セバスチアン・ジャプリゾ/平岡敦=訳 2015年 創元推理文庫版
こないだ読んだ『きっとあの人は眠っているんだよ』のなかで、“うーん、いい。この雰囲気にくらくらさせられる。”ってな具合で紹介されてて、すごく気になったので、さっそく読んでみた。
私はまったく知らなかったんだけど、メジャーな作品らしく、1966年という古典にもかかわらず、ふつうに新刊書店ですぐ見つけることができた、新訳版だそうである。
どうでもいいけど、そのあとすぐに古本屋で旧版の文庫をみつけたときは、ちょっとくやしかった、なんか古いほうので読んでみたいような気になったもんで。わざわざ買い直しはしないけど。
さて、原題「LA DAME DANS L'AUTO AVEC DESU LUNETTES ET UN FUSIL」は、私はフランス語はまったく読めないのだけど、巻末解説によれば、「眼鏡と銃をもった車の中の女」だそうである。
で、本編の章立ては、原題の語順にそって、「女」「車」「眼鏡」「銃」と並んでいる。
パリの広告代理店につとめるダニー・ロンゴが主人公の女性、身長168センチ、淡いブロンド、年齢は26だけど、自ら精神年齢は11、2歳と言っている、近眼で眼鏡が必要。
7月10日の金曜日に、業務終了したはずなのに、社長に呼ばれて、出張に間に合わないから自宅に来て書類をタイプしろといわれる。
ちなみに7月14日が革命記念日という祝日らしく、7月11日から土日月火と四連休にする予定だったのに、金曜から土曜にかけて泊まり込みの仕事になる。
社長の奥さんは、かつての同僚なんだけど、特に仲良しというわけぢゃなく、言い争いのケンカをしたこともあるが、まあどんな人間かはお互いわかってる。
で、土曜日の昼の飛行機に社長一家が乗るのに、車を運転して送らされる。空港で一家をおろしたら、社長の家まで車を置きに戻れと命じられる。
そこで、気まぐれを起こして、火曜日までの休みのあいだ、社長たちも帰ってこないんだからと、勝手に車を拝借して、南仏の海岸に向かってドライブで旅行することにしてしまう。ちなみに車は、新車のサンダーバード、よく目立つ。
それはそうと、途中、夕方に停まったサービスステーションで、洗面所に入ったときに、背後から襲撃され、利き手の左腕を負傷させられてしまうとこから、実は物語は始まってる。
そこの場所も含めて、海を見たことのないヒロインにとって初めての南フランス行きなんだけど、道中いたるところで、土地のひとが彼女のことを知っている。
先週にこの車を修理したよねとか、コートを忘れてったでしょとか、このホテルに泊まったよねとか、彼女には身に覚えのない、そんな出会いが続いて、いささか気味悪くなる。
そのうちに、よろしくない男とかかわりあいになって、置き去りにされて車奪われちゃうんだが、よき偶然にめぐまれて、地中海に面した港街で車を見つけることができる。
そこで出てくるのが4,5歳くらいの男の子の、例のセリフだ。
>「車のなかにいるおじさんは誰?」(略)
>「ほら、荷物を入れてあるところに」(略)
>「眠っているんだと思うけどな」
という“くらくらさせられる”語りのテクニックだ、たとえば「彼女はトランクに銃殺された死体を見つけた」って書くより、たしかにずっと深みがある。
かくして、ヒロインは重大なトラブルに巻き込まれるんだが、先だってからずっと続いてた、何日か前にも会ったぢゃないみたいな人々の証言や、まったく記憶がないのに現に持ってることになっちゃってる物とか書類とかの存在で、自分自身が信じられなくなってきちゃう。
記憶がないだけで、べつ人格の時分が何かやっちゃったんぢゃないかというような疑念にとりつかれると、精神が崩壊寸前に追い込まれてく。
そんな状態で誰かを頼っても、警察に駆け込んだりしても、たぶん説明できないし、信じてもらえない、ってんで解決には自らを鼓舞して立ち向かうしかないんだが。
もちろん真犯人はいて、最後はちゃんと解決する。その謎解きよりなにより、最後の最後でハッピーエンドになるところが、けっこう救われててよかったって印象が残った。
ミステリーとしてはねえ、私はもともと得意ぢゃないから、どう評価していいかよくわかんないけど。
