オープニングで蝶を飛ぶところ(CGだろうが、よくできている)で、黒木和雄監督の旧作「とべない沈黙」(1966)の本物の蝶を手持ちでえんえんと追った驚異のカメラワークを思い出した。
あれは蝶を狂言回しにした幻想と現実を往復する日本巡り、といった趣向の映画だったが、ここでも蝶は胡蝶の夢ではないが、生死のあわい、戦争と平和、過去と現在とをつなぐ文字通りの蝶番のような役割を果たしているよう。
主人公の監督の分身と思われる少年は、しきりと死にたがる。死ぬことばかり教え込まれているせいもあるだろうし、父親が死んだかどうかわからないせいもあるだろう。それと精神的疲労から来る投げやりな態度。
「父と暮せば」の宮沢りえも原爆から生き残ったことをすまながる感覚に囚われていたが、死者に支えられて、あるいは許されてある生の感覚、というのは靖国問題の能書きで言われたりすると釈然としないが、ここでは腑に落ちる。
匂いたつような田や山の緑の撮影(田村正毅)。
アメリカ進駐軍に向かって日本人が本当に竹槍で突っ込んでいく光景というのを、初めて見た。あれでからかい半分に米兵が威嚇射撃した銃弾が、蝶に当たる。あれで砕けたのは何だったか。
(☆☆☆★★)

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あれは蝶を狂言回しにした幻想と現実を往復する日本巡り、といった趣向の映画だったが、ここでも蝶は胡蝶の夢ではないが、生死のあわい、戦争と平和、過去と現在とをつなぐ文字通りの蝶番のような役割を果たしているよう。
主人公の監督の分身と思われる少年は、しきりと死にたがる。死ぬことばかり教え込まれているせいもあるだろうし、父親が死んだかどうかわからないせいもあるだろう。それと精神的疲労から来る投げやりな態度。
「父と暮せば」の宮沢りえも原爆から生き残ったことをすまながる感覚に囚われていたが、死者に支えられて、あるいは許されてある生の感覚、というのは靖国問題の能書きで言われたりすると釈然としないが、ここでは腑に落ちる。
匂いたつような田や山の緑の撮影(田村正毅)。
アメリカ進駐軍に向かって日本人が本当に竹槍で突っ込んでいく光景というのを、初めて見た。あれでからかい半分に米兵が威嚇射撃した銃弾が、蝶に当たる。あれで砕けたのは何だったか。
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