先月以降、 'Heroes' の歌詞のことなど少し触れてきましたが、、 そんななかで記憶にのぼってきた、 イアン・マキューアンの小説 『イノセント』 (宮脇孝雄訳・早川文庫)
もとの出版は 1990年で、 私が買った邦訳は 94年版文庫ですが、読んだのはだいぶ後だったような。。
第二次大戦終結から 10年後、 1955年のベルリンが舞台で、 私は現代史に疎いので ベルリンの壁は終戦と同時に東西にベルリンが分割されたときにすぐ出来たものかと思ってましたが、、 1961年以前は、ソ連側が統治する東地区と、 英・米・仏が統治する西地区とは、 交通や通勤が可能だったのですね、、(詳しくはウィキとかで)
小説の背景、55年当時は冷戦が深まる時期で、 英米側、ソ連側、互いの動きを探る諜報活動に躍起になっている時代。。 ソ連の通信を傍受する任務につくために軍に派遣された 25歳のまだ恋もしたことのないような うぶな英国人青年と、 占領下のドイツ人女性(30歳、離婚暦あり)との物語。
前に読んだときは、 その政治的背景がなかなか呑み込めず、 恋愛模様には惹かれたけれども、 諜報活動の実態がよく理解できなくて いまいち入り込めなかったのです、、 が、、 ボウイが77年に、 作ったばかりの「ヒーローズ」をせつなそうに歌う姿を 今一度観てからは、 急にこの小説を読み返してみたくなって、、、
今日は、 ボウイのベルリン三部作含め、 ありったけのボウイ作品をかたっぱしからかけながら(持ってないものはネットの力を借りて聴きつつ) 、、一気に読んでしまいました。
***
、、 べつにボウイの歌となにか関係があるわけではないんですけどね、、 ベルリンの壁の傍らでキスを交わす恋人たち、、 その映像だけはなんとなく頭に浮かべつつ・・・
小説のふたりの出会いの場面が面白いんです。 25歳の青年は、 新しく任務についたばかりで何も知らず、 先輩アメリカ人に連れられて飲みに出掛け、 その酒場には、 各テーブルごとに「配送管」が通っていて、 メモとかをカプセルに入れて圧縮空気で飛ばすことができるの。 「エアシューター」ってやつですね。 すでにべろんべろんに酔ってしまっている25歳坊やのところに、 その女性から 「こちらに来て私と踊ってくださらない?」 ってメッセージが届くのです。
、、 私事ですが、、 私この「気送管」というやつを知ってます。 物心ついた時から大学病院とか行ってたので、 そこでは「カルテ」をカプセルに入れて 圧縮空気の通った管へ〈シュパッ…〉と送るんです。 フロアを越えて 外来から病棟とかへカプセルが飛んでいくの。。 で、、また戻ってくると〈ゴトッ!〉って管から落っこちて来る。。 どうやって行き先を変えるのか、、 今でも謎・・・ さすがに最近は見たことありません。
、、話逸れました。
なんだか そんないかにもベルリンぽい緊張と狂騒が混沌とした酒場での出会いから、 このうぶな青年と 5歳年上の女性とが親密になっていく過程の描写は、 とてもどきどきさせられるし、 さすがマキューアン、描写も濃密です。
それなりに長い小説ですから、 ボウイの歌のように 「たった一日だけはヒーローになれる」 という熱い想いにかられたのちも、 二人は大変な事に巻き込まれていくわけですが、、 ボウイの歌の 「for ever and ever」… という歌詞も、、まったく関係がないわけでは。。。
***
小説のラストシーンは、、 それから30年余り経った 1987年6月のベルリン、なんです。 これって、、(!) ・・・今日気付いた、、
デヴィッド・ボウイが ベルリンの壁の近くで野外コンサートを開き、 その音楽を東側へスピーカーを向けて 東の青年たちも聴きに集まった、という、、 まさにその同じ月なんですよね。 マキューアンの小説には 「ボウイ」の事はまったく出てこないけれども、、 この小説の出版は90年だし、 マキューアンは英国人だし、 ベルリンが舞台の小説の構想をしていたのなら、 ボウイのニュースも耳に届いていたのでは、、と思うし、、 何より 東西冷戦下のベルリンの恋人たち、という構想が そもそも「Heroes」から来ているんじゃないかとさえ 勘繰りたくなってしまいます。。
