岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

起きてはならない「老人施設火災」。セーフティネットの穴に。

2009-03-21 08:10:13 | 国民と国会と政治
群馬県の渋川市の老人施設「静養ホームたまゆら」の火災のニュースに
これは「起こるべくして起こった悲劇だ」と感じました。
本当に、これは何重の意味でも悲劇だと思います。

まず、劣悪な介護施設状況。
誰からも(行政からも)見放された利用者の方々。
とても残念な言い方ですが「姥捨て山」(利用者の声)での悲劇です。

この施設は、東京都の生活保護受給者の受け入れ先になっていました。

都外で暮らす都民受給者は、約500名(毎日新聞)といいます。
この方々の生活の実態は、少なくとも行政は把握していません。
今のケースワーカーにその力(時間的経済的)はありません。
たぶん、家族の方も把握していないでしょう(一人暮らしだった方が多い)。

この施設の利用料は、7~9万円。
行政が支払うことができる範囲です。
この施設は、いわゆる「貧困ビジネス」を行っていたのです。
これはセーフネットの穴を狙ったビジネスです。

そのことは、社会福祉で仕事をしている人間(私など)には、
十分、想像できる範囲のことです。
介護施設の慢性的な不足、利用料の高さが、生み出したビジネスです。
これは、国のセーフティネットの破綻のひとつの形です。

なぜ、このような大きな問題を指摘する声が小さいのか。
社会福祉を仕事としているものの問題点がここにあります。

見ても、知らないふりをする。
言っても変わらないと、自分自身を納得させる行政人や福祉人が
このような事態を招いています。
お上に従順なだけでは、自らの身は守れても、市民の身は守れません。
市民の身を守れなくては、やがて自らの身も守れなくなるのは自明です。
自分自身に言い聞かせる言葉でもあります。






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2 コメント

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必要悪 (Maa-chan)
2009-03-21 13:45:09
 私もこのことを記事にしようかと思っていました。

 生活保護のお金は,「間違いなく」振り込まれますから,一人あたりは少額でもそれなりに収支計算ができます。ビジネスとしては安定性があるのでしょう。

 また生活保護行政の立場から見ても,高齢者の一人暮らしで身寄りのない生活保護の人,を受け入れてくれる民間アパートはありませんし,公営住宅でも難しい対応になります。
 「こういう人」を受け入れてくれる施設は,生活保護ワーカーにとってとってもありがたい施設ですし,ワーカー自身が仮に良心が痛んだとしても,ともかく「行き先」がない人を預かってくれるので,必要悪になっていると思います。
 さらに,施設入所(最低生活費は居宅同様のようですが)となれば,訪問格付ランクが一番低くなりますから,半年に一度訪問すればよくなり,「手間」も省けます。

 確かに,貧困&要介護の高齢者を受け入れる施設が少ない(ほとんどない)現状では仕方がない部分もあるのでしょう。しかし,措置時代は特別養護老人ホームがこうした方の受け入れを担ってきました。(待機期間は長いのですが)費用面でも,老人福祉法の措置は「応能負担」でしたから,貧困でもその範囲で費用徴収されており,この面では介護保険以降は貧困者には優しくない福祉に後退していることは否めません。

 この火災以前にも,埼玉県や千葉県・宮城県等でも,生活保護の方の施設での金銭や介護トラブルが発生しています。
 今回9人という方が亡くなっていますから,何らかの手を打たなければ,行政の怠慢を厳しく追及されるでしょう。

 それにしてもこの国は,人が死ぬまで動かないですね。相変わらずですが。
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想定されるすべて。 (岩清水)
2009-03-22 21:33:15
Maa-chanさん。
コメントありがとうございます。
事故の推移を見ていると、最悪の事態として想定されるすべてが出てきていますね。
日本の社会福祉制度の根本的な問題がここに
集約していると思います。

「見て見ぬふり行政」。
「だれかがやってくれる縦割り行政」。
「手が回らない行政」。

「言ってだめなら,しかたがないと諦める」○○。
○○には私も入ります。
いかんですね。
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