れて戻ってきた者がいないという悪魔の島だ。
 この孤島に流れ着いた少女は、禁忌に触れるとして排斥され、滅ぼされた死霊術師たちの孫娘。彼女の目的は島にいるという隠者に会うことだった……。

 孤独の島を舞台にした、男と少女と悪魔の物語。
 寡作だけれど、その作品が紡ぎ出す世界は異質で美味。死者たちの王国で繰り広げられる、生者と死者と人形の物語はじっくり堪能しようと思いつつ、一気に読了。

【悪魔の孤独と水銀糖の少女】【紅玉いづき】【赤岸K】【電撃文庫】【極上のファンタジー】【ネクロマンサー】【悪魔背負い】【復讐譚】
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「異世界のんびり農家02」 内藤騎之介

2018-07-07 | 異世界転移・召喚
「大事な話だ。率直に聞く。ゴードン。お前たちは、他種族との交配は可能か?」
 別に女の子は嫌いじゃないけれど、村に女性ばかり増えてしまうのは困るので、どんな種族でも良いから独身男性に来て欲しいのだ。

 吸血姫ルーがヒラクの子を産み、天使のティアも妊娠中。村の住人もかなり増えていて、男性も何人か加わっているが、獣人の男はまだ子供で、リザードマンは他種族の異性に興味がなく、エルダードワーフは「ロリコンではない」ので髯の生えていない女に興味はないという。ヒラクの夜はあいかわらず忙しく、つてを頼っての移住者探しはやめられない。
 やっと新たな移住希望者が見つかったのだが、今度は逆に予定の3倍を超える数の難民が、既に大樹の森に向けて移動開始しているという。ヒラクは慌てて開拓村の拡張に動き出した……。

 登場人物の急増に合わせて、巻末に人名辞典を掲載した安心設計。かゆいところに手が届く親切な本造りがされてます。
 ほんわかのんびりした小さな村だけど、敵に回したら国の1つや2つは簡単に滅んでしまいそうなのに、村長にはあまり自覚がなく、村を訪れた人が気を失ったり服を何度も着替えるのを軽くスルーしている怖さ。本人は前世のままの普通の人間のつもりなので、自分がたいして怖くもないものは他人にもたいして脅威じゃないと思っちゃうんですよね。
 ヒトばかりでなく、蜘蛛も狼も繁殖しまくって、たいへんなことになっていますが。

【異世界のんびり農家02】【内藤騎之介】【やすも】【エンターブレイン】【ほのぼのスローライフ・ファンタジー】【万能農具】【鉄腕DASH】【小説家になろう】【武闘会】【報償メダル】【水車】【ダンジョン探索】【始祖】
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「異世界のんびり農家01」 内藤騎之介

2018-07-06 | 異世界転移・召喚
「落ち着いたら、あの42人も俺の寝室に来るのだろうか」
 村も少しずつ住民が増えてくるが、なぜか移住希望者はすべて若い女性ばかり。こんな森の奥まで逃れてくるにはそれなりの訳ありで、戦に巻き込まれて男は残って最後まで戦ったからとかいう事情があったりするわけだけれど、村でただ1人の男としてはせめてもう何人か男性が欲しいとヒラクは思わないではいられない。

 街尾火楽は39歳で病死した。良いこともない人生で、ブラック企業で酷使され、病院で10年近く闘病しての死だ。
 そんな彼に異世界で人生をやり直しさせてやろうという神様に、ヒラクは願った。今度の人生は、健康な体で、人のあまりいないところで農業をやって生きてみたいと。
 彼が送り込まれたのは森の中。死の森と呼ばれ、普通の人間なら兵士や猟師でも1時間も持たずに死んでしまうであろう、魔獣の跋扈する土地だった……。

 健康な体にしてもらった男が、人の住めるはずもない危険な密林の真ん中に住居と畑を作り、そこに人が集まり、次第に村が大きくなっていく物語。最初120ページほどは、ひたすら住居を作り、畑を耕し、やってくる獣や魔獣を相手にする日々。文字通りののんびり農家。普通にチートでハーレムになっていくわけですが、この序盤の農作業の日々が溜になってます。
 本の作りも丁寧で、表紙を開くとまず野菜。そこの仕掛けにどっきり。章ごとに村が大きくなっていく様が地図で記され、イラストもきちんと見せ場を押さえている安心設計。良い仕事してるわー。
 ウェブ版は携帯小説みたいな単文が続く、主人公のモノローグと会話文中心の構成で、これ、文章としてどうかなあ?と思わないでもなかったけれど、その時点で400話以上ある話をもう1度読み返し始めた時点で「ああ、この話は面白いし、自分は好きなんだ」と確信し、買いに走って正解。ただ、あえていうなら「槍は農具じゃない」と思うんです。せめて熊手かピッチフォーク、もしくはスコップにしとけよと。

