many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

彼方へ

2017-09-17 20:15:24 | 丸谷才一
丸谷才一 昭和52年 集英社文庫版
古本屋で買った、丸谷才一の中編小説、巻末解説込で144ページという薄い文庫だが。
値段の話しちゃおかしいが、高かったよ。
昭和52年10月の2刷だが、定価160円のところ450円の値がついてた、281.25%って、もしかして自分のもってるなかでも最高値かも(笑)
さて、なかみはというと、著者にはめずらしく現代仮名づかいで書かれている。
>グレイのスラックスにグレイのセーターの真佐子がタイプ用紙を入れて巻込みかけたとき、派手なグリーンの背広の大久保健は、マントルピースの上の富士山の置物を指で叩いて、にやっと笑った。
とか、
>正が自分でさえ気がつかないくらい歩度を落したとき、ノリコは、健の手にした水割りのグラスに自分のグラスをかちんと合せた。
とかって、一続きの文のなかで、場面展開を変えるというか、フォーカスをあてる登場人物を切り替えるといった、変わった技法を使っているのが目についた。
厄年くらいの会社重役の兄と、8つ下の舞台俳優やってる弟が主人公。
兄は会社のタイピストと浮気してるし、弟は女性タレントと逢瀬を重ねている。
兄の浮気相手の26歳という若い女性が、死後の世界を信じている、
>人間にとっての死後というのは、会社勤めの女の子にとっての結婚生活に当る。女の子にとって会社勤めが仮りの生活であるように、人間にとってこの世の精は仮りの宿りにすぎぬ
とか、ヘンなこというもんだから、そのことを兄弟で話し合ったあと、二人ともなんか死後のこと考えるのが頭の片隅にひっかかってしまうようになる。
コメント
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