岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

ジョージア映画『みかんの丘』観ました。

2022-11-21 06:39:50 | 映画・DVD 

岡山県北部真庭市で開催された『ジョージア映画祭2022』を観に行きました。

3日間の映画祭です。最終日に出かけました。

ジョージアは旧称グルジアですね。呼び名が変わってもなかなか馴染めないです。

ジョージア映画を観る機会があったのかと調べてみると『とうもろこしの島』を観ていました。

印象に残った作品でした。

今回、観る機会を得た『みかんの丘』も、素晴らしい作品でした。

特に、ウクライナ戦争の最中であり深く考えさせられました。

ひとつ課題があります。ジョージアについて知らなすぎるのです。

これはオンライン講座や座談会でフォローしていただけるのですが、私にはまだまだ理解がおよびません。

 

映画の背景について

1990年代、ソ連の崩壊とともに旧ソ連の各共和国が新しい国づくりをはじめるわけですがスムーズにいきません。

多民族がともに生きている地域で一部の民族が主導権を握ろうとするわけですから。

ジョージアも西部地区のアブハジアでも独立運動が起こります。

この戦争のさなか、エストリアから移住してきていた人々と兵士たちの話です。

みかんの丘の麓にある一人暮らしの老人(イヴォ)とその隣人に戦争が迫ってきます。

登場する兵士は、チェチェン人義勇軍(アブハジア友軍ー実態は傭兵)とジョージア軍の兵士たちです。

まずチェチェン人兵士(アメハド)と運転手が現れます。

「食料が欲しい」と。イヴォは自宅に招き入れパンを分け与えます。

アメハドは、イヴォに名を聞きます。イヴォは名乗ります。

イヴォもアメハドに名を聞きます。

アメハドは名乗りません。

ここが一つ目のポイントです。アメハドが名を名乗ればこの地域の兵士ではないことが分かるからです。

チェチェン人はイスラム圏です(ジョージアの宗教は東方キリスト教)。

モハメドはパンを受け取っただけで去っていきますが、

最後に一言、「いい兵士でよかったな。悪い奴もいるよ」と。

ここが伏線になっています。

 

この直後、この兵士たちとジョージア軍兵士の乗った車両が遭遇し撃ちあいになりモハメドは負傷しながらも生き残ります。

イヴォと隣人(マルゴスーみかん農家)は、兵士を丁寧に埋葬しようとします。

土で覆う寸前です。

一人の若いジョージア軍兵士(ニカ)が息をしていることに気づきました。

頭にひどい傷を負っていますが家に連れて帰り、医師の協力を得て看病します。

イヴォの家にはすでにモハメドが助けられてベッドにいます。

同じ家(部屋は違うが)に、敵味方の兵士が住むことになったのです。

戦友を殺された兵士二人は激しく憎み合います。

この辺りの展開は、まるで舞台を見ているようでした。

イヴォに「家の中では殺し合いはするな」と言われ、しぶしぶ了承するふたりの兵士。

家の居間にはイヴォの家族の写真が飾られています。

可愛い孫娘(すでにエストニアに帰国)の写真に、ニカは魅入ってしまいます。

それを見ていたイヴォは「写真より可愛いよ」と。家族への思いを吐露します。

ではなぜイヴォがこの地に残っているのか、本人は話しませんが徐々にわかってきます。

イヴォの仕事はみかん箱作りです。

膨大な数のみかんを出荷するのですからみかん箱の数も何百、何千箱必要なのです。

出荷の時期に間に合うように必死で作っている最中の戦争です。

ただ出荷もアブハジアの兵士頼みです。来てくれません。

このように隣人との共同作業ですから、この地を簡単に去ることはできません。

しかし、この地を去らない理由はまだあるのです。

最後に明らかになります。

 

最初は憎しみ合っていた二人の兵士は顔を合わせていく中でお互いを少しずつ理解していきます。

病が癒え、外に出るようになっても「殺し合いは今はしない」と言うまでになります。

野外で食事をするまでになったのですが、食事中にマルゴスの畑や家が爆撃されます。

 

そしてチェチェン人兵士部隊が登場します。

アメハドを見つけ尋問しようとします。

チェチェン人兵士はアメハドが同じ民族かどうか確かめるためにチェチェン語を話せと言います。

カッとなったアメハドは叫びます。

何を言ったと聞き直すと、アメハドは「馬鹿野郎」と言ったと話します。

怒ったチェチェン兵は、部下の兵士に撃てと命令します。

しかし、隠れていたニカ(ジョージア兵士)がアメハドを救うために発砲します。

激しい打ち合いの末に、生き残ったのはアメハドとイヴォの二人でした。

マルゴスはみかんの丘に埋葬されました。

ニカは、戦死したイヴォの息子の墓の横に埋められました。

ニカとイヴォの息子は敵対した軍隊にいました。

イヴォの思いが伝わるシーンです。

彼がここに残り続ける理由も分かりました。

 

ラストシーンは、アメハドが車を運転して故郷に帰るシーンです。

彼はニカが大切に補修していたカセットテープを聴きながら。

 

アメハドがイヴォに最初にあったときに言った言葉、

「いい兵士でよかったな。悪い奴もいるよ」。

結末の悲劇への伏線となっていました。

 

この作品は米アカデミー賞の外国語映画賞(2013年)にノミネートされています。

今年上映されていたら外国語映画賞を獲ったかもしれませんね。

 

思い出したこと。

「チェチェン語を話せ」と言われる下りで、私は「福田村事件」を思いだしました。

本当にぞっとしました。

福田村事件

関東大震災直後、千葉県を歩いていた行商の一行がある村で取り囲まれて、

日本語を話せと迫られ、行商の人が讃岐言葉で話し返すと、

「聞きなれない言葉だ、やってしまえ」と

虐殺された事件です。

 

 

最後に『ジョージア映画祭2022』を開催された主催者の方々に深く御礼を申し上げます。

素晴しいこころみでした。

長文お読みいただきありがとうございました。

 

💛ウクライナに平和を💛

 

 



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