【異世界のんびり農家01】【内藤騎之介】【やすも】【エンターブレイン】【スローライフ・農業ファンタジー】【万能農具】【口減らし】【鉄腕DASH】【小説家になろう】【お風呂】【塩】
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「薬屋のひとりごと7」 日向夏

2018-07-05 | ミステリー・推理小説
「ずいぶん、大きいですね」
「ええ、頑張って育てましたので」


 高順の持ち込んだ面倒ごと、猫猫に女官試験を受けさせ再び後宮に送り込もうという企みもとりあえず成功。猫猫は新たに医官専属の女官となった。
 もちろん当然のように猫猫の同僚となった女官たちは、やっかみで意地悪を仕掛けてくるが、猫猫はそんなことは気にしない。それよりも鬱陶しいのは、彼女の周りに常に出没している面倒くさい変人軍師であった……。

 お約束の上司や同僚の嫌がらせ、または嫌がらせに見える仕掛けでありますが、そんなものは右から左にスルーするのが猫猫クオリティ。それよりも厄介なのは、後宮の妃らへの毒殺騒ぎなのです……ということで、後宮を舞台にしたミステリはまだまだ続きます。姚と燕燕と猫猫の微妙な関係も今回のポイントです。

【薬屋のひとりごと7】【日向夏】【しのとうこ】【ヒーロー文庫】【見目麗しい中世の痛快ミステリー】【小説家になろう】【ウェブ小説】【食中毒】【蛙の卵】
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「望まぬ不死の冒険者[3]」 丘野優

2018-07-04 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 《タラスクの沼》で無事に竜血花を採取したレントは、その帰路に都市マルトの運営に古くから関わるラトゥール家に仕えているというイザークという青年と出会う。
 怪物タラスクを討伐できる人物ならば竜血花の定期採取を依頼したいとイザークは言うのだが、依頼の詳しい話を聞くためにラトゥール家を訪れたレントの目の前に現れたのは、広大な庭園迷路だった……。

 不死者レントの存在進化の物語。眷属のこれからの活躍にも期待が持てますし、一歩一歩、遅々としながらも前進し続けます。「はやく人間になりたい!!」ってところでしょうが、無事に願いは成就するのでしょうか?
 そして、レントたちに弟子ができますが、その弟子の指導にかけひきに互いのちょっとしたプライドが見え隠れして笑えます。

【望まぬ不死の冒険者[3]】【丘野優】【じゃいあん】【オーバーラップ】【人外転生ファンタジー】【ゴーレム】
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「信長公弟記」 彩戸ゆめ

2018-07-03 | 戦国転生・歴史改変
「甘く見てたわ、戦国時代」

 太ったサラリーマンが寒い朝にトイレで胸をウッと押さえて成仏……することなく、気づいたら戦国時代に転生していた。どうやら、史実では乗馬中に弓で射られて死んでしまった織田家の八男、喜六郎として蘇ったらしい。
 ところが、彼は特に日本史に詳しいわけでも戦国のシミュレーションをやりこんだわけでもなく、前世チート知識らしい知識もない。せいぜいテレビでアイドルが農業とかを体験する「鉄板RUSH」とかをぼんやりみていた程度の知識しかなかった……。

 転生に大切なことは、すべて鉄腕DASHで学んだ……さすがに硝石までは作ってなかったけど……。
 作品の雰囲気とイラストがちゃんとマッチした1冊。これから親族兄弟で争い合う戦国の世の織田家中で、果たして百歳大往生はできるか!?

【信長公弟記~織田さんちの八男です】【彩戸ゆめ】【緋色雪】【宝島社】【ほのぼの戦国ストーリー】【硝石】【農機具】【百人一首】【ムクロジ】【枕】【布団】【千歯こき】
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「二度目の人生を異世界で18」 まいん

2018-07-02 | 異世界転生
「やはりこういうのは最後の一撃はみんなで力を合わせて一斉に、というのが王道だな」
 こんな表紙ではありますが、ついに魔王城に突入して最終決戦です。

 邪竜の群の攻撃をかいくぐり、レンヤたちの空中戦艦はついに魔王の居城を射程に収めた。
 しかし、周囲に張り巡らされた障壁は、魔導砲の二斉射にさえ耐え、レンヤは艦での体当たりを決意した……。

 やりたい放題の最終決戦は、魔王と勇者は対の存在として、それ以外の者には倒せないという縛りの中で激戦が繰り広げられます。
 イラストも今回はやりたい放題というか、こんなシーンまで!というようなところまで、見せ場はきっちり押さえて、良い仕事してます。

【二度目の人生を異世界で18】【まいん】【かぼちゃ】【HJ NOVELS】【小説家になろう】【やりたい放題異世界冒険譚】【異世界転生】【仮想砲身】【デウスエクスマキナ】【エンディングロール】
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