星のひとかけ

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中林忠良銅版画展―腐蝕の旅路 O美術館

2019-11-11 | アートにまつわるあれこれ
大崎駅からすぐの О美術館で 『中林忠良銅版画展 ―腐蝕の旅路』を見てきました。

О(オー)美術館、 存在はずっと前から知っていましたが実は行くの初めてです。 現代アートを主に展示していたイメージで、 品川では原美術館へは幾度も行きましたが、 O美術館にはなぜか縁が無く、、 どこにあるのかも知らず
大崎駅の北改札からすぐの大崎ニューシティという複合施設の2階、、 居酒屋さんやお食事処や飲食店がならぶフロアの奥に おもむろにO美術館があらわれるのにはちょっとびっくり(笑) でもこんなアクセスの良い場所に こんな素敵な広々とした展示スペースがあるのはとっても利用価値のある場所だなぁ…と。。

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エッチングを初めてやったのは中学の授業です。 私は美術の才能はあまり無かったけれど、繊細な線とモノトーンの詩的な世界が刻まれる腐蝕銅版画の制作は とても楽しかった記憶があります。 そのときは校庭の樹木(桜だったかな)をスケッチしました。

中林忠良さんのお名前は(ごめんなさい) 存じ上げていなかったのですが、 この版画展の案内を見つけた時に すぐに「行ってみたい!」と思ったのは、 銅版画の世界が好きな事と、 そこに載っていた小さな写真の中の画に なにか魅かれるものを感じたからでした。


作品展示は時代を追って構成されていて、 70年代の「囚われ」シリーズ、 80年代の「転移」シリーズ、 近年の自然や光をテーマにしたシリーズなどの他、 金子光晴の詩と中林さんの版画で構成された 詩画集『大腐爛頌』(だいふらんしょう)など、 文章と版画作品が一緒に展示されているものもありました。

中林さん、 現在82歳とのことで、 70年代の作品や金子光晴氏との作品などでは あの時代の表現者が社会に向けていた先鋭的な視線と言葉がうねりあっているようでしたし、、 時が移るとともに 見つめておられるテーマの変化がうまれ、 自然や光へのまなざしが深まっていく様子や、 東日本大震災を経験したのちの自然や生命への想い、、 
私は中林さんの子供にあたる世代ですが それでも自分も70年代、80年代そして現代へと生きてきたからか、 時を経るにしたがって自然や光へ親しみを覚えていく過程がなんだかとても親しみというか 同調というか、、 そのような共鳴をおぼえながら見ていました。







中でも、 展示の仕方も素敵だったのは、 上のフォトの右側に光っているスペースがありますが、 ゾーンを区切る柱の部分に四角いガラスケースが組み込まれていて その中に 版画に手彩色を施した作品と中林さんのエッセイが一緒に展示されていて、 その文章を読みながら版画作品を拝見していると、 中林さんの日常の想いやアトリエのある蓼科の自然の中での暮らし、 友やお弟子さんらとの交流などが読みとれて、 きっと優しい方なのだろうなぁ… とお人柄を想像していました。
(これらエッセイは 社会福祉法人済生会の機関誌に掲載されたもので、 その表紙画を50年も描かれていたそうです、、 50年!!てすごいことだと思います… 済生会といえばきっと病院の患者さんなどもご覧になるのでしょう… 中林さんのエッセイ、 ほんの一部を読んだだけですが温もりのある文章でした…)



今回、 すべて撮影OKとのことでしたので いくつか載せさせていただきました。
上記の作品の中で書かれている 冬の朝の凍った窓ガラスに咲く氷の結晶、、 私も子供時代の懐かしい記憶の中にあるものです。 そして、 昨年の冬に読んだ『シューベルトの冬の旅』でもこの氷の葉模様のことが歌われていましたね(>>

中林さんは蓼科のアトリエで冬を過ごされることもあるそうで、 その情景は 堀辰雄が書いた富士見高原での冬(『風立ちぬ』の終章)のことも想い出されます(>>

そんな風に、 中林さんの銅版画にはなにか文学作品と共鳴する情趣が感じられ、 初めて見た作品展でしたが いろいろと記憶が喚起される作品展でした。


今回の美術展を紹介する 品川区公式チャンネルのyoutube動画がありました。くわしく説明されていて作品についても紹介されています⤵
しながわのチカラ 腐蝕銅版画家中林忠良の世界


〇〇コレクションとか多数の画家を一堂に集めた展覧会もワクワクがあるけれど、 やはりひとりの作家さんの人生や創造の歩みが作品を通して伝わってくるような美術展は、 見させて頂くことで自分もどこか充実した気持ちになれる、、 とても良かったです。


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