prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「都会を動かす手」

2006年03月11日 | 映画
1963年製作。フランチェスコ・ロージ監督、ロッド・スタイガー主演。
以前イタリア文化会館で上映されたのを字幕なしで見たが、まるで理解できなかった。日本公開の予定もあったはずだが(佐藤忠男の評論集に収録されている)中止になり、DVDも出ていないので今回の字幕つき放映(3/4)はありがたい。

40年以上前のイタリア映画だというのに、描かれている政治の腐敗ぶりは呆れるほど今の日本そのまんま。
土建屋の土地の不法取得と地上げ、手抜き工事による死亡事故、選挙を乗り越えることで禊が済んだことにして罪を逃れる策謀、特別法をこしらえてその場をごまかす、などなど。
「政治にモラルはない」「書類を調べるのに最短で半年、まず二年はかかる」などの台詞もそのまんま通用する。

紛糾する議会や退去を強制される住人の抵抗などの、大勢の人間が押し合いへし合いして自己主張してぶつかりあう場面のヴォリュームがすごい。このあたりは日本では真似できないところで、おそらく素人を多く使っているのだろうが、リアルであると同時に隅に写っている奴まで芝居っ気たっぷり。ロージの演出力の見せ場でもある。
左翼があまり青っぽくなくてタフな感じなのもお国柄か。

ほとんどの場面でエネルギッシュに振舞っているスタイガーが教会にお参りする場面で、ろうそくに火をつける代わりに偽のろうそくの電気の明かりがついていくのが、内面の空虚さに対応しているよう。

ラストに出る字幕はイタリア語だったのでよく読めなかったが、これはフィクションで実際の人間や事件に似ているのは偶然云々といっているみたい。これは明らかに文句言われた時のエクスキューズ。途中でぶちっと切れた感じで終わるのは、モデルになった事件が製作当時現在進行形だったかららしい。
カメラ・オペレータにのちにロージの大半の作品を担当するパスカリーノ・デ・サンティスの名前が見える。

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