こないだ読んだ『きっとあの人は眠っているんだよ』のなかで、“うーん、いい。この雰囲気にくらくらさせられる。”ってな具合で紹介されてて、すごく気になったので、さっそく読んでみた。
私はまったく知らなかったんだけど、メジャーな作品らしく、1966年という古典にもかかわらず、ふつうに新刊書店ですぐ見つけることができた、新訳版だそうである。
どうでもいいけど、そのあとすぐに古本屋で旧版の文庫をみつけたときは、ちょっとくやしかった、なんか古いほうので読んでみたいような気になったもんで。わざわざ買い直しはしないけど。
さて、原題「LA DAME DANS L'AUTO AVEC DESU LUNETTES ET UN FUSIL」は、私はフランス語はまったく読めないのだけど、巻末解説によれば、「眼鏡と銃をもった車の中の女」だそうである。
で、本編の章立ては、原題の語順にそって、「女」「車」「眼鏡」「銃」と並んでいる。
パリの広告代理店につとめるダニー・ロンゴが主人公の女性、身長168センチ、淡いブロンド、年齢は26だけど、自ら精神年齢は11、2歳と言っている、近眼で眼鏡が必要。
7月10日の金曜日に、業務終了したはずなのに、社長に呼ばれて、出張に間に合わないから自宅に来て書類をタイプしろといわれる。
ちなみに7月14日が革命記念日という祝日らしく、7月11日から土日月火と四連休にする予定だったのに、金曜から土曜にかけて泊まり込みの仕事になる。
社長の奥さんは、かつての同僚なんだけど、特に仲良しというわけぢゃなく、言い争いのケンカをしたこともあるが、まあどんな人間かはお互いわかってる。
で、土曜日の昼の飛行機に社長一家が乗るのに、車を運転して送らされる。空港で一家をおろしたら、社長の家まで車を置きに戻れと命じられる。
そこで、気まぐれを起こして、火曜日までの休みのあいだ、社長たちも帰ってこないんだからと、勝手に車を拝借して、南仏の海岸に向かってドライブで旅行することにしてしまう。ちなみに車は、新車のサンダーバード、よく目立つ。
それはそうと、途中、夕方に停まったサービスステーションで、洗面所に入ったときに、背後から襲撃され、利き手の左腕を負傷させられてしまうとこから、実は物語は始まってる。
そこの場所も含めて、海を見たことのないヒロインにとって初めての南フランス行きなんだけど、道中いたるところで、土地のひとが彼女のことを知っている。
先週にこの車を修理したよねとか、コートを忘れてったでしょとか、このホテルに泊まったよねとか、彼女には身に覚えのない、そんな出会いが続いて、いささか気味悪くなる。
そのうちに、よろしくない男とかかわりあいになって、置き去りにされて車奪われちゃうんだが、よき偶然にめぐまれて、地中海に面した港街で車を見つけることができる。
そこで出てくるのが4,5歳くらいの男の子の、例のセリフだ。
>「車のなかにいるおじさんは誰?」(略)
>「ほら、荷物を入れてあるところに」(略)
>「眠っているんだと思うけどな」
という“くらくらさせられる”語りのテクニックだ、たとえば「彼女はトランクに銃殺された死体を見つけた」って書くより、たしかにずっと深みがある。
かくして、ヒロインは重大なトラブルに巻き込まれるんだが、先だってからずっと続いてた、何日か前にも会ったぢゃないみたいな人々の証言や、まったく記憶がないのに現に持ってることになっちゃってる物とか書類とかの存在で、自分自身が信じられなくなってきちゃう。
記憶がないだけで、べつ人格の時分が何かやっちゃったんぢゃないかというような疑念にとりつかれると、精神が崩壊寸前に追い込まれてく。
そんな状態で誰かを頼っても、警察に駆け込んだりしても、たぶん説明できないし、信じてもらえない、ってんで解決には自らを鼓舞して立ち向かうしかないんだが。
もちろん真犯人はいて、最後はちゃんと解決する。その謎解きよりなにより、最後の最後でハッピーエンドになるところが、けっこう救われててよかったって印象が残った。
ミステリーとしてはねえ、私はもともと得意ぢゃないから、どう評価していいかよくわかんないけど。