prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ルー・サロメ 善悪の彼岸 ノーカット版」

2006年03月29日 | 映画
ニーチェとパウル・レー、ルー・サロメの男二人と女一人の三位一体などと形容もされているが、男の一人パウル・レーは男色家でもっぱら傍観者の立場をとるので、ちょっと違う気がした。
レーは聖セバスチャン(レーとルーの出会いの場所がセバスチャン通り)の殉教風の立って縛られた形で殺される。レー役のロバート・パウエルは「ナザレのイエス」でキリスト役をしているので、初期キリスト教が持っていたホモ的な要素と、ひねった形でつなげているよう。
セバスチャンのように矢で射られるのに似て切り刻まれるのはニーチェの脳梅毒による幻覚に現れる別人で、レーは溺れ死ぬという調子なのもあくまで外部に置かれた扱いということか。

リリアーナ・カバーニ作品らしく、官能と観念がねじれてつながっている。あちこちで点描されるユダヤ人差別の持つ意味、馬をワーグナーだと思うニーチェのギリシャのディオニソス的志向性など、難しくてどう捕らえていいのかわからないところも多い。ただ感じるだけで通すというのも難しい。

ニーチェに批判されるところとなったやたら禁欲的なルター派キリスト教モラル代表の妹が、ルーが家の中に入ってきたのに嫉妬して鶏の丸焼きをめりめりとむしる異様なシーンがあるが、「イレイザーヘッド」でも鶏の丸焼きがセクシュアルな扱いで出てきたし、「トム・ジョーンズの華麗な冒険」では精力剤扱いだった。

ドミニク・サンダの何考えてるのかわからない冷たい美貌はぴったり。エルランド・ヨセフソンのニーチェは「ノスタルジア」のドメニコの聖なる狂人を逆さまにしたように俗に徹して狂気に至る。

室内シーンもロケセットで撮っているようなアルマンド・ナンヌッツィの撮影、裸とコントラストを成すようなピエロ・トージの肌を覆いまくる衣装。

初公開時は40箇所以上修正されたのが今回は4箇所にとどまったというが、どういう基準で修正したのだろう。ヘアだけならパスするが、性器となるとダメなのか、少女の性器は見えてるのだから男の性器に限って修正しているのかと思ったら見えてるところもある。勃起しているとダメなのか。そのくせ一番ゲッという感じの紐パンツだけの全裸男二人のダンスはもうえんえんと無修正。
一言で言うと、まだ修正なんてやってるのかい。
(☆☆☆★)

にほんブログ村 映画ブログへ

ルー・サロメ 善悪の彼岸 ノーカット版 - goo 映画

ルー・サロメ 善悪の彼岸 ノーカット版 - Amazon