丸谷才一 二〇一二年 ちくま文庫
「ミステリー」、「海外篇」と同時期に買った書評集。
巻末の注によれば、1964年から2001年までに書かれたものから、122+1篇を収録したもの。
既存の単行本に未収録のものが23含まれてるというんで、どれがそうなのか知らなくても、なんとなくありがたいのはわかる。
並びは著者の五十音順になってるみたいで、まあそれは何がベターなのかわからないし、いいのでは。
最初の「書評と「週刊朝日」」という章で、著者は、書評の信用できる理由について、
>しかし何と言つても大事なのは、その書評の書き方の感じだと思ふ。しつかりした文章、藝のある話術、該博な知識、バランスのとれた論理、才気煥発の冗談などを駆使する書評家に接すれば、読者はその記事を疑ふことなどできなくなり、彼が褒めてゐる(あるいはすくなくとも関心を寄せてゐる)その本がぜひ読みたいと思ふに決つてゐるのである。(p.25)
って書いてるけど、それは丸谷さんの書評にそのまんまあてはまることだと私は思う。
今回とりあえず読んでみたくなったのの例としては、鹿島茂『セーラー服とエッフェル塔』、
>これは男たちが一杯やりながらの話題を満載した本で、その種のものとして第一級に属する。
とか、
>話術の妙もあるけれど、論證の藝の見事さに目を見張りたい。
とかって言われちゃうと、興味もたずにはいられない。
あと、薄田泣菫『茶話』、これは大正時代の毎日新聞のコラムだそうだけど、
>芥川龍之介はその愛読者で、灯ともしごろともなると夕刊の配達を心待ちしたといふ。
なんて紹介のされかたされちゃうと、気になってしかたない。