石川真澄・広瀬道貞 一九八九年 岩波書店
去年押入れの段ボール箱から30年ぶりに出してきたもののひとつ。
著者は二人とも朝日新聞のひとで、そういうわけだから本書は政治学っていうより、ジャーナリズムって感じになる。
だいたいそういうお立場だと、自民党批判ってことになりそうなもんだが、べつに特段偏向した考えではないみたい。
ただ、自民党政権を揺るがす可能性を検討するってのには、当時はリクルート事件起きたばっかの時期だし、ずっと自民党の一党優位がつづくと、権力は腐敗するよって問題意識がある、それはわかる。
でも、まあ、ごたぶんにもれず私が持ってる古い本は、中選挙区時代の話だから、いま読むと、当時はそういうもんだったって過去のことになっちゃうとこあるけど、歴史の勉強にはなる。
野党第一党だった社会党が自民党の変化に対応できず凋落してったとか、自民党はもともと農村部で強かったけど80年代には都市部とか若年層に支持が広がったとか、そういうのはありきたりであまりおもしろくない。
本書をパラパラと読み直して(最初に読んだときの記憶はないんだけど)、おもしろかったのは第三章の後援会の話。
>総選挙の情勢取材をするとき、新聞記者がまっさきに調べるのは自民党候補の各陣営に参加する市町村長の数である。その多寡が強弱の重要なメドになる。次に農協幹部と土建業者たちの動向である。(p.143)
というのは新聞記者らしい視点で、世論調査の集計という方法をとる学問とはちょっとちがう。
地域の医師会とか、理容師の組合、飲食店やパチンコ店など風俗営業の協会、福祉系団体、教育系団体、商店街とか商工会、運輸・交通系団体などなど、どういうとこから推薦状もらって選挙事務所に貼ってあるかってのが集票マシーンを理解することにつながるという。
後援会ってのは、たとえば学校で一緒だったひとたちとかの個人的つながりで集める部分がひとつ、それ以外にそういう地域のいろんな業種の団体がさらにあるってのが自民党の特徴。
個人的なつながりのほうは、冠婚葬祭に顔出したり、旅行に行ったり、就職あっせん頼まれたりって性格がつよいけど、業界団体のほうは最終的な目的は補助金を引っ張ってくるってことになる。
で、財政が厳しくなって、臨時行政調査会の提言なんかで補助金の整理・削減をすすめたときも、政治の介入の余地のない「制度的な補助金」で国の負担は減らすことはしたけど、政治の裁量により決める「政策的な補助金」は維持されたと。
経済効率重視で資源を投入するのが合理的なはずなんだけど、ここはそれぢゃできないから国の支援が必要なんだ的な論理で、自分の選挙区にもってっちゃうんだよね、しょうがないなあ。
あと、「経団連の政治献金」とか「派閥の資金調達の構図」とかについて書かれてる第四章もおもしろかった。
コンテンツは以下のとおり。
第一章 自民党と反対党――野党はどのように保守政権を支えたか――
第二章 自民党支持の社会構造と選挙
第三章 後援会――組織政党としての自民党――
第四章 企業と自民党
第五章 統治機関としての自民党
終章 将来に関する若干の考察