many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

棋士という人生

2016-10-19 20:15:24 | 読んだ本
大崎善生編 平成28年10月 新潮文庫
副題に「傑作将棋アンソロジー」とある、そのとおりのなかみの文庫オリジナル版。
最近のもののなかには読んだことあるものもあるけれど、ほかのほとんどは読んだことないもの、そーゆーんだから楽しめた。ちなみに著者の名前はだいたい知っている。
村上春樹のエッセイを入れるのは強引だろ、将棋の話ぢゃないじゃん、と思ったんだけど、なんのことはない、編者がファンでってだけのことみたい。
さっと一読したなかで、一番は「愛弟子・芹澤博文の死」1988年の発表、芹澤九段は前年12月に亡くなった。
その直前に配された芹澤九段自身の文と続けざまに読んで、えらくせつなくなった。
天才の挫折って、とても凡人には理解できないものではあるが。
(んー、朝がた早く目が覚めて、すること無いしで読んだとかって環境もあるかもしんないけど、なんかえらく胸に刺さったものある。)
ほかに単純におもしろいと思ったのは、団鬼六が一人で酒飲むときに桜木町の吉野家(ほんとは吉の字は上の棒が短いの?)を大いに利用してたって話、将棋と直接関係ないけど。
>ここへ出入りする人々のむき出しにした生々しい食欲を見廻しながらチビリ、チビリと酒を飲む気分はこれこそ粋人の飲み方だと感じる事がある。(p.234「牛丼屋にて」)
なんて書かれてると、そういうもんかなという気がしないでもない。
あと、印象的だったのは、二上達也九段が公式戦で初めて弟子の羽生当時五段と対局したときのことを、「私に引退を決意させた勝負だった(p.270「『棋を楽しみて老いるを知らず』より」)」って書いてるやつ。これはまったく知らないことだった。
収録されてるのは以下のとおり。
「守られている」大崎善生
「そうではあるけれど、上を向いて」中平邦彦
「将棋が弱くなるクスリ」東公平
「神童 天才 凡人」沢木耕太郎
「京須先生の死」山田道美
「忘れ得ぬひと、思い出のひと」芹澤博文
「愛弟子・芹澤博文の死」高柳敏夫
「詰パラとの出会い」若島正
「九段」坂口安吾
「棋士と寿命と大山さん」内藤國雄
「男の花道」色川武大
「不世出の大名人」河口俊彦
「わが友、森信雄」大崎善生
「待ったが許されるならば……」畠山鎮
「牛丼屋にて」団鬼六
「超強豪の昨日今日明日」炬口勝弘
「『棋を楽しみて老いるを知らず』より」二上達也
「完璧で必然的な逆転劇」島朗
「漂えど沈まず」先崎学
「4二角」小林宏
「床屋で肩こりについて考える」村上春樹
「竜王戦」森内俊之
「常識」小林秀雄
「ボナンザ戦を受けた理由」渡辺明
「退会の日」天野貴元
「「将棋世界」編集部日記」大崎善生
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コブラの悩み

2016-10-17 18:08:55 | 忌野清志郎
RCサクセション いま私の持ってるのは2005年のRC35周年記念盤のCD 東芝EMI オリジナルは1988年
最近なにが驚いたって、ボブ・ディランのノーベル文学賞である。
(いま「受賞」って書きかけて躊躇した、ほんとに受賞するんだろうか、受け取らないって可能性もありそうな気が。)
そうきたか、って感じで、ひさしぶりにニュースにアッと言わされた。
いやー、これはすごいことでしょ、20世紀からなにも変わってなかったことが、大きくゴロンと動いたような気がする。
でも、それやったら何でもありだろ、みたいに思うんだが、そう言いつつも、基本的に私はこういうの賛成というか肯定的である。
私ゃ知らないんだけどね、ボブ・ディラン、聴かないし、だから賞にふさわしいのかとか全然わかんない。
ただ、そんなこと言ったら、ほかのノーベル賞とったひとの文学作品だって、ほとんど読んでないから、まあ、そのへんはどうでもいい。
ひとつだけ言えるとしたら、生きててよかったね、ボブ・ディランさん、ってことか。死んで伝説になっても、この賞はもらえないから。
けど、世の中にゃあ自分のフェイバリットを中心に、このミュージシャンのほうこそ獲るべきだとか、かまびすしい意見表明をするひとが一杯出てきそうな予感がする。
私は歌の歌詞の善し悪しはよう分からんし、それよりも、こんどはマンガ家の誰かがノーベル賞もらってよ、ってほうに期待っつーか希望している。
ところで、ボブ・ディランは、私のフェイバリット小説である、村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』に実名あげて使われているんだけど、それはたぶん有名なはなしではないかと。
主人公がカーステレオで唄を聴いていると、レンタカー会社の女性が「まるで小さな子が窓に立って雨ふりをじっと見つめているような声なんです」と表現する。とても良いシーンのひとつだ。
良い表現だってのはわかるけど、聴いたことのなかった私にはピンとこなかった、当時。
閑話休題。
さてさて、それぢゃなんか音楽聴くかと思っても、私はボブ・ディランなんて何も持ってない。
キヨシローが替え歌した『風に吹かれて』ってのあるが、アルバム『COVERS カバーズ』は、一度このブログにはとりあげたことあるんで、今回はその曲は入ってないけど、同時期のライブ盤である『コブラの悩み』にしてみた。
『COVERS』が発売中止になって、怒りおさまらないかどうかはホントは知らないけど、そういうノリで突入したことになってる日比谷野音のライブ。
だから、なつかしの『言論の自由』とか『あきれて物も言えない』なんかも入ってる、怒りのうたね。
1.アイ・シャル・ビー・リリースト I SHALL BE RELEASED
2.言論の自由 FREEDOM OF SPEECH
3.コール ミー CALL ME
4.ヘルプ! HELP!
5.明日なき世界 EVE OF DESTRUCTION
6.からすの赤ちゃん CROW'S BABY
7.軽薄なジャーナリスト FRIVOLOUS JOURNALIST
8.心配させないで… DON'T MAKE ME WORRY…
9.パラダイス GET TOU PARADISE
10.俺は電気 I'M ELECTRIC
11.あきれて物も言えない FEEL UTTERLY SCANDALIZED
12.君はLOVE ME TENDERを聴いたか?(スペシャル・ショート・ヴァージョン) HAVE YOU EVER HEARD MY "LOVE ME TENDER"?
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わたしの小さな古本屋

