many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

約束された場所で underground 2

2021-01-23 17:48:19 | 村上春樹

村上春樹 2001年 文春文庫版
まだ読んだことなかった村上春樹を読むことにするか、と思って古本屋行くと探したりするようにしてんだけど、これは去年夏に地元で買った文庫。
サブタイトルのとおり、『アンダーグラウンド』の続編、単行本は1998年。
出版当時に出たこと知ってたはずだけど手に取らなかったのは、たぶん『アンダーグラウンド』が私にとってはあまり面白くなかったからではないかと。読み直したりしてないしね。
前作は地下鉄サリン事件の被害者へのインタビューなんだけど、こちらはオウム真理教の信者(元信者)へのインタビュー、もしかしたら、それも私があまり興味をもたなかった理由かもしれない。
で、読んでみたんだけど、やっぱ、ちょっと、何言ってんだかみたいに感じるとこあって、正直それほどおもしろくない。
でも、巻末に河合隼雄氏との対談があって、そこで河合さんの言ってるの読むことで、なんか救われた感があった。
>河合 それでね、インタビューの中にオウムに入ってちょっとやっているうちに身体の調子がぱっと良くなったという人がいたでしょう。あれ、僕はようわかるんです。僕らのとこにもそういう人が訪ねてこられます。で、会って話していてこう思うんです。こういう人はたとえばオウムみたいなところに行ったらいっぺんでぱっととれるやろなと。それは村上さん流に言うたらひとつの箱の中にぽこっと入ることなんです。だからいっぺん入ったら、ぱっと治ってしまいます。(略)
>ところがいったん入ってしまったら、今度は箱をどうするかというものすごい大きい問題を抱えることになります。だから僕らはそういう人を箱に入れずに治ってもらおうとします。(p.301-302)
とかって、治そうとか、しかも早く治そうとかって考えをとらず、さらに続けて、
>河合 (略)絶対帰依です。これは楽といえば楽でいいです。この人たちを見ていると、世界に対して「これはなんか変だ」と疑問を持っているわけです、みんなで、その「何か変だ」というのは、箱の中に入ると、「これはカルマだ」ということで全部きれいに説明がついてしまうわけです。(略)
>でもね、全部説明がつく論理なんてものは絶対だめなんです。僕らにいわせたらそうなります。そやけど、普通の人は全部説明できるものが好きなんですよ。
と言って、簡単そうな解決を性急に求めないことの重要性を説いてくれるんで、安心する。うーむ。
コンテンツは以下のとおり。
インタビュー
狩野浩之「ひょっとしてこれは本当にオウムがやったのかもしれない」
波村秋生「ノストラダムスの大予言にあわせて人生のスケジュールを組んでいます」
寺畑多聞「僕にとって尊師は、疑問を最終的に解いてくれるはずの人でした」
増谷始「これはもう人体実験に近かったですね」
神田美由紀「実を言いますと、私の前世は男性だったんです」
細井真一「ここに残っていたら絶対に死ぬなと、そのとき思いました」
岩倉晴美「麻原さんに性的な関係を迫られたことがあります」
高橋英利「裁判で麻原の言動を見ていると、吐き気がしてきます」
河合隼雄氏との対話
『アンダーグラウンド』をめぐって
「悪」を抱えて生きる

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする