星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

罪にさく花をかざらむ

2006-10-08 | 文学にまつわるあれこれ(詩人の海)
強風にぬぐわれた、凄いような満月。
地上の塵にまみれない月光は
目を射すほどに眩いのだと知る。

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昭和のはじめの古本を注文し、今に届くか、とどくかと心待ちにしていたのが届かないので、問い合わせたところ、
なんだか行方不明になってしまった気配。。
月明かりの草原にまぎれてしまった落し物、、見つかって欲しいのだけれど、、。

 ***

以前、、

 「もしどうしてもだれかを召さなくてはならないとしたら、このぼくを」

という一文のある 『火を喰う者たち』という本について書きましたが(>>)、
米国の、(何度となく繰り返される!)銃乱射事件での、「私を…」と訴えた少女の記事を目にして、たまらない気持ちになります。

そのとき、開いた本にこんな詩をみつけました。



   キリストよ
   こんなことはあへてめづらしくもないのだが
   けふも年若な婦人がわたしのところに来た
   そしてどうしたら
   聖書の中にかいてあるあの罪深い女のやうに
   泥まみれなおん足をなみだで洗つて
   黒い房房したこの髪の毛で
   それを拭いてあげるやうなことができるかとたづねるのだ
   わたしはちよつとこまつたが
   斯う言つた
   一人がくるしめばそれでいいのだ
   それでみんな救はれるんだと
   婦人はわたしの此の言葉によろこばされていそいそと帰つた
   婦人は大きなお腹をしてゐた
   それで独り身だといつてゐた
   キリストよ
   それでよかつたか
   何だかおそろしいやうな気がしてならない
                 (キリストに与へる詩/『山村暮鳥詩集』より)

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この世界の中で、、「一人がくるしめばそれでいいのだ」、、、と、納得するには、、
やはりあまりにも「何だかおそろしい」、そして、せつない。

、、、職場で、休んでいる人、介護をしなければならない人、、その代わりで不規則な超過出勤がつづいた一週間。しかも、台風、大雨。。
昨夜、おおきな月を眺めつつ帰宅。。
心待ちにしている本、心待ちにしていた音楽、、、まだ、手元にない。。 お祝いが言えない、、
ごめんね。 でもいそがない。

山村暮鳥は聖職者になる一方、ボードレールを愛し、その官能、悪徳をうたった芸術と、信仰や人間への信頼の有り方をつねに自問していた詩人のように思います。
暮鳥の「挿話」という詩の中の、第2連だけ、、。

   しろがねの指にまつはる愛の伴奏
   その髪には罪にさく花をかざらむ