書きたい問題がいろいろあって時事問題をしばらく書いてない。この間、朝鮮半島の南北首脳会談が行われ、東アジア情勢に大きな変化が生じた。昨日、キム・ジョンウン国務委員長が訪中して、大連で習近平主席と会談したと発表された。今日(9日)はムン・ジェイン大統領と李克強首相が来日し、日中韓三国首脳会談が開かれた。この問題はとても重大なんだけど、それを書く前に「イラン核合意」を米国トランプ大統領が破棄した問題を書着ておきたい。
と同時に米国のポンペイオ新国務長官が現在、ピョンヤンを訪問している。来るべき米朝首脳会談の調整を行っているが、帰国時に北側に拘束されている米国籍の3人が解放されるかどうかが重大なシグナルになると思われる。朝鮮半島情勢と中東情勢は緊密に関連している。米国はちょっと前まで北朝鮮を先制攻撃するんじゃないかという観測まであったけれど、中間選挙を秋に控えたトランプ大統領は支持者受けする中東問題を重視した。5月には、イスラエルにある米国大使館をエルサレムに移し、イラン核合意を破棄した。完全にイスラエル寄りをアピールしている。
(イラン核合意破棄を発表するトランプ)
前から「イラン核合意は最悪の取引」と言ってきたから、その意味では今回の発表は意外ではない。もともとはオバマ政権の「功績」はみなひっくり返したいという衝動だったのかもしれない。しかし、大統領としての初の外国訪問にサウジアラビアを選んだトランプである。従来の中東政策に大きな変更を加えつつある。確かに最近、シリアやカタール、イエメンなどでイランの存在感が増している。最近行われたレバノンの選挙でも、シーア派民兵組織のヒズボラが勢力を予想以上に伸ばした。イラン対サウジアラビアの代理戦争が中東各地に広がりつつある。
イエメンの反政府系のフーシ派はイランの援助を受けているとされる。フーシ派と思われるサウジアラビアへのミサイル攻撃もたびたび起こっている。だからイランのミサイル開発に制限を掛けない合意はおかしいという主張も理解できないわけではない。しかし、核開発を中止し国際的な査察を受け入れるという基本は守られている(とされる)。この合意自体は意味があって、だからこそ米国以外の英仏独中露とイランはこの合意を今後も維持するとしている。それは事前に予想できるので、「アメリカの孤立」だけをもたらしているし、中東屈指の経済規模を持つイラン市場からアメリカが除外されるだけではないか。
この間イスラエルのネタニヤフ政権はトランプ大統領に合意破棄を強く働きかけていた。しかし、この合意を「不完全でイランの核開発を完全に防げないもの」と仮に考えたとしても、イスラエル自身が核保有国とされ、国際的な査察を受け入れないままでいるのでは説得力がない。中東にイスラエルだけが核兵器を保有しているというのは、なんで許されるのか。そっちこそが地域の波乱要因なんじゃないか。しかし、アメリカが国連安保理で拒否権を発動するから、イスラエルは何でもできてしまう。ネタニヤフ首相は汚職問題で捜査を受けていて、政権基盤が弱くなっている。トランプ大統領に頼って、イラン敵視を強めていた。
イランは国内情勢が複雑だ。2017年には大規模な反政府運動が起きた。保守穏健派のロウハニ大統領に対しては、保守強硬派からも改革派からも批判がある。政権のバランスは非常にもろいもので、外からの一方的な対応は保守強硬派を勢いづけ、イスラム体制の人権問題を深刻化させるだけだ。トランプはそういう事には関心がないというか、どうなってもいいというのがホンネだろう。これは非常に危険なことだと思う。中東のどこかでイラン・サウジの本格戦争が起きかねない。そうなった時には原油価格の上昇により、世界経済は破滅的な影響を受ける。
(イランのロウハニ大統領)
イスラム教のマジョリティであるスンニ派(スンナ派)とマイノリティであるシーア派は、確かに違うわけだがちょっと前まではお互いに攻撃しあうほどの敵対関係にはなかった。世界各地にあるモスクで一緒に祈りをささげることも普通だった。でも21世紀になって、特にイラク戦争を契機にして宗派対立が激しくなった。そうなるとシーア派が国教であるのはイランだけだから、イスラム世界で宗派対立が起きるとイランがシーア派(あるいはシーア派に近いマイノリティ)の支援に駆け付けることになる。そこでイランの存在感が増しているのは事実だ。その問題はどう解決できるのか、イスラム世界はまだ解を見つけていない。