マキューアンはボウイより1歳年下。 そして、 マキューアンの小説には、 音楽のタイトルやアーティスト名がよく出てくる。 この小説にも、 50年代後半に流れたポップスがいっぱい。。 私には「ロック・アラウンド・ザ・クロック」や、 プレスリーの「ハートブレイク・ホテル」くらいしかわからなかったけど、、。
今日は、 ずっとボウイを聴きながら読んでいたけど、、 小説に登場する歌をどんどん検索して聴きながら、 50年代のベルリンに流れていた曲を味わいつつ読んでみるのも良いと思います。 、、だから、、ね、 きっとボウイの「ヒーローズ」も マキューアン聴いてないわけがないし。。
小説の後半は、 サスペンスの要素が強くて、 グロテスクな部分もあり、、 「好きな小説」というわけにはいかないけれど、、 でも再読できて良かったかな。。 特にラストシーンが 87年6月、だったという発見は、 ものすごい現実感をもって迫って来ますね、 時代背景をあらためて知ると。。
***
あ、、 だいじなこと。。
さきほど書いた、 ベルリンでのボウイの野外コンサートの事など、、 日曜日の NHK『映像の世紀』で放送されるそうです。 私も絶対見ないと、、
ボウイ、ビートルズらの貴重映像も。NHKスペシャル「新・映像の世紀」第5集、2/21放送(RO69)
、、上の写真に一緒に写した 『レコードコレクターズ』ボウイ追悼特集、、
買ってきたけど、、 まだ開いてません。。
すごく良い内容だって たくさんツイートされていたので、、 またじっくり読んでいこうと思います。 、、 まだまだ、、 ボウイのことばかり、、 考えてしまっている… お馬鹿さんな私。。。
もとの出版は 1990年で、 私が買った邦訳は 94年版文庫ですが、読んだのはだいぶ後だったような。。
第二次大戦終結から 10年後、 1955年のベルリンが舞台で、 私は現代史に疎いので ベルリンの壁は終戦と同時に東西にベルリンが分割されたときにすぐ出来たものかと思ってましたが、、 1961年以前は、ソ連側が統治する東地区と、 英・米・仏が統治する西地区とは、 交通や通勤が可能だったのですね、、(詳しくはウィキとかで)
小説の背景、55年当時は冷戦が深まる時期で、 英米側、ソ連側、互いの動きを探る諜報活動に躍起になっている時代。。 ソ連の通信を傍受する任務につくために軍に派遣された 25歳のまだ恋もしたことのないような うぶな英国人青年と、 占領下のドイツ人女性(30歳、離婚暦あり)との物語。
前に読んだときは、 その政治的背景がなかなか呑み込めず、 恋愛模様には惹かれたけれども、 諜報活動の実態がよく理解できなくて いまいち入り込めなかったのです、、 が、、 ボウイが77年に、 作ったばかりの「ヒーローズ」をせつなそうに歌う姿を 今一度観てからは、 急にこの小説を読み返してみたくなって、、、
今日は、 ボウイのベルリン三部作含め、 ありったけのボウイ作品をかたっぱしからかけながら(持ってないものはネットの力を借りて聴きつつ) 、、一気に読んでしまいました。
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、、 べつにボウイの歌となにか関係があるわけではないんですけどね、、 ベルリンの壁の傍らでキスを交わす恋人たち、、 その映像だけはなんとなく頭に浮かべつつ・・・
小説のふたりの出会いの場面が面白いんです。 25歳の青年は、 新しく任務についたばかりで何も知らず、 先輩アメリカ人に連れられて飲みに出掛け、 その酒場には、 各テーブルごとに「配送管」が通っていて、 メモとかをカプセルに入れて圧縮空気で飛ばすことができるの。 「エアシューター」ってやつですね。 すでにべろんべろんに酔ってしまっている25歳坊やのところに、 その女性から 「こちらに来て私と踊ってくださらない?」 ってメッセージが届くのです。
