2018年3,4月の訃報のまとめとして、著作を通して知っていた人を中心に。まず思想史家の武田清子さん。2017.6.20~2018.4.12、100歳。いやあ、100歳だったのか。経済史の長幸男氏の夫人だったから、戸籍名は確かに長清子だけど、何も新聞に戸籍名で訃報を載せなくてもいいじゃないか。(そういう新聞があった。)神戸女学院を出て、1939年に日米交換留学生として訪米。アメリカでラインホルト・ニーバーの知遇を得て、日米開戦後もアメリカにとどまった。戦前の米国留学経験者が今まで存命だったのかと感慨を持つ。一般的に一番有名なのは「天皇観の相克」(1978)だろう。これは70年代に現代史に関心があった人は全員読んだ。(少なくとも僕の周辺では。)内容的にも大変刺激的で、その後の研究のベースになっている。岩波現代文庫にある。
(武田清子)
・新崎盛暉氏は沖縄現代史の研究家で、沖縄大学名誉教授。1936~2018.3.31、82歳。一般向けの著作も多く、特に岩波新書の中野好夫・新崎共著「沖縄戦後史」(1976)、「沖縄現代史」(1996)の2著があるから、社会問題や現代史に関心があり、沖縄の現代詩を知りたい人がまず読んだと思う。その他数多くの著作があり、僕の沖縄理解のベースになったかも。
・金賛汀(キム・チャンジョン)氏は、在日朝鮮人の立場から数多くのノンフィクションを書いた。1937~2018.4.2、81歳。朝鮮大学校を出て、当初は朝鮮総連系の記者をしていたが、70年代半ばから組織に疑問を持ちフリーで著作活動を始めた。「在日朝鮮人現代民衆史」の先駆け的な存在で、「雨の慟哭」「火の慟哭」で注目され、次第にいじめ問題、朝鮮現代史なども追及した。「抵抗詩人尹東柱の死」「関釜連絡船」などずいぶん読んでると思う。晩年は新潮新書の「朝鮮総連」など総連批判、金日成神話解体の本が多いが、この人の本は読む意味がある。
(順に新崎、金、野添)
・秋田県で民衆史のノンフィクションを書き続けた野添憲治氏が亡くなった。1935~2018.4.8、83歳。本名が山田市右エ門というのは、ちょっと驚いた。何といってもこの人は、花岡事件である。秋田県の花岡鉱山に強制連行された中国人労働者が、虐待に耐えかねて敗戦間近の1945年6月に大規模な蜂起をした事件である。日本人4名が死んだが、その後中国人労働者419人が死んだ。敗戦後、藤田組や鹿島組の関係者らがB級戦犯に問われた。この事件を現地で問い続けたのが野添で、1975年の「花岡事件の人々」は後に現代教養文庫に入って多くの人に読まれたと思う。花岡事件関連本だけで10冊以上あると思うが、他にも出稼ぎ、小作争議、マタギ、農林業の人々など秋田に根を張って書き続けた。もっと大きく取り上げられるべき訃報だったと思う。
・他に推理作家内田康夫(3.13没、83歳)、考古学者で弥生時代研究で知られる金関恕(かなせきひろし、3.13没、90歳)、元原水協代表理事の吉田嘉清(3.21没、92歳)、「嘆きのボイン」で知られた上方落語の月亭可朝(3.28没、80歳)、浜松ホトニクス創業者でカミオカンデ製作に貢献した晝馬輝夫(ひるま・てるお、3.29没、91歳)、元駐米大使・大河原良雄(3.29没、99歳)
・元大蔵次官でJT社長や東証理事長を歴任した長岡実(4.2没、92歳)、「キムチとお新香」で知られた比較文化学者、金両基(キム・ヤンキ、4.2没、84歳)は在日韓国人初の公立大教授として静岡県立大教授になった、「信長の棺」などの作家、加藤廣(ひろし、4.7没、87歳)、元宝塚トップスターの順みつき(4.17没、70歳)
