ポール・オースターの新しい翻訳書 『ブルックリン・フォリーズ』(2005作品)が先月末出たらしい。。。 読みたいな、、と思って
検索したら、 この本の前に 『オラクル・ナイト』(2003作品)が出てる、、 タイトルにも見覚えがある、、 だけど内容がどうしても思い出せない、、 読んだっけ? 読んでない?? オースターなら読もうと思うはずなのに・・・
解せないままに新作を先に読むのはイヤだったので、 『オラクル・ナイト』を図書館で探してみた。。 最初のページを開いて、、 なんとなく謎が解けた。
「私は長いあいだ病気だった。」
という一文から始まる。。 その 死の淵まで行った主人公の、 退院後のすっかり体力を失ったところからやっと外へ歩き出す冒頭の部分を読んで、、 その様子が余りにも自分と似ていたことで きっと途中で挫折したんだ。。 前にも書いたように、 オースターの本は 「あるべき時に必ずやってくる」、、自分に。。 だから、 それがまだ当時は〈その時〉ではない、 と思えたんだろう。
それでも30ページほどは読んだ覚えがあった。 青いノートのことも覚えていた。。 ジョンの義理の弟の3D写真のところからが今回の始まりだった、、
***
われわれは〈偶然〉に支配されている、、 このテーマは昔からのオースターのもの。 そして〈予兆〉は 〈すでに起こったこと〉に変貌する、、 これも以前から変わらない。。
だけど、、 かつてのオースターが描いたような、 小さな〈奇跡〉は、 ここでは起こらない。 前作の 『幻影の書』のときにも書いたと思うけど、 9・11以後の世界には、 おとぎ話は存在しないかのよう。。。 今作は『幻影の書』よりも、 もっと過酷、、
つぎつぎと描かれる〈偶然〉は、 登場人物にただただ〈現実〉を突き付けるだけ。 小さな偶然の奇跡がもたらされるどころか、 これでもか、と息詰まる状況を次々運んでくるからくり人形のように作用する。 、、前半の〈物語中物語〉を楽しんでいたりすると・・・ (それはないよぉ オースターさん)、、て感じになる。。
オースターさんはもう〈魔法の青い石〉を信じなくなってしまったんだろか。 でも、 確かに〈青〉はこの小説にも登場する。 〈青いノート〉。。 主人公の復活の兆し、、
子供のときの〈青組〉、、 正しさ、 向上心、 好奇心、 信頼、、 守るべきものの象徴。。
…で、 それらの〈青〉は? 結局どうなった??
***
でも、 読みながら気づいていたんだ。。 やっぱりこの物語は、 「あるべき時にやってくる」って。。 作品の中の〈物語中物語〉が、 主人公に現実への〈態勢づくり〉として機能するように、、。
「世界の終わりを見た」、、
「人類の終わりをめぐる話」、、
「世界は狂ってしまったの?」、、
、、小説の中でなんどか出てくるこれらの言葉は、 世の中で起こることに絶望しないように、 身構えられるように、 そのために書かれているのかもしれないけれど、 でも、、、 2012年の現実世界は もっと もっと 狂っている。
〈物語中物語〉の主人公が新聞記事を読んで、 「ゴミ箱に棄てられた赤ん坊」の記事に衝撃を受ける部分がある。 、、でも、 私が愕然としたのは、 それを読んでいる私は、、(こんな記事くらいで…?)といぶかっている。 そんな自分のほうに愕然とした。。 子供を棄てるのも、 子供を虐待死させるのも、 理由も無く人を刺すのも、 人を轢き殺すのも、、 もうどれだけ見聞きしたことか、、。 「人類の終わりをめぐる話」は、、 日々の新聞にいくらでもある。 こんなひどい話は聞いたことがない、、とはもう誰も思わない。。
、、でも オースターさんはかつて こう書きました。
「つまりゴールドは、子供を殺した犯人が罰せられずに済んでしまうような世界を認めたくないのだ」 『幽霊たち』
だけど、、 〈青い奇跡〉はもう起こらない、、『オラクルナイト』の中では。。 どうしたらいいんだろう… この世界とどう向き合えばいいんだろう… オースターさんの答えは、、 最後に歩いている主人公の姿、、 なんだろうな。。
***
さっき書いた 〈棄てられた赤ん坊〉のことを読んだ晩、、 こんな夢を見た。 、、きっと、 気にしていたんだ、、 記憶の中で。。
夢の中で、、 (捨てられたかわからないけれど 親を失った)赤ん坊は、、 「大原女」たちのもとで育てられていた。 「大原女(おはらめ)」、、というのは京の街へ薪を売りにやってくる行商の女性たち(wiki>>)
どうして夢の中でとつぜん「大原女」が出てきたのか、 私の出身地でもないし、、 さっぱりわからないけれど、、 ともかく その女性たちの手によって赤ちゃんは無事に育てられていた、、 ゆくゆくは 「大原女」になるべく育てられていく、、。 私があやすと 赤ちゃんはにっこりと笑っていた。。 そこで目が覚めた。
これが、、 かろうじて私が世界にまだ絶望していないという答えなのかも。
夢の中の、、 ちいさな〈奇跡〉
新作 『ブルックリン・フォリーズ』は、、〈再生の物語〉だとか書いてある。。 期待しよう。。
ポール・オースターにまつわる過去ログ>>
