中沢新一 2015年2月 角川学芸出版
書店に積まれてたのを買ったのは、3月だったかな。買って安心してしまってしばらく置いといたんで、読んだのはもう二,三か月あとだったか。
収められているものの大部分が、書かれたのは1995年から97年だという、月イチの連載。
なぜか書籍化されずに原稿が眠っていたそうだが、こういうものの発掘はうれしいかぎり。
(ちなみに連載してたのは小学館、今回の出版は角川。なぜ? いずれにしてもKADOKAWA、グッジョブ!)
内容は、日本の古典の解説なんだが、編集者のリクエストが、「いままでの国文学の先生がたのぜったいに書かないような斬新な解説」でということだったらしい。言う方も言うほうだが、応えてちゃんと書くほうもさすがだ。
古典文学を生み出してきた、日本人の心的な空間の構造をあきらかにしようと試みたものだというのだが、そんな難しいコンセプトの意味わかろうとしなくても、読んでみりゃそれでおもしろい。
はじめて読んだときは、文学の方法とかそういうことよりも、
>(略)奈良朝時代以来の日本の国家というものが、もともと奇妙な二重構造として(略)国家というものが生まれる以前からあった、部族社会の仕組みが、新時代に見事に適応しながら、相変わらずの生命をまっというしていたのである。
>(略)大地に根ざした部族社会的なものと、天の超越にささえられた律令の国家とは、あんまりうまくかみ合っていない。(略)意識の底では「家」思考にしばられていながら、理想は超越の国家という、今も昔も変わらぬ分裂である。(p162「大鏡」)
とか、
>(略)『日本書紀』の作者たちがとりくまなければならなかったのは、大王ないし天皇を中心にしてつくられた政治体制を、いかにして普遍性をそなえた国家として、解釈していったらよいのか、という問題だったのだ。(p190「日本書紀」)
>(略)小国家の間に演じられる、国際的な政治ゲームに参画することによって、日本はむしろ自分が、そういう国際的なゲームに参加資格を持った、立派な国家であることを、内外に確認しようとしていたように、思えるのだ。(p192「日本書紀」)
とかって、現在にもつながる、というか全然変わってない、解決されてない、政治的なことの指摘が印象に残った。
コンテンツは以下のとおり。とりあげた古典と、実にビシッと本質を撃ち抜くかのような著者の文章のタイトル。
1源氏物語 権力のポルノグラフィー
2万葉集 I背中の後ろを流れる霊/II越境するポイエーシス/IIIある「終わり」をめぐる歌
3新古今和歌集 幽玄の神秘主義
4歎異抄 大地に知を棄てる
5東海道中膝栗毛 驚異的な軽薄
6松尾芭蕉 人間の底を踏み抜く
7栄花物語 女が歴史を書くということ
8日本霊異記 国家を超えるカルマの法則
9蜻蛉日記 リビドーの裏地に描かれた女性文学
10雨月物語 「婬」の自然思想
11太平記 Iイデオロギーとテクノロジーのカオス/IIカタストロフィの予兆
12井原西鶴 I恋する換喩/II恋愛の純粋構造/III崩れゆく可能世界
13大鏡 道長、擬制の成功
14宇治拾遺物語 打ち棄てられ、地を這う「餓鬼」と「聖」
15夜の寝覚 精神分析としての物語
16日本書紀 老獪なる国家建設の書
17近松門左衛門 人形、悲劇の化身
18禅竹 中世的思考の花
19謡曲江口 菩薩としての遊女
…実に美しい装丁の本。
書店に積まれてたのを買ったのは、3月だったかな。買って安心してしまってしばらく置いといたんで、読んだのはもう二,三か月あとだったか。
収められているものの大部分が、書かれたのは1995年から97年だという、月イチの連載。
なぜか書籍化されずに原稿が眠っていたそうだが、こういうものの発掘はうれしいかぎり。
(ちなみに連載してたのは小学館、今回の出版は角川。なぜ? いずれにしてもKADOKAWA、グッジョブ!)
内容は、日本の古典の解説なんだが、編集者のリクエストが、「いままでの国文学の先生がたのぜったいに書かないような斬新な解説」でということだったらしい。言う方も言うほうだが、応えてちゃんと書くほうもさすがだ。
古典文学を生み出してきた、日本人の心的な空間の構造をあきらかにしようと試みたものだというのだが、そんな難しいコンセプトの意味わかろうとしなくても、読んでみりゃそれでおもしろい。
はじめて読んだときは、文学の方法とかそういうことよりも、
>(略)奈良朝時代以来の日本の国家というものが、もともと奇妙な二重構造として(略)国家というものが生まれる以前からあった、部族社会の仕組みが、新時代に見事に適応しながら、相変わらずの生命をまっというしていたのである。
>(略)大地に根ざした部族社会的なものと、天の超越にささえられた律令の国家とは、あんまりうまくかみ合っていない。(略)意識の底では「家」思考にしばられていながら、理想は超越の国家という、今も昔も変わらぬ分裂である。(p162「大鏡」)
とか、
>(略)『日本書紀』の作者たちがとりくまなければならなかったのは、大王ないし天皇を中心にしてつくられた政治体制を、いかにして普遍性をそなえた国家として、解釈していったらよいのか、という問題だったのだ。(p190「日本書紀」)
>(略)小国家の間に演じられる、国際的な政治ゲームに参画することによって、日本はむしろ自分が、そういう国際的なゲームに参加資格を持った、立派な国家であることを、内外に確認しようとしていたように、思えるのだ。(p192「日本書紀」)
とかって、現在にもつながる、というか全然変わってない、解決されてない、政治的なことの指摘が印象に残った。
コンテンツは以下のとおり。とりあげた古典と、実にビシッと本質を撃ち抜くかのような著者の文章のタイトル。
1源氏物語 権力のポルノグラフィー
2万葉集 I背中の後ろを流れる霊/II越境するポイエーシス/IIIある「終わり」をめぐる歌
3新古今和歌集 幽玄の神秘主義
4歎異抄 大地に知を棄てる
5東海道中膝栗毛 驚異的な軽薄
6松尾芭蕉 人間の底を踏み抜く
7栄花物語 女が歴史を書くということ
8日本霊異記 国家を超えるカルマの法則
9蜻蛉日記 リビドーの裏地に描かれた女性文学
10雨月物語 「婬」の自然思想
11太平記 Iイデオロギーとテクノロジーのカオス/IIカタストロフィの予兆
12井原西鶴 I恋する換喩/II恋愛の純粋構造/III崩れゆく可能世界
13大鏡 道長、擬制の成功
14宇治拾遺物語 打ち棄てられ、地を這う「餓鬼」と「聖」
15夜の寝覚 精神分析としての物語
16日本書紀 老獪なる国家建設の書
17近松門左衛門 人形、悲劇の化身
18禅竹 中世的思考の花
19謡曲江口 菩薩としての遊女
…実に美しい装丁の本。