、、 私事ですが、、 私この「気送管」というやつを知ってます。 物心ついた時から大学病院とか行ってたので、 そこでは「カルテ」をカプセルに入れて 圧縮空気の通った管へ〈シュパッ…〉と送るんです。 フロアを越えて 外来から病棟とかへカプセルが飛んでいくの。。 で、、また戻ってくると〈ゴトッ!〉って管から落っこちて来る。。 どうやって行き先を変えるのか、、 今でも謎・・・ さすがに最近は見たことありません。
、、話逸れました。
なんだか そんないかにもベルリンぽい緊張と狂騒が混沌とした酒場での出会いから、 このうぶな青年と 5歳年上の女性とが親密になっていく過程の描写は、 とてもどきどきさせられるし、 さすがマキューアン、描写も濃密です。
それなりに長い小説ですから、 ボウイの歌のように 「たった一日だけはヒーローになれる」 という熱い想いにかられたのちも、 二人は大変な事に巻き込まれていくわけですが、、 ボウイの歌の 「for ever and ever」… という歌詞も、、まったく関係がないわけでは。。。
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小説のラストシーンは、、 それから30年余り経った 1987年6月のベルリン、なんです。 これって、、(!) ・・・今日気付いた、、
デヴィッド・ボウイが ベルリンの壁の近くで野外コンサートを開き、 その音楽を東側へスピーカーを向けて 東の青年たちも聴きに集まった、という、、 まさにその同じ月なんですよね。 マキューアンの小説には 「ボウイ」の事はまったく出てこないけれども、、 この小説の出版は90年だし、 マキューアンは英国人だし、 ベルリンが舞台の小説の構想をしていたのなら、 ボウイのニュースも耳に届いていたのでは、、と思うし、、 何より 東西冷戦下のベルリンの恋人たち、という構想が そもそも「Heroes」から来ているんじゃないかとさえ 勘繰りたくなってしまいます。。
マキューアンはボウイより1歳年下。 そして、 マキューアンの小説には、 音楽のタイトルやアーティスト名がよく出てくる。 この小説にも、 50年代後半に流れたポップスがいっぱい。。 私には「ロック・アラウンド・ザ・クロック」や、 プレスリーの「ハートブレイク・ホテル」くらいしかわからなかったけど、、。
今日は、 ずっとボウイを聴きながら読んでいたけど、、 小説に登場する歌をどんどん検索して聴きながら、 50年代のベルリンに流れていた曲を味わいつつ読んでみるのも良いと思います。 、、だから、、ね、 きっとボウイの「ヒーローズ」も マキューアン聴いてないわけがないし。。
小説の後半は、 サスペンスの要素が強くて、 グロテスクな部分もあり、、 「好きな小説」というわけにはいかないけれど、、 でも再読できて良かったかな。。 特にラストシーンが 87年6月、だったという発見は、 ものすごい現実感をもって迫って来ますね、 時代背景をあらためて知ると。。
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あ、、 だいじなこと。。
さきほど書いた、 ベルリンでのボウイの野外コンサートの事など、、 日曜日の NHK『映像の世紀』で放送されるそうです。 私も絶対見ないと、、
ボウイ、ビートルズらの貴重映像も。NHKスペシャル「新・映像の世紀」第5集、2/21放送(RO69)
、、上の写真に一緒に写した 『レコードコレクターズ』ボウイ追悼特集、、
買ってきたけど、、 まだ開いてません。。
すごく良い内容だって たくさんツイートされていたので、、 またじっくり読んでいこうと思います。 、、 まだまだ、、 ボウイのことばかり、、 考えてしまっている… お馬鹿さんな私。。。