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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

犬たちの肖像

2015-10-22 21:33:52 | 四方田犬彦
四方田犬彦 2015年6月 集英社
書店で買ったのは7月ころだったかな、最近ようやく読んだ本。
四方田犬彦のエッセイ集、帯によれば「古今東西文学エッセイ集」。
タイトルのとおり、古来、いろんな文学とか映画とかで、犬がどのように描かれてきたか、っていうのがテーマ。
著者のほかのエッセイもそうだけど、書物がいっぱい紹介されてると、すごい刺激的で、私なんかはほとんど読んだことないものばっかだけど、いつか読んでみようかなという気になる。(実行するかはわからないが。)
知ってたのはシートンと里見八犬伝くらいで、『オデュッセイア』とか『マハーバーラタ』については概要もろくすっぽ知らないでいたのは、教養が無くて情けないなあという気がする。
あと、いろいろ例を挙げられてみると、犬の視点で人間世界を描いたって文学作品は思ったより多いんだな、って感想をもった。一度やったらネタとしては終わり、ってわけぢゃないんだ、こういうの。
とりあえず一度読んでみたなかで、おもしろかったのは、「犬をどう名付けるか」という章で、レヴィ=ストロースの『野生の思考』を紹介してるところ。
>(略)名前は名付けられた対象を語る以上に、それを名付けた側の人間のことを物語る。こうした事態から導き出されるのは、その犬の名が何であるかではなく、誰がその犬をそう呼んでいるのかという問いである。
とか、
>(略)構造人類学とは(略)人間が無意識的に過ごしている日常生活の根底にある構造を、冷静な距離のもとに抽出してみせるところから出発する学問なのである。
とか言って、
>犬とは隠喩的名前をもった換喩的人類なのである。
なんて結論に至る。ちょっとむずかしいが、楽しい。
あー、犬、飼ってみたいなー。
コンテンツは以下のとおり。
00 ハーマン・メルヴィルを讃えて
01 乞食の帰還 ホメロス
02 二人の動物物語作家 シートンとロンドン
03 孤独の友だち ブニュエルとセリーヌ
04 犬、人を襲う 鏡花、多喜二、ギャリ
05 四つん這いになる ドヌーヴと金石範
06 犬婿入り 『後漢書』と馬琴
07 冥府より来りて グラス
08 犬を人間にできるか ステープルドンとブルガーコフ
09 犬をどう名付けるか
10 密談ピカレスク セルバンテスとホフマン
11 犬族から遠く離れて パニッツァとカフカ
12 東西名犬対決 『タンタン』と『のらくろ』
13 復員兵という名の野良犬 吉岡実と北村太郎
14 犬の眼でモノを見る ジョイス、原將人、岡部道男、森山大道
15 文学的ジャンルとしての、犬の追悼
16 犬は人なり 谷崎純一郎と川端康成
17 愛犬と闘犬 江藤淳と川上宗薫
18 法(ダールマ)としての犬
あとがき

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