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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

ブラウン神父の醜聞

2021-07-17 18:48:48 | 読んだ本

G・K・チェスタトン/福田恆存+中村保男訳 1961年 創元推理文庫版
去年11月に「ブラウン神父の秘密」といっしょに地元の古本屋で買った、最近になってやっと読んだ。
原題「THE SCANDAL OF FATHER BROWN」は1935年の刊行、第五短編集、これで5冊ぜんぶ順番に読み終えることができた。
本書の巻末「訳者あとがき」において、これらの短編小説はテクニカルな推理小説っていうよりも、「寓話的な物語」ととらえてもいいんぢゃないだろうかみたいに解説されてるけど、私も数読み進むうちにそんなふうに思うようになった。
もともと私が興味もって読んでみようと思ったのは、丸谷才一さんが「大人の童話」としてほめていたからで。
たしかに読んでみれば、単に犯人捜しとか謎解きとかを目的とするんぢゃなくて、ちょっとしたオチもある短編小説みたいに思うようになってきた。
ちょっとヘンぢゃないって気がしても、そう来たかぁ的にだまされるのを楽しめばそれでいいかって感じ。
なんだろう、たとえばモーパッサンとか(あまり適当ぢゃない類比だな?)、そういう短編小説のつもりでとりかかればいいんぢゃないかと、ブラウン神父も名探偵というよりは狂言回しみたいなもんだと思って。
一読したなかで、おもしろいと思ったのは「古書の呪い」だろうか。
心霊現象の研究に詳しいオープンショウ教授のところに、プリングル氏という宣教師が尋ねて来る。
西アフリカに赴任したときに、ある大尉から革張りの古書をもらった。
大尉が言うには、この本を開くと、その人は跡形もなく消えてしまう、この本の前の持ち主とは船で一緒になったのだが、その男は本を開けて中を見たために行方不明になってしまった。
そんなことをテントの中で話し合っていて、プリングル氏が後ろを向いているあいだに、大尉が黙ってしまい、振り返ると本はテーブルに伏せて開いてあって、大尉の姿はどこにもなかった。
そんな話は信じらんないオープンショウ教授は、いま本はどこにあるのかと訊くと、客はこの部屋の外の事務室に預けたという。
ふたりで奥の部屋から出て事務室へ入っていくと、本は包み紙からひっぱりだされて机に置いてあり、そこにいるはずの事務員の姿は跡かたもなく消えていた。
なにがどうしてどうなったのかは、ブラウン神父がたちどころに推理するんだけどね、なんでこんな事件が起きちゃったのかって理由を知ると、まあバカバカしいくらいにおもしろい。
コンテンツは以下のとおり。
ブラウン神父の醜聞
手早いやつ
古書の呪い
緑の人
《ブルー》氏の追跡
共産主義者の犯罪
ピンの意味
とけない問題
村の吸血鬼

コメント
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