北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

まちづくりと神社

2008-03-25 23:35:36 | Weblog
 まちづくりと神社の関係について伺いに、東京都神社庁まで行ってきました。東京都神社庁と言うのは東京都内の神社を取りまとめている組織です。

 神道にも天理教や大本教などのように、教派神道と呼ばれる独立した教派がありますがそうしたところ以外の、ごく普通に町の中にあるような神社が属しているのが神社庁なのです。

 今日の趣旨は、まちづくりの中で神社側の関係者は神社の境内という土地をどのように考えているのか、という問題です。こちらのMさんという事務局長をお訪ねしたのですが、なかなか興味あるお話が聞けました。

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 まず東京都神社庁に登録されている神社ですが、都内全体では1200社、23区特別区内に限ると600社があるそうです。

「神社の数の増減はどのような状況ですか?」
「やはり少しずつ減っていると思います。ただし減るという言い方はいろいろあります。基本的には一つの神社は単体の宗教法人なのですが、氏子が少なくなって支えきれなくなったりすると、近くの神社に本務神社になってもらって法人格をまとめるということをするのです」

「そもそも宮司さんが常駐していない神社も多いでしょうからね」
「そのとおりです。そうした神社は普段宮司はいなくても、必ず本務神社というところが面倒を見る形になっています。そうして法人の数が減ってゆくんです」



「銀座などを歩いていると、ビルの中に組み込まれた神社があったりしますが、ああいうところもそうしたところでしょうか?」
「いえ、なかにはもう完全に神社庁の系列から抜けてしまった単立法人になってしまったところも多いですよ。たとえば靖国神社だって神社庁の系列には入っていない単立法人ですからね」

「なるほど。まちづくりで言うと、道路拡幅などで神社の土地が削られるということも多いのではありませんか?」
「まったく困ったことに、そうしたことは多いです。神社庁に属している神社が土地を処分するときには上部機関の許可が必要なのですが、突然事後承諾的な書類が上がってくることがあって困ります」

「なぜそんなことが?」
「宮司が常駐していない神社に多いケースですね。役員総代を地元の町内会長さんあたりが兼務でやっていたりすると、まちづくりのためには仕方がないか、ということで案外深く考えずに話を進めたりされるのです。ときどき国土交通省にもそのようなことがないように、というお願いの文書を出すのですが・・・」

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「ところで神社に対する信仰の念は、年々低下しているとお考えですか?」
「先日、神社にいましたら小学生くらいの子供から『お坊さん、ここは何というお寺ですか』と訊かれました。これにはびっくりしましたよ」

「それはちょっと驚きですね」
「ええ、やはりわが国のアイデンティティを形成している宗教的文化を軽視しすぎた結果ではないでしょうか。新年度から学習指導要領が変わって、社会科のなかで『宗教に関する一般的な教養』が重視され、祭りなど宗教の社会生活における役割などについては教えられるようになるということですから、そのあたりに期待をしたいものですね」

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「神社の氏子ネットワークが地域の防災に役立つということがあるように思うのですがいかがですか」
「確かに氏子ネットワークが強力なところは、災害時にも力を発揮するといえるでしょうね。逆に、阪神淡路大震災のときに、マンションに住んでいて氏子でもなんでもなかったのが、瓦礫の片づけで地域の人と始めて顔を合わせて会話をするようになり、地域がまとまるようになったという話も聞きました。地震の揺れで神社も倒れたり崩れたりしたなかで、自分たちの家の片付けもありながら、神社の片付けにやってきてくれた住民もたくさんいました。神社からのお願いなどとてもできない状況下だったにも関わらずです。そうしたことを鑑みると、まだまだ現状も捨てたものではないし、災害も逆手に取れば地域のコミュニティの大事さに気づくきっかけになるということだってありそうに思いますよ」

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 神社は境内の樹木などを考えると都会の中の貴重な緑の拠点でもあり、地域の信仰を通じたコミュニティの中心です。歴史や由緒を考え合わせると観光の拠点にもなりうる財産でもあります。

 まちづくりの重要な要素として、語られずにすむわけにはいきますまい。

 このテーマは今後も追いかけてみたいと思います。


コメント
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