(内田康夫、月亭可朝)
外国人では、フランスのデザイナー、ユベール・ド・ジバンシィ(3.10没、91歳)、横綱白鵬の父、ジジド・ムンフバト(4.9没、76歳)、元米大統領夫人のバーバラ・ブッシュ(4.17没、92歳)など。ミステリー作家のフィリップ・カーも82歳で亡くなったと訃報が出ていたが(3.23没)、名前だけ。
(武田清子)
・新崎盛暉氏は沖縄現代史の研究家で、沖縄大学名誉教授。1936~2018.3.31、82歳。一般向けの著作も多く、特に岩波新書の中野好夫・新崎共著「沖縄戦後史」(1976)、「沖縄現代史」(1996)の2著があるから、社会問題や現代史に関心があり、沖縄の現代詩を知りたい人がまず読んだと思う。その他数多くの著作があり、僕の沖縄理解のベースになったかも。
・金賛汀(キム・チャンジョン)氏は、在日朝鮮人の立場から数多くのノンフィクションを書いた。1937~2018.4.2、81歳。朝鮮大学校を出て、当初は朝鮮総連系の記者をしていたが、70年代半ばから組織に疑問を持ちフリーで著作活動を始めた。「在日朝鮮人現代民衆史」の先駆け的な存在で、「雨の慟哭」「火の慟哭」で注目され、次第にいじめ問題、朝鮮現代史なども追及した。「抵抗詩人尹東柱の死」「関釜連絡船」などずいぶん読んでると思う。晩年は新潮新書の「朝鮮総連」など総連批判、金日成神話解体の本が多いが、この人の本は読む意味がある。
(順に新崎、金、野添)
・秋田県で民衆史のノンフィクションを書き続けた野添憲治氏が亡くなった。1935~2018.4.8、83歳。本名が山田市右エ門というのは、ちょっと驚いた。何といってもこの人は、花岡事件である。秋田県の花岡鉱山に強制連行された中国人労働者が、虐待に耐えかねて敗戦間近の1945年6月に大規模な蜂起をした事件である。日本人4名が死んだが、その後中国人労働者419人が死んだ。敗戦後、藤田組や鹿島組の関係者らがB級戦犯に問われた。この事件を現地で問い続けたのが野添で、1975年の「花岡事件の人々」は後に現代教養文庫に入って多くの人に読まれたと思う。花岡事件関連本だけで10冊以上あると思うが、他にも出稼ぎ、小作争議、マタギ、農林業の人々など秋田に根を張って書き続けた。もっと大きく取り上げられるべき訃報だったと思う。
・他に推理作家内田康夫(3.13没、83歳)、考古学者で弥生時代研究で知られる金関恕(かなせきひろし、3.13没、90歳)、元原水協代表理事の吉田嘉清(3.21没、92歳)、「嘆きのボイン」で知られた上方落語の月亭可朝(3.28没、80歳)、浜松ホトニクス創業者でカミオカンデ製作に貢献した晝馬輝夫(ひるま・てるお、3.29没、91歳)、元駐米大使・大河原良雄(3.29没、99歳)
・元大蔵次官でJT社長や東証理事長を歴任した長岡実(4.2没、92歳)、「キムチとお新香」で知られた比較文化学者、金両基(キム・ヤンキ、4.2没、84歳)は在日韓国人初の公立大教授として静岡県立大教授になった、「信長の棺」などの作家、加藤廣(ひろし、4.7没、87歳)、元宝塚トップスターの順みつき(4.17没、70歳)
(内田康夫、月亭可朝)
外国人では、フランスのデザイナー、ユベール・ド・ジバンシィ(3.10没、91歳)、横綱白鵬の父、ジジド・ムンフバト(4.9没、76歳)、元米大統領夫人のバーバラ・ブッシュ(4.17没、92歳)など。ミステリー作家のフィリップ・カーも82歳で亡くなったと訃報が出ていたが(3.23没)、名前だけ。