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シロタ家の家系図
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帝政ロシア・ウクライナのユダヤ人居住区カミュニッツ・ボトルスキに住むシロタ家は度重なる迫害から逃れてキエフに移り、その兄弟姉妹は音楽学校を卒業後、それぞれロシアを脱出、ワルシャワ、ウイーン、パリに移り住み活躍しました。特に、ウイーンのレオはリストの再来といわれるピアニストとして大成功を、ピエールはピアニストとして修行しましたが、舞台に立つと上がってしまう性格から音楽プロデューサーとしてパリで大活躍を、と、それぞれ才能を開花させていました。しかし、第2次世界大戦とヒトラーのユダヤ人迫害で兄弟姉妹、その子どもたちは苦しみや悲しみの人生となっていく様をヨーロッパに暮らしたシロタ家の話をピエールの孫娘アリーヌが思い出の写真や手紙をもとに語り、ベアテが戦前・戦中・戦後を日本で暮らした父レオのようすを語るという展開でした。ベアテの流暢でユーモアたっぷりの語り口は重い内容の話をやわらかく伝えてくれました。さらに、当時のニュースのフィルムやシロタ家が関わった土地の現在の映像を丁寧に取り入れ、とても見ごたえのある作品でした。
神保町の岩波ホールで9月27日から10月17日までの限定特別上映
全編、レオ・シロタのピアノ演奏がバックに流れていましたので、私にクラシック音楽の知識と日本の音楽界の人々のことが分かっていたら、もっともっと楽しめたのに、とくやしい思いです。
GHQ民政局のスタッフとして日本国憲法の草案を手がけてベアテさんへの関心をお持ちの方だけでなく、日本の音楽界の話がふんだんに盛り込まれていますので、クラシック音楽に関心がある方にとってはとても興味深いと思います。さらに、第二次世界大戦と深くかかわったシロタ家の歴史も関心を引きます。ワルシャワで政治犯として行方不明になった長兄の息子イゴールはノルマンディー上陸作戦のポーランド軍の兵士として戦死しました。映画の最後はスペイン・カナリア諸島、グラン・カナリアのデル市にあるヒロシマ・ナガサキ広場に、スペイン語で書かれた日本国憲法第9条全文の碑があり、市長は「あの条文は世界の希望です」と、語って終わっているのは、この映画だからこそインパクトがあります。20世紀の世界を一家族をテーマに93分で語った佳作です。
是非、是非、お時間がおありでしたらいらしてください。
尚、レオ・シロタとベアテについて詳しくはココをクリックしてください。