皆様、先週は診断実習お疲れさまでした。
ホテル業界に関して少しは認識が新たになったでしょうか。
今日は朝7:29八王子初のスーパーあずさに乗って塩尻から木曽谷を巡ってきました。
といっても遊びではありません。
木曽平沢地区の伝統漆器の製造・販売元を訪問し、新規事業計画の相談に乗ってきました。
この地区には、現在でも約140軒の漆器に関連する事業所があり、その年間出荷額は約26億円です。
ところが、最盛期の昭和50年頃にはこれが215軒、出荷額も69億円あったという話ですから、その当時から見ると3分の1の規模になっているわけです。
今日訪問した企業は、その中でも最大手で(といっても従業員35名です)、社長は70歳ですが、新規市場を開拓することで現状の縮小ムードを何とか食い止めたいという意欲にあふれた人でした。
新規事業の内容は、金属食器に漆加工を施し、それを外資系の有名ホテルに使ってもらうことで知名度を上げ、最終的には海外のお客様に日常的に使ってもらえる漆器を作りたいというものです。
漆器は英語でJAPANというように、漆器といえば日本を代表する製品と思われていますが、それはあくまでも飾り物の世界。
漆の箸やお椀は、外国人のお土産として人気は有りますが、それを買って帰ってどうするかというと、引き出しの肥やしになるか、いいところ箸は髪飾り、お椀は小物入れです。
そこで、外国人が日常使うナイフやフォークに漆を塗って・・・・と考えたわけです。
営業の人が、ホテルの支配人に聞いてみたところ、「それはおもしろい、あれば使いたいね、海外の大使館で使えるよ」などといわれたそうですが、実際それを業務用で使うのか、いくらだったら使えるのか、そのコストで生産可能か、食器洗い機や熱湯につけても大丈夫なのか等々、課題は山積みです。
具体的な解決に向けては、地元の商工会議所、金融機関、大学の研究機関がバックアップするようですが、まずは具体的な商品の形が見えてこないと、新規の事業計画といってもまだ作れません。
私の仕事は、国の中小企業施策の一つである「新事業創出支援事業」の一環で、このような新たな事業にチャレンジする企業に、何が商品で、誰に、どのように販売し、いつまでいくらの売上を上げて、いくらの利益が出せるのかといった事業計画作りを支援することと、計画が国に認定された後の事業の進捗支援(フォローアップ)をすることです。
今日は、現地へ行き、現場で伝統工芸士の作業を拝見しながら2時間余り話をし、新規事業を行う際の現実を確認したうえで、事業計画づくりに向けて課題を整理し、今から6か月後を目指して国の認定に耐えられる計画までブラッシュアップしていくことを確認しました。
その後、飯田に移動して、市田柿の産地へ行きました。市田柿とは飯田の下伊那地区の冬の風物詩ともなっている渋柿の品種名で、現在ではこの干柿のことを市田柿と呼ぶことの方が多いようです。
干柿は冬しか作りませんし、売れません。その理由は長くなるので省きますが、ここも、この市田柿の新たな活用の視点で新商品開発をするという計画を持っている企業あり、国の認定の視点からアドバイスを行いました。
国の視点とは大きくは次の2点です。
1.新規性(従来の事業(商品)と比べて何が新たな視点なのか、また、類似商品に対してどれほど優位性があるのか)
2.実現性(その商品が本当に売れるのか、ニーズ、市場規模、販売チャネル、販売体制は具体的か)
その他にもいくつかのポイントは有りますが、どれほど良いものを作っても売れなくては何もなりません。
これらのアドバイスを行い、帰宅したら10時過ぎでした。
このような訪問が毎週1~2件あります。
地方へ行くことが多いので、商品的には農産物を使った食品関係の商品開発の話が多いのですが、今回のような工芸品、観光、機械、自動車といった業種もあります。
その都度、業界や商品の勉強が必要ですが、これだけ多様な業界の、それも前向きに新事業にチャレンジしたいという意欲ある人と付き合うことができるのは、診断士冥利につきるところです。
厳しいけれど、楽しい仕事です。
田中