星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
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ドイツ映画祭後記

2005-06-13 | 映画にまつわるあれこれ
ドイツ映画祭が終った。
会期中、2作品を見ることが出来た。

5/31のとこでも書いた「青い棘」の、上映前と後に、監督さんの挨拶&インタビューがあった。この作品は1927年にベルリンで起きた実話がもとになっているのだが、監督は「自殺クラブ」という言葉を使っていた(ドイツ語解らないから通訳の人の言葉)。R・L・スティーブンソンの小説にも、王子が身分を隠して「自殺クラブ」に入り込む話がある(この映画と内容は全然違います)。ふとそれを思い出した。
大富豪の息子ギュンター(アウグスト・ディール)が、なぜ「自殺クラブ」なるものを思い描くに至ったか、その友だちパウル(ダニエル・ブリュール)は境遇も異なり、そのズレが最終的な道のズレにも繋がるわけだけれど、その二人の背景がもう少し描けていたら良かったのに、と思った。

ともかくも「青い棘」は美しい映画でした。これのTrailerを見た時から気に入っていたのだけど、サントラがとても良くて、ドイツ版Amazonで聴くことが出来る(「青い棘」サントラ Amazon Germany) 
今秋の日本公開の頃には、こちらでも買えるかしら。でも、早く聴きたいなあ、、、。

もう1作品は「9日目」(写真)。
「ブリキの太鼓」のシュレンドルフ監督作品。こちらは難しい映画でした。
ナチスの収容所からひとりの司祭が釈放される。しかし、それは「釈放」ではなく、実際は、教会をナチス側に有利なように働きかける任をその司祭に負わせる為の、一時的な解放にすぎなかった。彼を、信仰と現実(家族や収容者仲間)との狭間へ言葉で追い詰めていく若きナチSS役が、アウグスト。聖書の教義や、イエスや信徒に対する解釈を、司祭に説き伏せていく、この難しい役柄を、若いながら頑張って演じていたと思います。弁の立つ将校として、言葉をまくし立てるところが、素晴らしく独逸語が綺麗(意味解らないので、あくまで音として)。この人、舞台も確かこなすと思うのだけれど、そのあたり堂々としたものでした。
ただ、、、本当に若い。色が白いから、激昂すると顔がぱーっと紅潮して、少年じみた素がふとのぞく。。その少年ぽさが、感情を捨てた若きナチSSが垣間見せる<素>の部分なのかどうかは、人によって感じ方はちがうと思いますが、、、。

今年は戦後60年目。ドイツ映画では、今作品や、「MY FATHER」(公式ブログ>>)など、第二次大戦で犯した罪を正面から描こうとする作品が生まれているけれど、そういう姿勢がわたしたちにももっとあるべきではないのかな。。。唯一の被爆国ではあるけれども。「前へいきましょうよ、前へ」、、とか言ってる政治家の声(国民感情を代弁する声か?)を聞くと恥かしくて吐気がする。(註・・・あとで公式ブログ見たら、ドイツ映画ではないのですね、なるほど。。戦争を描くのは難しい・・・)

「青い棘」の監督さんが裏話を披露してくれた。
ダニエル・ブリュールで世界的ヒットとなった「グッバイ、レーニン」は、当初、アウグスト・ディールに主役を打診していたのだそう。でも、アウグストがそれを断った為に、ダニエルになったとか。。。断るアウグストも自分を良く知っていると言うか、、、アウグスト主演だったら、あんな大ヒットになったかどうか。。。
彼のことが予告編の紹介で「ヘルムート・バーガーの再来」と出てた。そうかなあ、、、? 確かに貴族的な美しさの中に狂気をもった役者さんだと思います。私はヘルムート・バーガー全然好きではないので、・・・だけど、「ルードウィヒ」をリメイクさせたらやっぱり似合うだろうな。