岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

「ほんと、ほんと」と嬉しくなる文章に逢いました。

2012-03-26 09:47:25 | 
『歴史としての3・11」河出書房新社刊より。

渋谷望さんの「壊乱的社会的費用」の中に発見しました。

人類学者ガッサン・ハージが示すオーストラリアの横断歩道の逸話から。

「内戦の戦火を逃れてオーストラリアにきたレバノン出身のアリという男性は、内戦で家族を失い、メンタルな病にかかった。しかし彼はオーストラリアに来てから次第によくなっていった。
彼は横断歩道を繰り返し渡ることで病気から快復したのだという。彼はハージにこう語っている。
『これはしょっちゅう、あそこの銀行近くで...通りを渡っていたんだ。俺は横断歩道が好きになっていたんだ(笑)!何時間でも、横断歩道を渡って、繰り返し渡っていた。俺は、車が俺のために停まってくれる瞬間が大好きだったんだ。それは俺が大切な人間なんだって感じさせてくれたんだ。俺は奇跡だと思ったよ!そんなことがベイルートで起きると思うかい』」

もちろん、日本でそんなことをしていたら怒鳴られたり最悪ぶつけられてしまうだろう。

しかし、オーストラリアは、こちらが恐縮するほど横断歩道を歩く人間を尊重してくれる。

世界中の人がオーストラリアの横断歩道に嬉しくなっていることがわかった。

本当に気持ちがいい文章だった。


さて、文章は以下のように続く。

「社会がアリに『承認と価値付与という贈り物を提供した』からである。私たち(※渋谷さんたち)の言葉でいえば、歩行者や住民にこっそり押し付けられていた社会的費用を可視化し、正当化するという倫理的な贈り物である」

車を安く売ることができるのは社会的費用を払っていないからであり、原発はその未払いの最たるものであると。

同感です。


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