星のひとかけ

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Winterreise『冬の旅』:第二章「風見」 Die Wetterfahne

2018-11-27 | 文学にまつわるあれこれ(詩人の海)


この章の最初でボストリッジさんは この歌の短いピアノの前奏について説明をします。
(この本はまだ出版からそんなに経っていないので、本文に触れるのはやめようと思います)

CDの レイフ・オヴェ・アンスネスさんのピアノに耳を傾けてみます…

… そう、、 風見。 風にくるくると烈しく回り、、 ふっと向きが止まったと思うと震えるように揺れている… 、、その情景が見えてきます。

、、 ボストリッジ&アンスネスさんのCD「冬の旅」(2004)では この歌は「風見の旗」というタイトルになっていますが、 ボストリッジさんの著書では「風見」。。 そう、著書の中では 金属製の風見として書かれているし、 私もそう思う(あのピアノは金属の風見鶏…) 
本書のほうがCDよりも後に書かれているので(2015年) 現在のボストリッジさんの意見はきっと「旗」ではないのだと思います。。

、、女性の家を出た男を冬の寒さが襲い、、 身を硬くした彼に追い打ちをかけるように 背後の彼女の家の屋根で風見が金属の音を立てて回る…  その音にふいに男は振り返って 彼女の家をもう一度見上げたのでしょう、、 そう思います。。

「風見」には、 その家の格式をあらわす「紋章」としての役割もあるのだそうです。(コトバンク>>) 

、、そして ボストリッジさんは この男とこの女性の家柄について考察をします。。 第一章の歌で、 この男は5月にはこの女性にやさしく迎えられたことになっていますから、 5月から冬になる今まで この家に逗留していた、ということなのでしょう、、 どういう役割として…? 、、なのに なぜ此処を立ち去らねばならなくなったのか…

ボストリッジさんの考察は この歌曲の「旅人」から、 シューベルトその人へと繋がっていきます。 ここからが本当に綿密、かつ詳細、、。 研究者とはそういうものであらねばならないのでしょうが、 シューベルトと友人との書簡や、 さまざまな研究者の主張を紹介しつつ、 自分の考えを模索していきます。

シューベルトは生涯 結婚せずに31歳で亡くなったそうですが、 彼は女性を愛したことはあったのか、 また男性を、、? 友人らの証言、 研究者の異なる意見、、 それに対する反駁、、

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、、私はシューベルトの評伝については何も知らない無知なのですが、 シューベルト自身はとくに名家の生まれではなかったようですね。 それで 作曲をしてもすぐに満足な収入が得られるわけでもなく、 最初は教師になり、 そのほか裕福な家庭へ招かれてそこの子女にピアノを教えたり…

、、 この章の最後で ボストリッジさんが「追記」として フリードリヒ・ヘルダーリンという詩人について触れている部分にとても興味を持ちました。

ヘルダーリン、、 以前にちょっと(ほんのちょっとだけ)なにかで読んだ覚えがありました、、 ドイツロマン派 ドイツ観念論 と関係のある… (私がもっと勉強しなければいけない未熟な分野)

ボストリッジさんは このヘルダーリンという詩人が 「冬の旅」の主人公を理解するのに役立つかもしれない、と ここで紹介をしているわけです。

… 冒頭で書いたように本文に触れることはしませんので、 私がヘルダーリン理解にとても役立った 松岡正剛さんの文章にリンクしておきます。 とても素敵な文章ですので ぜひともご一読を、、


松岡正剛の千夜千冊 フリードリッヒ・ヘルダーリン『ヘルダーリン全集|全4巻』>>

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ヘルダーリンの詩にあらわれる「風見」…

これについてもボストリッジさんは ブリテンの「六つのヘルダーリン断章」として歌っていらっしゃるのですね、 CD化もされていました

Ian Bostridge // Britten: Songs - Warner Classics
「六つのヘルダーリン断章」の第5曲の詩で ヘルダーリンは「風見」と冬の心をうたっているのだそうです。 、、まだ私、 聴いていません、、


冬の夜風に回る金属の風見…


… 彷徨い人の 魂です …