ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

平成二十八年度 松竹大歌舞伎 「鳴神」「文売り」「三社祭」 @愛知県・扶桑文化会館

2016年07月19日 | 歌舞伎・文楽

歌舞伎「松竹大歌舞伎」(7月16日・愛知県・扶桑文化会館)

今年の松竹大歌舞伎・中央コースの巡業は愛知県丹羽郡扶桑町の「扶桑文化会館」で。こちらは田舎の小さな会館ではあるが、歌舞伎をはじめ、落語や舞台、音楽でも、時に驚くような大物が出演する催し物の招聘に熱心な会館で、今までに何度か利用している。どこにでもある市営、町営の文化会館で何がこうも違うのだろうと思うのだが、やはり館長をはじめとするスタッフが芸事に熱心なのだろう。自分の知っている岐阜県のある文化会館も、館長自身が文化的な催しにとても積極的で、ジャンルを問わず、地方には贅沢過ぎるとも思えるようなラインナップの催しを開催するところがある。そういう会館の近くに住んでいる人は幸せだ。思わぬ近くでスターが見られたりするのだから、下手な都会の大会場よりいい場合だってある。今回もチケットの購入が遅れたので2階席だが、この会場は大きくないのでどこの場所でも十分楽しめる。地方の小さな会場では花道が作られないことも多いが、ここはしっかりと花道が。2階席の客の入りは正直あまり良くない。

今回は公演に先立ち、坂東亀寿と中村萬太郎が、歌舞伎の基本的な仕掛け(音楽、効果音、舞台装置など)を説明するコーナーがある。これ、とてもいい。歌舞伎は話の筋から、舞台装置から、演出から、ほとんどが「分かっている」事が前提。もちろん演じる役者によって「味」は違うが、客の側から勉強しないと分からない事も多い。現代の自分たちの生活の中には、歌舞伎が出自とされる多くの言葉が残っている。そんな豆知識も含めて、噛み砕いて実演しながら説明してくれるので、過去に何回も見ている自分でも改めて勉強になった。

「鳴神」を舞台で見るのは初めて。歌舞伎では最も有名な筋のひとつなので楽しみにしていた。ユーモラスで筋も難しくないので、飲み込み易いし、立役(松緑)の歌舞伎らしさ一杯の見栄もあるので楽しい。なんて誘惑に弱い上人だと呆れつつ(笑)、梅枝演じる美しい絶間姫を見ていると納得させられる(同じ女形でも、これが大ベテランだと説得力が…)。残念だったのは、何度も何度も注意の放送があったにも関わらず、鳴神上人と絶間姫の絡む、台詞の無い肝心な場面でアラームらしき電子音が…。絶句。あまりのタイミングに最初は何かの演出かと思ったが、やはりあの音はあり得ないでしょう。最近何を見に行っても必ず1人はそういう輩が居るな…(はっきり言って年輩の人が多い)。

時蔵の「文売り」は貫禄たっぷりの舞。「三社祭」は面白おかしいだけかと思いきや、「善」と「悪」が乗り移る演出がシュール。歌舞伎って、こういう大胆な演出があるところが本当に面白い。ただ、踊りの演目についてはどちらもあまり予習してこなかったので、少し後悔。もう少し意味が分かった上で踊りを見られたら、感じ方も変わったろう。

<演目>

一、歌舞伎の見方

解説 坂東 亀寿
      中村 萬太郎
 

二、歌舞伎十八番の内 鳴神(なるかみ)

鳴神上人     尾上 松緑
雲の絶間姫  中村 梅枝
黒雲坊       中村 萬太郎
白雲坊       坂東 亀寿


三、文売り(ふみうり)
    三社祭(さんじゃまつり)

〈文売り〉
文売り       中村 時蔵

〈三社祭〉
悪玉         坂東 亀寿
善玉         中村 萬太郎

コメント
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