検索したら、 この本の前に 『オラクル・ナイト』(2003作品)が出てる、、 タイトルにも見覚えがある、、 だけど内容がどうしても思い出せない、、 読んだっけ? 読んでない?? オースターなら読もうと思うはずなのに・・・
解せないままに新作を先に読むのはイヤだったので、 『オラクル・ナイト』を図書館で探してみた。。 最初のページを開いて、、 なんとなく謎が解けた。
「私は長いあいだ病気だった。」
という一文から始まる。。 その 死の淵まで行った主人公の、 退院後のすっかり体力を失ったところからやっと外へ歩き出す冒頭の部分を読んで、、 その様子が余りにも自分と似ていたことで きっと途中で挫折したんだ。。 前にも書いたように、 オースターの本は 「あるべき時に必ずやってくる」、、自分に。。 だから、 それがまだ当時は〈その時〉ではない、 と思えたんだろう。
それでも30ページほどは読んだ覚えがあった。 青いノートのことも覚えていた。。 ジョンの義理の弟の3D写真のところからが今回の始まりだった、、
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われわれは〈偶然〉に支配されている、、 このテーマは昔からのオースターのもの。 そして〈予兆〉は 〈すでに起こったこと〉に変貌する、、 これも以前から変わらない。。
だけど、、 かつてのオースターが描いたような、 小さな〈奇跡〉は、 ここでは起こらない。 前作の 『幻影の書』のときにも書いたと思うけど、 9・11以後の世界には、 おとぎ話は存在しないかのよう。。。 今作は『幻影の書』よりも、 もっと過酷、、
つぎつぎと描かれる〈偶然〉は、 登場人物にただただ〈現実〉を突き付けるだけ。 小さな偶然の奇跡がもたらされるどころか、 これでもか、と息詰まる状況を次々運んでくるからくり人形のように作用する。 、、前半の〈物語中物語〉を楽しんでいたりすると・・・ (それはないよぉ オースターさん)、、て感じになる。。
オースターさんはもう〈魔法の青い石〉を信じなくなってしまったんだろか。 でも、 確かに〈青〉はこの小説にも登場する。 〈青いノート〉。。 主人公の復活の兆し、、
子供のときの〈青組〉、、 正しさ、 向上心、 好奇心、 信頼、、 守るべきものの象徴。。
…で、 それらの〈青〉は? 結局どうなった??
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でも、 読みながら気づいていたんだ。。 やっぱりこの物語は、 「あるべき時にやってくる」って。。 作品の中の〈物語中物語〉が、 主人公に現実への〈態勢づくり〉として機能するように、、。
「世界の終わりを見た」、、
「人類の終わりをめぐる話」、、
「世界は狂ってしまったの?」、、
、、小説の中でなんどか出てくるこれらの言葉は、 世の中で起こることに絶望しないように、 身構えられるように、 そのために書かれているのかもしれないけれど、 でも、、、 2012年の現実世界は もっと もっと 狂っている。
〈物語中物語〉の主人公が新聞記事を読んで、 「ゴミ箱に棄てられた赤ん坊」の記事に衝撃を受ける部分がある。 、、でも、 私が愕然としたのは、 それを読んでいる私は、、(こんな記事くらいで…?)といぶかっている。 そんな自分のほうに愕然とした。。 子供を棄てるのも、 子供を虐待死させるのも、 理由も無く人を刺すのも、 人を轢き殺すのも、、 もうどれだけ見聞きしたことか、、。 「人類の終わりをめぐる話」は、、 日々の新聞にいくらでもある。 こんなひどい話は聞いたことがない、、とはもう誰も思わない。。
、、でも オースターさんはかつて こう書きました。
「つまりゴールドは、子供を殺した犯人が罰せられずに済んでしまうような世界を認めたくないのだ」 『幽霊たち』
だけど、、 〈青い奇跡〉はもう起こらない、、『オラクルナイト』の中では。。 どうしたらいいんだろう… この世界とどう向き合えばいいんだろう… オースターさんの答えは、、 最後に歩いている主人公の姿、、 なんだろうな。。
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さっき書いた 〈棄てられた赤ん坊〉のことを読んだ晩、、 こんな夢を見た。 、、きっと、 気にしていたんだ、、 記憶の中で。。
夢の中で、、 (捨てられたかわからないけれど 親を失った)赤ん坊は、、 「大原女」たちのもとで育てられていた。 「大原女(おはらめ)」、、というのは京の街へ薪を売りにやってくる行商の女性たち(wiki>>)
どうして夢の中でとつぜん「大原女」が出てきたのか、 私の出身地でもないし、、 さっぱりわからないけれど、、 ともかく その女性たちの手によって赤ちゃんは無事に育てられていた、、 ゆくゆくは 「大原女」になるべく育てられていく、、。 私があやすと 赤ちゃんはにっこりと笑っていた。。 そこで目が覚めた。
これが、、 かろうじて私が世界にまだ絶望していないという答えなのかも。
夢の中の、、 ちいさな〈奇跡〉
新作 『ブルックリン・フォリーズ』は、、〈再生の物語〉だとか書いてある。。 期待しよう。。
ポール・オースターにまつわる過去ログ>>