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知ったかぶりは厳禁

2021-05-22 12:00:00 | 20期生のブログリレー

みなさん、こんにちは。稼プロ!20期生の加納久稔です。

毎年4月から5月にかけて、勤務先ではお客様から人事労務に関する質問を多く受けます。関連法令や組織変更による規程類の改定、新人事制度の導入などが集中するからです。

法改正があれば事前に内容を勉強して準備しておきます。それでもわからない質問があったら、当然ですが調べてから回答します。逆に法改正に関連しない質問は、即答できることが多くあります。しかし、そんなときに落とし穴が待っているものです。

もう10年以上も前のことです。あるお客様から「労働契約は文書で交わす必要があるか」と尋ねられました。定年後に再雇用する方々との労働契約に不備があったので、整えたかったようです。

当時、民法の勉強をしていた私は得意げになって「契約は口頭でも成立するので不要です」と即答しました。たしかに現民法522条第2項には、「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」と規定されています。

しかし、なにか引っかかるものがあったのでしょうか。翌日、労働基準法を読み返してみました。すると、第15条に「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない」と。そして「厚生労働省令で定める方法」とは「書面の交付」をすることなのです。

つまり、「労働契約を締結するとき、賃金や労働時間など一定の労働条件は文書を渡して示す必要がある」わけです。文書で労働契約を締結する必要はありませんが、一定の労働条件は文書で通知しなければならない。しかし、私の回答では「一切の文書は必要ない」と解釈してしまう。ちなみに第15条違反には30万円以下の罰金が科せられます。

あわててお客様に連絡を取り、謝罪と訂正のため訪問。正しい取扱いをご説明した瞬間、お客様の顔は引きつってしまいました。担当役員の方が「間違ってしまったことはしかたない。○○さんには頭を下げて説明しなおすことにしよう」と言われたことを記憶しています。

幸い大事には至らなかったようですが、お客様とその労働者との間にトラブルが生じて労務問題に発展したら、勤務先の信用失墜につながったり損害賠償が発生したりしたかもしれません。

これは他社での話です。「出社の際、玄関を出たらころんで足首をねんざしてしまった。通勤災害が認められるか」とAさんに尋ねられた管理部門の担当者は、すぐに「はい」と回答。Aさんは労働基準監督署に申請しましたが、認められませんでした。理由は「玄関と門扉の間でころんだので、通勤途上とは認められない」からです。

労働者災害補償保険法上の通勤災害とは「通勤によるケガや病気など」のことで、通勤とは「住居と就業の場所との往復」を意味します。そして、行政通達では「一戸建ての屋敷構えの玄関先は住居内であって、住居と就業の場所との間とはいえない」とされています。

Aさんの自宅は一戸建てで、ころんだのは玄関と門扉の間。つまり「住居内でのケガなので通勤によるものではない」ということなのです。

するとAさんは、「担当者が認められると言ったから申請した。認められていたら治療費はかからなかったが、健康保険が適用されるので自己負担が発生する。その分を補償せよ」と会社に要求したそうです。会社がAさんに損害を与えたわけではなく、個人的にはむちゃな要求だと思います。しかし、担当者が状況をきちんと確認し、調べてから回答すればこのようなことにはならずに済んだはずでしょう。最終的にどのように決着したかは聞いていませんが、トラブル対応に要する時間は生産的とは言えませんね。

知ったかぶりをしないのはもちろん、わかりきっていると思うことでも根拠を確かめてから質問に回答することが大切です。ときには理解が違っていたこともあるので、人間の記憶力のあいまいさを痛感します。

 

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コメント (5)
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