prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ミッドナイト・イン・パリ」

2012年06月10日 | 映画
ドラマ抜きでただパリで雨が降ってやんで日が暮れて夜になって、といった情景を積み重ねたオープニングが素晴らしい。撮影は「セブン」のダリウス・コンジ(B班が撮っている可能性もあるが)。

ウディ・アレン作品としては「マンハッタン」のオープニング以来の「街」そのものに対する愛情が出た格好だが、アレンが生まれ育ったニューヨークではないのが皮肉。ポランスキーもだが、アメリカが何かと不寛容になった現われとも思える。
興行的失敗が続いてパリに都落ちしていたロバート・アルトマンがNYを舞台にした「ニューヨークの青い鳥」のラストでカメラが引いたらエッフェル塔が見える、という人を食った演出をしていたが、アレンはアメリカには戻らないだろう。

昔はよかった、という人間が実際に昔に遡ってみたら昔の人も昔はよかったというあたりも含めて、ジェラール・フィリップ主演 ルネ・クレール監督の「夜ごとの美女」に似てますね。あちらの方が恐竜時代にまで戻ってしまい、自動車飛ばして時間軸を貫いて駆け抜けるといった具合に、奇想天外さでは上だったと思う。

今日ではどれほど高名な芸術家でも活動していた当時は悩みや煩悩を抱えた一個の人間、というのはあたりまえといえばあたりまえで、それ以前に当人ではなく俳優が扮して登場する段階で実物がまとうオーラは自動的にこぼれ落ちてしまうから、あまりぴりっとしません。

人物として機能するのはフィアンセと画家たちのモデルになった女性とガートルード・スタインといった女性たちが主なのはアレン作品の常で、芸術家たちは概してエゴイズムに支配されて他の芸術家=主人公をサポートする役にはあまり立たない。
芸術や芸術家を支えるのは他の芸術や芸術家であるよりサロンの主催者やモデルなど彼らにつくす人間たちで、特に恋の対象になる女性=ミューズということになりそう。このモデルを描くあたりが一番画面に艶が出ます。

主人公が小説を書きたがっているハリウッドの脚本家という設定なので、のちにハリウッドで脚本書きに携わって失敗するスコット・フィッツジュラルドが出てきた時は、「今映画に誘われているんだ」「やめておいた方がいいですよ」といったやりとりでもあるかと思ったら、ありませんね。酒で命を縮めるから、禁酒を勧めるかと思ったらそうでもない。
敬愛する作家が身を持ち崩すかどうかというのを気にしないものだろうか。

ブニュエルに「皆殺しの天使」のアイデアを話したら「なんで出られないんだ」と返されるあたり、あまりおもしろくないし、ちょっとブニュエルを矮小化してないかと疑問。
せっかくダリと一緒にいるところを出したのだから、掌に置いた角砂糖に蟻がたかっているのを見て騒いでいるところとか出せばいいのに。
ヘミングウェイ役のコリー・ストールがテレビの「Law & Order LA」のスキンヘッドの刑事役だとは思わなかった。髪の毛があると印象がまるで変る。
(☆☆☆★)

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6月9日(土)のつぶやき

2012年06月10日 | 映画
08:28 from ブクログ(booklog.jp)
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