岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

「剣岳 点の記」 観ました。

2009-07-01 05:37:56 | Y21山の会と、ハイキング
山好きとしては、見逃すわけにはいきません。
というわけで、映画館に出かけました。

剣岳という山があることは、多くの方がご存じだと思います。
富山県にある「岩の殿堂」です。
砺波平野からも遠望できます。

今では、登山道も完備し、一般の登山客も登っています。
しかしそれは夏山シーズンのみです。
冬の剣は、登山のエキスパートにのみ許される、まさに聖域です。

映画「剣岳 点の記」は、新田次郎の同名の小説を原作とします。
明治時代の陸軍陸地測量部の記録です。
この「点」というのは、三角点のことです。
全国に基準となる三角点を置いて行った記録ですが、
最後に、未踏の剣岳が残ってしまいます。

もちろん、その当時は過去の登頂の記録はありません。
だれも登ったものはいません。当然、道もありません。
どこから、登っていいのか、見当さえつかないしまつです。

浅野忠信演じる主人公、測量手の柴崎芳太郎と山案内人宇治長次郎を中心にした数名が
剣岳に挑むことになります。
宇治長次郎の名は、今も谷に名前として残っています。
剣岳八峰に突き上げる夏でも雪が溶けない「長次郎谷」として。

しかし、この小説は今まで映画化はされませんでした。
映像では、自然の厳しさを表現することは困難なことです。
寒さや暑さ、高度感、空気感、匂いなど、伝わりにくのです。
当然、山岳撮影は苦行のような撮影になるのですが、それが映像で伝えることは、まことに難しい。
このことが、映画作りを進めようとするスタッフに二の足を踏ませるのだと思います。

この映画の撮影が体感マイナス40度の中が行われたなどと説明されても感覚的にはわからないのです。
それでも、撮影隊は、「苦行」のような撮影をし、それを観てもらうことしかできないわけです。

映像には確かに地上にいては観ることのできない風景が映されていきます。
岩壁を恐怖に襲われながらよじ登り、雪の尾根を雪庇におののきながら歩く測量隊は、
まさに修験者の一行のように見えます。
そのようなシーンが続きます。
これでもか、というほど続きます。そのことが、道の長さを体感させます。

なぜ、地図をつくることで、こんな苦行をしなくてはならないのか。
主人公が悩みの迷路に入り込みます。
もちろん、この映画を観ている私たちも、どうして?と人ごとながら考えてしまいます。

そのような苦労の末に、彼らは登頂を果たすのですが...

映画は驚くような結末を迎えます。
その結末は、明治という時代を遥かに超えていきます。
あとは観てのお楽しみです。

※画像はインターネットより。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
観ました。 (冬野行彦)
2009-07-08 20:12:30
つい先日、私も観ました。感動しました。私は山屋(登山家の人は自分たちのことをそう言いますね)ではありませんが、標高6
00m程度の低山に住んでおり、山歩きは好きです。消防団にも入っているので、年に何度か近くの山(と言ってもせいぜい1000m
程度ですが)で遭難した人を探しに出ます。そんな低山ですら、冬は恐いです。それですら恐いのに、あの剣岳と言う山の恐ろしさと、そして美しさときたら、もう映像で観るだけでも驚きでした。死ぬまでに行ってみたいと思いました。でもラストシーンは驚きでしたね。今も私の近くの大峰山には山岳修行の行者さんたちが登っていますが、それにしても、あの剣岳を1000年も前の人がどうやって登ったんだろう?テントもなしに、ビバークしたんだろうか?まったく驚きです。とにかくこの映画、必見です。
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冬山 (岩清水)
2009-07-08 20:52:15
冬野行彦様
コメントありがとうございます。
剣岳の冬の怖さは、実はごく一部の人しか実感としては
知らないのでは思いました。
確かに雪が降れば1000mの山でも怖いです。それもが3000mの高さで日本海側にあるということは豪雪も加わります。
私なども冬の剣など最初から近寄りません。
夏だけで十分です。
その夏でも遥か昔に登っている人がいたことは驚きです。。
相当レベルの高い登山者がいたことは間違いありません。
泊まりは洞穴のように処にビバーグしていたと
思われます。
夜露がしのげれば夏ならなんとかなります。
夏に登ったのでしょうね。
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