many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

ロンリー・ハート

2017-09-03 18:26:50 | 読んだ本
デイモン・ラニアン/加島祥造訳 1983年 新書館
ことし6月に神保町で『ブロードウェイの出来事』と一緒に手に入れた、「デイモン・ラニアン作品集3」。
探してたのは、それしか書名知らなかった『ブロードウェイの出来事』だけだったんだけど、同じ著者の短編集がほかにも二つあって(すでに持ってた『野郎どもと女たち』もあった)、迷わず買った。
どれも発行時の定価より高かったんで出費かさんでしまったが、出会ったときを逃さず買わないと、古本というのは次いつ御目にかかることできるかわからない。
いやいや、それにしたって、買って読んで正解。
どの作品もおもしろい。出てくるキャラはカタギぢゃなくて強烈だし、奇想天外のハプニング満載の展開だし、ちゃんとおかしいオチもついてる。
それに、この文体がねえ、全編とも素性のしれない《おれ》が一人称で語るんだけど、第二次大戦前のニューヨークの酒場ってのはこんな調子でしゃべる奴ばかりなのかと思うと、その時代のほうが今より楽しそうだなって気がしてくる。
「ベースボール・ハティ」Baseball Hattie(1938)
>おれは今まで、男でも女でも、野球狂をたくさん見てきている。しかしまずその中でいちばんひどいのはと言うと、このベースボール・ハティだ、本当だぜ。それも彼女は「ジャイアンツ狂」だから、このポロ・グラウンズ球場での試合は絶対に見のがさないし、時にはよその町での試合にも顔を出したがね。
「勝馬はどれだ」Pick the Winner(1933)
>ある晩のことだ。《穴馬》ハービーと婚約者のミス・キューティ・シングルトンとおれの三人は、二番街の小さな汚いレストランで南部風のモツの煮込みを食べている。この煮込みってのは結構いける料理だし、値段も手ごろなんだ。するとその時、ウッドヘッド教授がぶらりとはいってくる。
「葬儀屋の歌」Undertaker Song(1934)
>ところで、このフットボールの話をする前に、まず世間の嫌われ者といわれる連中の話をするよ。その手はじめが、ジョーイ・パハップスという男だ。ジョーイ・パハップスがどんなにいやらしい人間かを一口で言えば、「あんなやつ、お前にくれてやるから勝手にするがいい」ってところだろうね。
「リトル・ミス・マーカー」Little Miss Marker(1932)
>とにかく、ベソ公は以前には死にものぐるいで金を貯めこんでたのに、今はそれを湯水みたいに使うようになる。その金の使い方がマーキーのことだけじゃあないんだ。《ミンディ》やほかの店でも、ひとの勘定まで払うようになるんだ。他人におごるなんて、以前のあいつならいちばん嫌いなことなのにな。
「みなさん、陛下に乾杯」Gentlemen,to the King(1931)
彼女は立ちあがってグラスを頭の上にかざしてこう言うんだ。「紳士のみなさん、陛下に乾杯!」そこでおれも立ちあがる。チーズケーキ・イジーもジョー・ジョーもおれたちにならって立ち上がる、そしておれたちは声を合わせて言う。「陛下に乾杯!」
「地震」Earthquake(1934)
この前このジョニー・ブラニガンに会ったのは四十八丁目のグッドタイム・チャーリー・バーンスタインの店だ。三人の警官と一緒に《地震(アース・クウエイク)》を捕えにきている。なぜ《地震》なんてあだ名がついてるかというと、この男、人を震えあがらせるのが大好きだからさ。
「クレオ」Cleo(1941)
デブデブとおれは晩飯を食べ、仔牛のクレオは瓶でミルクを飲む。アンブローズはおれたちのテーブルに坐りこんで、デブデブがクレオの目と仔牛の目が似ていたのでその仔牛を買ったこと、名前もクレオと名づけたことなどを興味深そうに聞く。
「ロンリー・ハート」Lonely Heart(1937)
さて、《ウイドウ》クラムの夫という役は決して悪くないんだ。何故かというと、姿、形、性質はどうであれ、彼女はおしゃべり女じゃないからで、一日一緒にいてもほんの二、三言しか口をきかない。反対にナイスリー・ナイスリーは根っからの話好きだから、一人で好きなだけしゃべっていられる。
コメント
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