2016-10-13 21:13:20 | 読んだ本
田中美穂 2016年9月 ちくま文庫版
前回から古本つながりみたいなもので。
最近新しく出た文庫、出先の書店でみかけて帰り道にでも読むかと買った、もとの単行本は2012年に出たらしい。
私は、古本が好きとかいうわりには、古本屋に関する本とかあまり読もうとしないんだけど、まあなんとなく読んでみようかと。
著者は、岡山で小さい古本屋をひとりで開いてるそうで。
1993年、21歳のときに、アルバイトを突然辞めることになって、古本屋を始めたとか。
(この「そうだ、古本屋になろう」って章のフレーズが、とても私が惹かれたものなのかもしれない。)
古本屋同士でのシビアな取引なんかはしないで、店始めたときは持ってる本を並べて、そのあとはお客さんが持ち込んでくる本だけが新たな商品になるって、そのスタイルでやってけるんだ~、って感心させられた。
専門的なノウハウもなく、コミュニケーションも苦手って自覚があって、どこまで何ができるんだろうって漠然とした状態でお店始めて、それでも続いている。
書いてること文字通り受けとってくだけだと、なんかゆるーい感じでしかないんだけど、実際そんな簡単ではないだろうなと想像する。
自然にやってくうちに、なるようになるとこに収まってくんだったら、とてもうらやましい。
第一章 そうだ、古本屋になろう
第二章 見よう見まねの古本屋
第三章 お客さん、来ないなぁ
第四章 めぐりめぐってあなたのもとへ
第五章 そして店番は続く
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みみずく偏書記

