岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

NHKアーカイブ 『多摩動物園チンパンジー飼育日誌』を見ました。

2009-01-31 11:33:49 | 社会福祉の源流
午前中に掃除などしてを済まし、ホッとしてお茶を飲みながらテレビをつけると
チンパンジーの集団飼育のドキュメンタリーをしていた。
1998年の製作だから、10年前ということになる。
実は1978年にも取材しており、どちらも一人の飼育係(吉原さん)が一方の主人公である。

もう一方は、チンパンジーのボスであるジョーである。
ジョーは20年におよぶボス生活の終わりの時期を迎えてきた。

次期のボス候補のケンタは、粗暴なところもあり、平穏な交代ができるかが
懸念されていた。

飼育係の吉原さんは、ジョーと足かけ25年の付き合いで気心はしれている。
もちろん、やがてジョーがボスの地位を去らねばならないことはわかっていた。
そのため、ケンタを次期ボスにすることを15年計画で進めてきた。
そうはいっても自然界の摂理を人間が制御できるわけでもない。
ケンタがボス適役かどうかは成り行きに任せるしかない。

チンパンジーの世界は、序列がはっきりできているという。
多摩動物園では21尾が集団生活しているが、1位から最下位まできちんと
決まっているという。
飼育係は4人だが、その4人も組み込まれている。
新人や若手など、それなりの地位しかあたえられない。

そんなある日、ボスであるジョーがケンタから暴力をふるわれ傷つく事態になった。
ジョーは身の安全のために隔離される。
精神的にも不安定になり飼育係にも見せたことのない動揺をみせる。
政権委譲はどのように行われるのがよいか、飼育係も意見が分かれる。
そして、最終的に同じ集団に入れて成行きに任すことになった。

その日、ジョーは最初、ケンタから遠くへ逃げていた。
しかし、しばらく経つと距離を狭め、ボスの座を譲るしぐさをした。
ケンタは暴力をふるうことなくボスになった。
この政権移譲は、ジョーの「受難から現実の受容へ」が適切に行われたことによる。
もちろん、ジョーの精神的な苦しみは並みのそれではなかったのだが。
ジョーは、力ではなく知力によって集団をまとめていた。
そして、雌に公平だった。これはとても大切なことだという。
集団の中の喧嘩には、適切に介入し暴力をふるうことはなかった。

新しくボスになったケンタは、ボス適格者ではなかったようだ。
雌には、力であたった。
10年後の現在、ケンタはすでに追われる身になっていた。
政権は短命に終わるようだ。

次のボスには、ジョーの息子が有力候補となっていた。

類人猿であるチンパンジーはニホンザルとは比較にならないほど、
人類に近いという。

飼育係の話す言葉は理解できる。
「先取り獲得権」がある。すなわち、最下位の立場のチンパンジーでも
餌を獲得すれば、ボスとて横取りできない。
そのかわり、シェア(分け与える)ことができる。

普通、動物は家族以外にシェアすることはないという。

このチンパンジーの習性が人類にもあったということなら、
シェアする心は、人間の根源的習性といえる。

社会福祉は、この根源的習性に則っているといえるとすれば、
私の探求の旅も一歩進んだことになる。

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