いつものようにシネマクレール丸の内(岡山市)で観ました。
なんと3人で劇場を独占。経営が心配になります。近隣の皆さま、シネマクレール丸の内をよろしくお願いします。
さて、『リトルボーイ 小さなボクと戦争』についてです。
アメリカ西海岸の小さな町での話です。
メキシコ最大の映画賞3冠を獲得しています。
どうして、メキシコかなと思いますよね。実はこの映画はメキシコ出身の監督と脚本家で創った映画なのです。
このことは結構重要です。
舞台の中心は米国であり、もう1国は日本なのです。その両国のことを第3国が描くというのはフェアなように思いました。
この映画を観たアメリカ人も日本人も苦しくなる場面が多いのです。
物語はアメリカの小さな町で平穏に過ごしていた一家が戦争に巻き込まれていく話です。
主人公は8歳のペッパー。父親が大好きで、お互いに相棒という仲です。
真珠湾攻撃は受けたアメリカは復讐に燃え、ペッパーの兄ロンドンも軍隊へ志願しますが、合格しません。
その代わりに父親が召集されます。そんなことがあるとは思えませんが。
家族は悲嘆します。駅に見送りに行く風景に日米の違いはありますが、
家族の思いに違いがあるはずはありません。
そして、敵国を憎みます。日本では、アメ公、米国ではジャップと呼びましたね。
このジャップは全編を通じて叫ばれます。これって結構きついです。
日系人は米国では強制収容所へ送られるのですが米国に忠誠を誓った人は解放されます。
ペッパーの住んでいる町にも、そのような日系人がやってきました。
世話をしているのは神父さんです。人々は憎しみを露わにします。戦争って本当に嫌だと思います。
そのハシモトと名乗る日系人宅をペッパーと兄ロンドンが襲います。放火しようとしますが未遂に終わります。
ロンドンは収監され、ペッパーは神父の説教を受けます。
ペッパーは父を取り戻したい一心で、自分に父を救う力を与えてくださいと神父に訴えます。
父親は、フィリピン戦線で行方不明になっています。
(フィリピンで最初に戦闘があったのは開戦直後ですから1942年だと思われます。戦争が終わるのは1945年ですから家族の苦痛も長い間続いたことになります)
神父は聖なる書物の中から1編の紙を取り出しペッパーに与えます。
それは善行のススメでした。
・病人を見舞うこと・囚人を見舞うこと・裸者に服を与えること・家のない人に家を与えること。死者を埋葬すること
そして、最後に、ハシモトに親切にすること、を付け加えました。
ペッパーは父を取り戻すために、善行を開始します。
ペッパーとハシモトは共通点があります。
ともに虐められさげすまれているのです。
ペッパーは身長99cmで成長しない。「リトルボーイ」と呼ばれています。このことで町中の笑いものにされています。
このペッパーがハシモトと一緒に歩いているのです。
どのような目で見られるか想像がつきます。と同時に蔑む人間の弱さを見せつけられます。
そんな中、ペッパーは善行を始めます。なかなかユーモラスな善行なのです。
相変わらずイジメにあっているペッパーにハシモトは助言をします。
日本には侍という戦士がいる。その侍の中にクメ某という小さな侍がいた。
彼はモンゴルから攻めてきた兵士に対し秘術を尽くし撃退した。
やればできる。地面を見るな、空を見ろと助言します。
この助言に勇気を与えられたペッパーは見事に悪童を退治します。
いよいよ、父親の救出です。
日本がある西に向かい念力を掛け続けます。
リトルボーイによる念力はやがて原子爆弾「リトルボーイ」となって広島を襲います。
この攻撃によって、日本の街一つが壊滅してしまいます。
最初は喜んだペッパーですが、広島の悲惨さを知り考え込んでしまいます。
こんなことで父親が帰ってくるのだろうか。一層悲惨な目にあっているのではないだろうか。
※ネタバレしそうです。この辺りまでにします。
この映画は、戦争とはなにかを深く掘り下げています。
映画はフィクションですが戦争下に実際に起こったことを映像にしています。
戦争を知らない監督が、戦争を知らない世代に送る反戦映画です。