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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

ラードナー傑作短篇集

2022-01-22 18:30:14 | 読んだ本

ラードナー/加島祥造訳 1989年 福武文庫
リング・ラードナーを読んでみようと思ったのは、こないだ『本当の翻訳の話をしよう』を読んだら、めちゃめちゃホメられてたからで、柴田元幸さんは、
>イギリスの小説が描写で読ませるとすれば、アメリカの小説は声で読ませるんだと思う。マーク・トウェインからはじまって、リング・ラードナーもそうだし……与太話をべらべら喋ってるだけなんだけど、そこに魅力がある。(略)
>ラードナーに限らず、昔の短篇は、書き手が「自分は物語を語れるんだ」という信念から語りはじめていて、(略)(『本当の翻訳の話をしよう』p.27-29)
みたいに言ってて、そりゃ読んでみたくなった。
ほんとは『アリバイ・アイク』ってのを探してたんだけど、去年11月ころだったか地元の古本屋で本書を見つけて、目次みたら「弁解屋(アリバイ)アイク」入ってたんで、とりあえず買った、読んだの最近(先にフィリップ・ロスとか読んでたんで)。
読み始めたら、いきなり、
>やつの本名はフランク・X・ファレルというんだがね、どうもXってのは、「言いわけ(イクスキューズ・ミイ)」のX(イクス)じゃねえかなあ。なぜってこの男、ファインプレーした時も失敗した時も、球場にいる時も外にいる時も、何かやったらきまって「ごめんよ、実は――」って言いわけか弁解をやるんだ。(p.5)
みたいな調子なので、なんだかデイモン・ラニアンみたいだなって思ったんだけど、訳者がいっしょでした。
収録作は以下のとおり。
「弁解屋(アリバイ)アイク」
なんかっつーと言いわけするんでアリバイ・アイクってあだ名をつけられた野球選手の話。
失敗したときだけならともかく、去年の打率が三割五分六厘もあるのに、「シーズンの間ずっとマラリアに罹ってたもんでねえ」とか、ライトスタンドへホームラン打っておきながら、「あんなにあわてて振らなければ、センター・スタンドをオーバーするやつを打てたんだけどね」とか言う、ヘンな奴。
「自由の館」
ミュージカルの作曲・指揮者の夫人が語り部で、いろんな興行先でホテルの滞在客から週末はうちの別荘に来てくれ、みたいな招待がもちかけられるので、それを望まない夫のために断る。
夫は、ひとさまの家に泊まると、部屋が寒かったり、ベッドサイドにスタンドがなかったりと不自由なのが嫌い、滞在から逃げ出すためには自分で自分宛てに急用の電報を打って、それを口実にして引き上げる。
「相部屋の男」
野球選手のエリオットの奇行でチームメートは誰が相部屋になっても彼のことを嫌がった。
バッティングはいいが守備はダメなエリオットは、滞在先では一晩中バスルームの水を流しっぱなしにしたり、夜中にひげを剃りだしたり、はては大声で歌い出す。
「でっちあげ」
ボクシングを始めて一年とすこしのバークは、いまやウェルター級のチャンピオンに挑む位置にあった。
しかし、彼はどの相手とやっても、ノックアウトできるはずなのに、撫でるみたいなパンチしか出さなかった。
彼が本気を出して相手を殴るには、それなりの理由がなくてはならなかったんで、トレーナーたちは策を考える。
「ハリー・ケーン」
語り部のキャッチャーからも大馬鹿よばわりされる、二十歳の新人投手ケーンの話。
おかしな服で現れ、歩き方がのろのろしてるこの男、すごい速球を投げるんだが、スカウトされてメジャーリーグに行きたくなかったのは、町にいる恋人と離れたくなかったからだとかぬかす。
「散髪の間に」
語り部は理容師、はじめての客にこの町のことを語るという体裁。
変わり者のジム・ケンドールはひとをからかうのが好きで、突拍子もないいたずらばかり考えつく男だったという。
「ハーモニー」
首位を走る野球チームの若手選手ウォルドロンは4割を打って、ホームラン9本、盗塁25、さらに歌がうまくてピアノもひける。
他チームの秘密兵器のはずだったこの選手をいかにスカウトしたのか訊かれた監督は、外野手のアート・グレアムが掘り出してきたのだという。
ウォルドロンにポジション奪われてアートはまもなくお払い箱になるが、チームメートのビル・コールが監督も知らないウォルドロン発掘の秘話を記者に語る。

 

コメント
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