と同時に米国のポンペイオ新国務長官が現在、ピョンヤンを訪問している。来るべき米朝首脳会談の調整を行っているが、帰国時に北側に拘束されている米国籍の3人が解放されるかどうかが重大なシグナルになると思われる。朝鮮半島情勢と中東情勢は緊密に関連している。米国はちょっと前まで北朝鮮を先制攻撃するんじゃないかという観測まであったけれど、中間選挙を秋に控えたトランプ大統領は支持者受けする中東問題を重視した。5月には、イスラエルにある米国大使館をエルサレムに移し、イラン核合意を破棄した。完全にイスラエル寄りをアピールしている。
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前から「イラン核合意は最悪の取引」と言ってきたから、その意味では今回の発表は意外ではない。もともとはオバマ政権の「功績」はみなひっくり返したいという衝動だったのかもしれない。しかし、大統領としての初の外国訪問にサウジアラビアを選んだトランプである。従来の中東政策に大きな変更を加えつつある。確かに最近、シリアやカタール、イエメンなどでイランの存在感が増している。最近行われたレバノンの選挙でも、シーア派民兵組織のヒズボラが勢力を予想以上に伸ばした。イラン対サウジアラビアの代理戦争が中東各地に広がりつつある。
イエメンの反政府系のフーシ派はイランの援助を受けているとされる。フーシ派と思われるサウジアラビアへのミサイル攻撃もたびたび起こっている。だからイランのミサイル開発に制限を掛けない合意はおかしいという主張も理解できないわけではない。しかし、核開発を中止し国際的な査察を受け入れるという基本は守られている(とされる)。この合意自体は意味があって、だからこそ米国以外の英仏独中露とイランはこの合意を今後も維持するとしている。それは事前に予想できるので、「アメリカの孤立」だけをもたらしているし、中東屈指の経済規模を持つイラン市場からアメリカが除外されるだけではないか。
この間イスラエルのネタニヤフ政権はトランプ大統領に合意破棄を強く働きかけていた。しかし、この合意を「不完全でイランの核開発を完全に防げないもの」と仮に考えたとしても、イスラエル自身が核保有国とされ、国際的な査察を受け入れないままでいるのでは説得力がない。中東にイスラエルだけが核兵器を保有しているというのは、なんで許されるのか。そっちこそが地域の波乱要因なんじゃないか。しかし、アメリカが国連安保理で拒否権を発動するから、イスラエルは何でもできてしまう。ネタニヤフ首相は汚職問題で捜査を受けていて、政権基盤が弱くなっている。トランプ大統領に頼って、イラン敵視を強めていた。
イランは国内情勢が複雑だ。2017年には大規模な反政府運動が起きた。保守穏健派のロウハニ大統領に対しては、保守強硬派からも改革派からも批判がある。政権のバランスは非常にもろいもので、外からの一方的な対応は保守強硬派を勢いづけ、イスラム体制の人権問題を深刻化させるだけだ。トランプはそういう事には関心がないというか、どうなってもいいというのがホンネだろう。これは非常に危険なことだと思う。中東のどこかでイラン・サウジの本格戦争が起きかねない。そうなった時には原油価格の上昇により、世界経済は破滅的な影響を受ける。
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イスラム教のマジョリティであるスンニ派(スンナ派)とマイノリティであるシーア派は、確かに違うわけだがちょっと前まではお互いに攻撃しあうほどの敵対関係にはなかった。世界各地にあるモスクで一緒に祈りをささげることも普通だった。でも21世紀になって、特にイラク戦争を契機にして宗派対立が激しくなった。そうなるとシーア派が国教であるのはイランだけだから、イスラム世界で宗派対立が起きるとイランがシーア派(あるいはシーア派に近いマイノリティ)の支援に駆け付けることになる。そこでイランの存在感が増しているのは事実だ。その問題はどう解決できるのか、イスラム世界はまだ解を見つけていない。