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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

奇食珍食

2018-12-08 18:51:29 | 読んだ本
小泉武夫 昭和62年 中央公論社
ことし9月に古本まつりで見かけて買ってみた、以前『酒肴奇譚』って本がおもしろかった著者なので。
見たことない本だったから、つい勢いで買ったけど、あとで文庫本もあること知った、なら文庫でよかった、重い本は増やしたくないから。
タイトルそのまんまのなかみ、世界中のヘンな食べものいっぱい紹介してくれてる。
たとえば、アマゾン流域で現地の人が食べるという「ヒルを使った牛血ソーセージなるもの」。
山に行って血吸い山ヒルを50匹ほどつかまえてきて、夜になったらそれを飼ってる牛5頭に10匹ずつくっつけとく、
血を吸って五倍くらいに丸く膨らんで、重さでポタポタ落ちてきたら収穫、巨峰の実に色形が似てて一回りくらい大きいとか。
茹でてそのままか、炒って塩ふってやや硬めにしてからか、野菜と煮込んでシチューにするかで、食うんだと。
え゛ーっ、って私なんかは思うんだが、著者は「機会があれば、ぜひ私も試食してみたいと切望しているのだが、未だ実現せず悔やしく思っている(p.46)」というんだから、たくましい。
日本のものでは、たとえば、ウサギの脳味噌の塩茹で、これは著者は東北の温泉場で食べたという。
>皮をはぎ、内臓をとりのぞいたウサギを丸ごと少々の塩を入れた湯で茹で上げる。その脳天の頭骨に穴を開け、そこからスプーンで脳味噌をすくいだし食べるものだが、鮟鱇のキモのような、またカニ味噌のような味がして実に珍味であった。(p.92)
ということだが、食べ方のコツはウサギの顔を正面から見ないことだそうだ、やっぱ怨めしい顔みたら味わかんなくなるのか。
べつに料亭とかを食べ歩きして取材してたりするだけってわけぢゃなく、御本人も料理が好きらしい。
珍しいもの食べてみたいけど、誰も料理してくんないから、自分でつくったのが、たとえば「ゴンズイの柳川風」。
ゴンズイって、毒のあるあぶない魚で、釣れちゃったら触らないで釣り糸から切ったりしたような気がするんだが。
>頭ごと胸びれを落し、内臓をとって軽く水で洗ってから三枚におろす。それを長いまま、ささがきした牛蒡、玉ネギと共に底広の鍋に入れ、味醂、醤油、塩、砂糖で濃い目に調味し、グツグツと煮込んで途中、少々の味噌を味醂で溶いたものをかくし味として加え、さらに上からといた卵で柳川風にとじてでき上り。(p.59)
ってのを、伊豆に学生たちと二泊の旅行に行った先の民宿で、台所借りて作っちゃったそうだ、なんかスゴイね。
若いころから食に対して好奇心旺盛だったらしく、高等学校時代には友達といっしょに、本で読んだフォアグラにあこがれて実験をしたとか。
鶏を米俵にとじこめて運動させないで、詰め込めるだけ餌を食わせる、朝夕くりかえすこと二週間。
ふつうの鶏より大きく重くなって、歩くのも難儀そうな鶏ができあがったので、いざ解剖。
そしたら肝臓の肥大なんて起きちゃおらず、全身黄色い皮下脂肪の山になってただけの失敗、肉もなくて食べても脂肪だけ。
同じ鳥の章のとこに、ぜいたくな話の例もあって、奇食とはいってもゲテモノばかり集めたってわけでもない。
邱永漢氏の『食は広州に在り』からの引用と断りながら挙げられてるのは、
>家鴨も同じく二十日ぐらいは絶対に運動をさせず、砕米で飼っているうちに家鴨の皮が黄色からしだいに白く変じてくるまで待つ。家鴨の蹼(みずかき)を食べるときには、鉄板を熱くした上に家鴨の大群を追い込む。鉄板の熱さで、家鴨の蹼が充血してきたところで、脚を切っておとし、肉のほうは下僕にくれてやり、自分は蹼のほうだけを食べる。(p.76)
肉をくれてやるってところが、美食の秘訣だな。
章立ては以下のとおり。
「虫」
「爬虫類と両生類」
「軟体動物・腔腸動物」
「魚」
「鳥」
「哺乳類」
「灰」
「奇料理・珍料理」
「奇酒・珍酒」
コメント
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