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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

先生とわたし

2016-09-13 20:06:11 | 四方田犬彦
四方田犬彦 平成22年 新潮文庫版
四方田犬彦の、えーと、なんだろ、カバー裏表紙によれば「評論」だけど。
1990年に亡くなった、英文学者で東大名誉教授、由良君美(ゆらきみよし)の話。
東京大学教養学部文科三類に入学した著者が、二年に進級した1973年に「メルヘンの論理」という全学共通ゼミに参加したときから、その師弟関係は始まる。
当時助教授だった由良氏は、なんせすごい博学で、あらゆる書物を読破してるとしか思えない存在で、その議論は多岐にわたって飛躍するとみせて、実に理路整然としてたらしい。
その独特の雰囲気に魅かれて集まった学生のせいで、
>こうして由良ゼミは、けっして多人数でないが、東大のなかでどこか正統的な教養に不満を抱いていたり、専攻という狭い枠のなかに思考を閉じ込めることを肯じない学生たちを吸い上げる不思議な役割をもつことになった(p.90)
っていう知の場所が出来上がってったそうな。
>すべて教育には顕教と密教の、二つの側面があるといわれるが、金曜日第5時間目のゼミはまだまだ、たかが顕教に過ぎなかった。実はその後に密教の部分が控えていたのである。(p.34)
といって、ゼミの後に個人研究室に学生が訪ねていってからのやりとりが描かれているが、そういうのってとてもいいなあとは思う。
私なんかは、義務のような発表や討論の時間が終われば、同級のみんなと遊び行っちゃうだけだったからねえ。
で、本書は、ざっと5章からなるんだけど、(1)先生との出会いとそのゼミの内容、(2)先生の業績をはじめとする年代記、(3)先生の出自、特に哲学者である父との関係、(4)先生と著者の決裂、(5)著者の考える「教育」とか「師弟」とかについて、って感じの構成になってる。
厚い信頼関係があったようだったのに、やがて弟子のほうから訣別を決意せざるをえなくなるんで、けっこう悲劇的な話ではある。
どっちにも言い分あるだろうし、当事者にしかわかんない機微一杯ある関係だろうから、なんともそれ以上の感想はないねえ。
ところで、あちこちで触れられてるけど、この由良先生の読書量はハンパぢゃなくて、
>彼はもっぱら読むことの愉しみのために読み、読書の範囲を決して限定しなかった(p.167)
ってあるように、いろんなもの読んで、自分のアタマのなかではそれが整理されてたらしい。
んー、本書読むまで残念ながら私はその存在を全く知らなかったんだけど、このひとの著書をなにか読んでみようか、いま考えてる。




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