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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

危険な未亡人

2015-09-11 20:47:53 | 読んだ本
E・S・ガードナー/高橋豊訳 1990年 ハヤカワ・ミステリ文庫版
というわけで、「欲しいものがなにかわかっていない奴は、欲しいものを手に入れることができない」というフレーズを探すために読み続けたことのある、ペリイ・メイスンシリーズのひとつ。持ってる文庫は、古本っぽくないなあ、改訳版だっていうけど、それを書店で買ったのかな。
原題は「THE CASE OF THE DANGEROUS DOWAGER」だけど、DOWAGERって単語は知らなかったな。冒頭のシーンで、メイスンが面と向かって何と言おうかためらってると、依頼人である女性が自らその呼称を使ったようだけどね。
それはさておき、依頼人のマチルダ・ベンソンさんは、強烈なタイプのおばさんで、住所と年齢をメイスンに訊かれても「年齢は知ったことじゃないわ」と言い放つ。
でも、孫娘の家族にはもう六つになる娘がいて、実はひいおばあさんという立場だと言う。物語の中盤でイブニングドレス姿で現れた彼女は「どうみても五十代後半にしか見えなかった」って描写されてるけど、物語の最後のほうでは68歳だと彼女自らが明かす。
まあ、トシはいいとして、依頼の内容は、小さい娘もいるのに賭博好きが止まない孫娘のシルビアのことで、バクチに負けてシルビアがつくった借用証をメイスンに取り返してほしいという。
そうやって孫娘が単純にかわいいのかと思うと、甘やかす気はないので、自分が借金分のカネを出すことは、シルビアにも借用証を持ってる側にも知られたくない、という条件つき。
借用証を持ってる賭博の胴元のほうでは、それをシルビアの夫に高いカネで引き取らせようとしているふしがあって、そうなるといずれ起きる離婚の争いで妻は不利になるというややこしい状況もからんでいる。
ということでメイスンは探偵のドレイクと一緒に、十二海里領海水域の外に停泊している賭博船に乗り込んでって、一芝居うつことになったわけだが、不運も重なりこれが失敗におわる。
借用証を取り返すどころか、そこでお約束の殺人事件が起きたのに巻きこまれてしまう。容疑者は現場である船に居合わせたシルビアになるし、メイスンも逃亡を助けた共犯の容疑で追われる。
自分の捜査がおわらないうちに拘束されるわけにはいかないメイスンは身を隠して動きまわるが、ドレイクの配下の探偵が裏切って新聞に情報を漏らしたため、圧倒的不利な立場になり、「重罪の私和、事後共犯および殺人の容疑」で逮捕令状まで用意されることになってしまう。
でも、渡された召喚状で出頭を命ぜられた連邦大陪審までは行かず、地方検事事務所に関係者一同が会した場で、大逆転劇が起きて、事件は解決する、ちゃんちゃん。そこではメイスン以上に依頼人の未亡人が活躍するという異例の展開。
どうでもいいけど、本作でメイスンをかくまうべく活躍する秘書のデラ・ストリートのはたらきは、いつもながらたいしたもので、
>「先生の考えてることは二文節先までわかってるわ」
とか
>「ポール、先生がこうしろといったら、あたしはやるわ。彼に反対してもむだだということを、あたしは経験で知ってるのよ」
とか
>「でも、たぶんむだでしょうね。火山の上に坐るのが大好きな人なんだから」
とかメイスンのことを理解しているセリフが多い。
夜明け前にドレイクを叩き起こして捜査状況の報告を求めたときに、「われらの敵に混乱を」なんて言って乾杯するのは、なかなか素敵な態度です。
コメント
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