星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

ジェイムス・ブラント@SHIBUYA-AX Apr.24,2006

2006-10-05 | LIVEにまつわるあれこれ
まだUPしていなかったLIVEレポ、
4月のJames Blunt さんからにしましょうか。。

その日は、家で作業をしていて、まあ、渋谷だし、指定席だし、とタカをくくって開場時間ごろに家を出たら、駅に着いてからAXまで辿り着くのに、人込みを掻き分けかきわけ、遅々として進まず、、入口に入ったらもう歌が聞こえてました。確か「High」、、。でも息が切れていたのでバーでウォッカトニックのカップを購入、すでに超満席状態の座席を自分の位置まで係りの人に連れて行ってもらい、、。開演は、ほぼ時間通りだったみたい、真面目な人です。AX2階の座席の後ろも立見の人がいっぱいに入ってて、私の横の通路にも外国のお姉さま方がビール片手に立っておられました。

曲順など忘れてしまったので、アルバムを聴きながら、思い出したことつらつらと書いてみたのですが、なにしろ、まだ持ち歌が10曲しか無いんですから、総ての曲プラス2曲ほど(60年代の曲のカヴァーとエルトンだったかな、あやふや)、、、あっという間に終わってしまったLIVEでした。でも全ての曲、非常に丁寧に、素晴らしい歌声で、、CDでもそうですが英語の発音もはっきりした美しい響きで、あんなに歌詞の聞き取れたLIVEは初めて。、、でも、一方、語りは何をお話になったか全然おぼえてません、、(侘)。ただ、「どうもありがとうございます」という日本語がちっとも外人さん風じゃなて、吃驚したのと、Rockスター風の言葉、、(Yeahとか、ね)を一切使わなかったのが印象的。

でも、姿はぼたっとしたジーンズのぜんぜん飾らないかっこうで、ガタイが思いの外、大きくてね、第一印象が「やっぱ軍人さんの身体だぁ」、、。だから、声量も見事でした。

Bluntさんは、吟遊詩人とよく書かれていますが、詞(コトバ)と音の抑揚が絶妙なんだと思うのです。、、唐突な話、、かつて藤山一郎さんは、たとえば「空(そら)」とか、コトバの音の高低と曲の音階が合うように非常にこだわったそうですが、ちょっとそんなことも想い出したりして、、。歌詞の単語も、私にもわかる簡単な単語が多いのに、その語彙で素晴らしい詩をつくる、やはり詩人なのです。そして、声は、、CDで聴くよりも、感情が入るぶんだけ、あの独特のヨーデルっぽい声の変化がさらに大きくて、CDの声に〈光〉と〈色〉が加わったみたい。

印象に残った歌は、、もう、殆どなんですが、、書き切れないので、、。
最大は、ピアノの弾き語りで歌った「Goodbye My Lover」。。CDでも、泣きそうになってしまう曲は結構あって、(僕の肩で泣きなよ、友だちだから)という「Cry」とか、弱いんだけど、でもこの「Goodbye My Lover」は、LIVEで聴いてどうしようもなかったです。。自分が、やることがいっぱいの時期だったので、泣いてなんかいられないからCDも余り聴いていなかったのに、会場でこの歌の歌詞がもう突き刺さるように迫ってきて、英語なのにダイレクトに「解る」というのが、この時の彼のうたごえのチカラだと思うんですけどね、、ウォッカトニックのカップの縁噛みながら、一生懸命我慢したけど、ぼろぼろでした。。
、、畳み掛けるように言葉を重ねる部分…

You touched my heart you touched my soul.
You changed my life and all my goals.
And love is blind and that I knew when,
My heart was blinded by you.
I've kissed your lips and held your head.
Shared your dreams and shared your bed.
I know you well, I know your smell.
I've beed addicted to you.

というところ。。歌詞なんて覚えてなかったのに、不思議。、、この歌詞を見てもきっとわかるように、韻の踏み方と、〈対句表現〉って言ったらいいのかしら、、? 巧い、などと感じる間もなく、情景?想い?が頭を駆けめぐって「泣け」と言わんばかりでした(彼自身、これで女のコを泣かせようとしてるなんてパンフに書いちゃって、、ヤな英国人ですね・笑)。でも、実際、、こんなに感情を込めて歌われてしまって、次の曲、、どうなっちゃうんだろう、、と心配になる程でした。(でも、あっさりと雰囲気戻して、さすがプロ)。

あと、バックスクリーンの映像が、とてもとても美しくてね、、。
アルバムジャケットにも、影絵のような動物たちの絵がのっていますが、そういう影絵が映し出されて、なんだか、万華鏡のように形を変えて、揺れているのが、すご~く美しかったです。「Out of My Mind」の中の、マイマイ~、マイマイ~(my mind)と繰り返されるフレーズの時、あの王冠を被ったお猿さんがいっぱい天井からしっぽで下がってきて、その影が伸びたりちぢんだり、、、とってもファンタジックで素敵でした。



Bluntさんはお父さまも軍人、本人も前歴はNATOの平和維持軍の将校だった、というのは良く知られていますが、、直接的に戦闘地域のことをうたった歌「No Bravery」のときには、スクリーンには、軍用車の上から撮影したと思われる村の様子がずっとずっと映し出されていました。画面の端に、日時・秒を示す数字がカウントされていくのが見えたのでたぶん当時、自分でビデオ撮影したものなのでしょうね。この曲もピアノの弾き語り。しん、と静まる会場、、、でも、MCで何かメッセージ的なこととかはまったく言わず、淡々と歌で表現していました。淡々、、、などと、書いてはいますけれど、それはもう、、、何か怒りを秘めた凄い声でした、この時。。

ラストは、「You're beautiful」。
このBluntさんの歌とほぼ同時期に、吉井和哉さんの新曲のタイトルも、「Beautiful」で、、ちょっとびっくりしたのを憶えてます。、、でも、どちらも本当に美しい曲で、、不思議にも、どちらもさりげない日常のひとこまで見る「美しい人」の歌で、、、(だけど、CMソングのイメージに使われるような、ただほんわか幸せなだけの歌ではなくて)、、世界や世情がこんなだからこそ、、繊細なふたりのミュージシャンの感性が、同時期になんだか重なり合っていた感じ、それがこちらの日々の想いにそっと寄り添ってくる、すごいなあ、、と思う、大好きな歌です。それを聴いて、、おしまい。アンコールが無かったのか、アンコールがこの曲だったのか、、すみません、忘れました。

ブラントさんの歌は、(吉井さんの歌もそうかも)、、全部は言わない歌、、だと思うな。。あるいは、、別の意味にもとれる歌。。先にも書きましたが、あの会場に響いていた<声>が、その時の歌の意味をつたえるもの、、、と、思います。だから、CDを聴いていると、頭の中に、もうひとつのLIVEの〈声〉が浮んできたりする、、それが体験、なのかな。。。

会場を出て、まっすぐ家に帰って、、また机に向かったのでした。。