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意見のまとめかた 日本とアメリカの違い

2015-12-22 07:00:00 | OB生の近況報告・活動報告

堀江でございます。本日は意見のまとめあげに関する日米比較。ちょっと堅い話です。個人体験論ですのであしからず。 

お伝えしたいことは次の3点。

(1)  ブレインストーミングで出た意見のまとめ方は、日本とアメリカで異なる
(2)  日本ではまとめる過程(情報共有)を重視。アメリカでは、まとめあがった結論を重視
(3)  日本式にたてたた戦略はアメリカ人から「それは戦略とは呼べない」と言われる。アメリカ式の戦略は日本人には「絵に描いた餅」だと受け入れてもらえない

20人程度のビジネスユニットで、何か方針を立てていると想定します。マーケティング方針や、顧客ターゲットの見直し、重点投資分野の決定など。どの現場でも、ブレインストーミングを使い意見を集めることが多いと思います。 

さて、たくさんの意見が集まったとし、そこから結論をどう導きますか?

日本の現場ではKJ法に類する方法で「皆」で「まとめ上げていく」ことが主流だと思います。シニアメンバーがリーダーとなり、それぞれの付箋を皆で読み込み、優れた意見に共通する概念や背景の意味を考え、別の付箋にまとめていきます。じっくり読み込む過程で、各人の真意を確認します。この確認作業を通じたベクトル合わせが重要。民主的に、時間をかけて意見集約をすれば、チーム全員が「すとんと」納得する結果にたどり着きます。 

一方、アメリカのビジネスの現場では、ボス指名の「少数の優秀な部下」が、アイデアを「抜き出してつなげる」事が多いようです。その切れ者が、キーとなる意見選び、論理的つながりや経営理論、補足データを重視してつなげ合わせます。この作業はもちろん全員参加で目の前で行われますか、集約自体は必ずしも民主的ではなく、あれよあれよと目の前でまとめあがっていきます。意見だしは民主的平等に、結果導出は権力主義的にです。出来上がるのは、「理論に基づき最も正しいであろう」戦略や方針です。参加者の多くが予想しなかった結論になることもありますが、論理的整合性はとれています。

ブレストまでは同じだけれど、出てくるものが異なる。

日本式は、「参加者全員が」納得する結論が導かれます。でも議論に参加していない人には伝わりにくい表現や論理構成が含まれることがあります。アメリカ人には、「それは単なる意見集約じゃないの?どこが新戦略なの?」と物足りなさを感じる。アメリカ式は、推論上正しい結論を得られる。でも日本人の多くは納得せず、「あんなの、聞こえはいいが実行不可能だよ」と、打ち上げで不満をこぼす。よくある光景です。

なぜこうなるか。

エドワード・ホールが提唱したコミュニケーションにおける高コンテクスト・低コンテクスト論が参考になります。それによれば、

(1)  日本のコミュニケーションは「高コンテクスト」。共有している文化・情報が多く、コミュニケーションにおける言語の役割が低い。細目を説明しなくても情報を伝えることができる。
(2)  アメリカは「低コンテクスト」。言葉が意味する事が明確に定義されている。コミュニケーションにおける非言語部分が少ない。情報を伝えるために、基本的な事柄も言葉で説明する必要がある

ここまでは常識的なこと。そして、
(3)  「高コンテクスト=日本」の文化では、通常のコミュニケーションでは細かい背景情報を必要としない。しかしながら、新しい問題を解決しようとする際は、各人が「総て」を知りたがる。知った(情報共有した)うえで、判断を下す。「低コンテクスト=アメリカ」の文化では、言葉はコード化されていて、明確な意味をもっている。他人が合理的な判断を下せば、それを素直に信じ受け止める。

ホールに基づけば、こういう作業が必要になります。

アメリカ式にたてられた戦略を日本人に浸透させるためには、個々人を対象としたセッションを開き、細かい背景を説明し共有する必要がある。説明を受けて初めて合意を受け入れる。日本式にたてられた戦略について、アメリカ人から信頼を得るためには、当たり前の部分まで文章化し戦略に落とし込む必要がある。戦略が信頼に足りると判断すれば、それ以上の説明はいらない。外部コンサルが作った提案を容易に受け入れる文化的理由も、ここにあります。

興味深いのは、ホールは独仏間のビジネス摩擦研究を先に出版し、追って同じ日米にも適用したという点です。コミュニケーションに悩むのは日本人だけではありません。ドイツ人は低コンテクスト、フランス人は高コンテクストとのことで、同じ欧州内ですら似たようなことが起きているのです。

今回はここまで。長文失礼いたしました。

コメント (2)
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