2016-10-12 19:24:08 | 読んだ本
由良君美 2012年 ちくま文庫版
四方田犬彦の『先生とわたし』を読んだら、その先生こと由良君美教授の本をなんか読んでみなくちゃ、って気になったんで。
とはいうものの専門的な英文学に関するのなんか読めそうにないので、すこしでも簡単そうな文庫を手にとってみた。
「書き散らしてきた文章を拾い集め」(←これは四方田の表現)て単行本として出版されたのが1983年、四方田によれば「書物論」なので、とっかかりとして選んだんだが。
なんせ著者は、
>結婚して最初に越した家は、二階に書物をすべて置いたのが災いして、八年すぎたころ、家が傾いてきた(p.191「水平の量」)
という人なので、とてもかなわない。
古本屋での掘り出し物との出会いにしても、
>ある日、棚の本がほぼ先週のままなのに落胆し、帰りかけたところ、わたしの背筋に妙な悪寒が走った。これはたいてい、本がわたしを読んでいるコール・サインである。(p.107「イギリスの超ナチ謀略放送家」)
という霊感がはたらいて、五十円均一のなかに何かを見つけたりするんだから凄い。
『先生とわたし』においても、その博識なことは存分に披露されてるが、それはやっぱ著者の読書量とその方法からきてる。
>わたしは読書に情報獲得的側面があることを否定しないが、わたし個人は、読書はもう少し、全人間的な興味から行う。(略)だから、わたしの読書法は、著しく反能率的である。知識として大脳を富ませてくれるというより、知識以前の漠たる形で意識下に沈む事柄の方が多い。(p.269「反能率的読書法」)
ということで、都合のよい知識を仕入れるために本読むのは邪道、読書そのものを楽しんで、何でもどしどし身体に取り込んでって、いつかそれが醸成されて他の何かとも結びついてくればよしとしたもんのようだ、スケール大きいというか、自由というか。
そういうわけだから、書店の本の扱い方なんかについても、
>大体、書店の分類棚など、所詮は流通機構が指定した貧しい指定――在来の固定的思考に立って、ふるい分けた無理な分類にすぎない。
>その上、昨今は、大手の指示で、大量に安価に売ろうとする本は、マスコミであらかじめ大宣伝をしておいて、さて小売店では分類を明瞭にして、いわゆる〈平積み〉にして、装幀の表紙の派手さと、積み上げの高さとで、他人眼をひこうとするものが多い。(p.24「本の囁き」)
って具合にきびしい、売らんがための陳列にまどわされるなっていうんだけど、80年代前半でも既にそうだったかなあ、本屋って。
それはいいんだけど。
具体的な本の名前とか、多く挙げられてるものの分野は、私にはなじみがないので、ピンとこないし、興味ももてない。たとえば、
>ノイラートやパレートやコージブスキーをマンフォードと一緒に読む仕方を、方法的に教えてくれたのも、この本だったし、ニーバーとティーリヒとマキーバーの重ね方を示してくれたのもこの本だった。(p.224「ニュー・スクール、バーク、スロチャワー」)
なんて言われても、なんのことだかわからない。
ま、こんなブログやってる私も、もうすこし反省したほうがいいのかも。
好きな本のこと書いても、たいがいのひとには興味ない関係ないことだし。
ひとは知らない固有名詞の並んでるのを見ると多かれ少なかれ引くものだあね、それはわかっちゃいるけれど。
大まかな章立ては以下のとおり。ちなみに、みみずくは著者の好きな鳥ということらしい。
「読書狂言綺語抄」
「みみずく偏書記」
「書志渉猟」
「わたしの読書遍歴」
「反能率的読書法」
「辞書とのつきあい」
「書物についての書物」
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現代思想の遭難者たち

2016-10-11 17:33:05 | マンガ
いしいひさいち 2016年5月 講談社学術文庫版
書店で積まれてるのを見て、手に取ってパラパラと見て、ややこしそうだからヤメとこか、と思いつつも、やっぱ買っちゃった。
すごいねえ、発行からわずか17日間で2刷を重ねている。
いわゆる現代思想の主要人物たちをあつかった基本四コマ構成のマンガ。
初出は『現代思想の冒険者たち』って聞いたことも見たこともない月報の1996年から1999年の連載、20年前か。
単行本が2002年、この文庫の底本は2006年の増補版だって、それでも10年前か。
ま、現代思想なんて、前世紀からなんも変わってないだろうから、いいんだけど。構造主義とかポストモダンとか、そこから議論は進んでないよねえ、たぶん。
しかし、やっぱ読んではみたけど、そんな簡単に笑えるネタでもないし、文字は多いしで、けっこう疲れる。
思えば私が哲学とかに興味もってたのは、80年代後半の話だもんねえ、いまはそういう小難しいこと考える気力があまりない。
でも、なんも考えなくても毎日の生活に支障ないかもしれないけど、“ただ生きるだけだったら誰にでもできる”ってこと意識してるのは大事なことなんで、捨てずにいたいとは思ってる。
主な登場人物は以下のとおり。聞いたことある名前もあれば、まったく知らないひとも。
しかし、もしかしたら、また哲学の本でも読みたくなるかなあと期待してたんだけど、まったくそんな気にならなかった。もうダメだな、俺。
1.超えゆく思想家たち
ハイデガー、フッサール、ウィトゲンシュタイン、カフカ、ニーチェ、マルクス、フロイト、ユング
2.疾駆する思想家たち
レヴィ=ストロース、アルチュセール、バルト、ラカン、フーコー、ドゥルーズ、レヴィナス、デリダ
3.彷徨いゆく思想家たち
バタイユ、ジンメル、ベンヤミン、アドルノ、アレント、ガダマー、ハーバーマス、ロールズ、クリステヴァ
4.一人ゆく思想家たち
ホワイトヘッド、バフチン、バシュラール、ポパー、クーン、クワイン、メルロ=ポンティ、ルカーチ、エーコ
5.現代思想の二重遭難者たち
現代思想の源流、マルクス、フロイト、ニーチェ、ハイデガー、レヴィ=ストロース、フーコー、ハーバーマス、メルロ=ポンティ、ホワイトヘッド、ラカン、バルト、カフカ、ウィトゲンシュタイン、デリダ
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