密集したビル群や山岳地帯のような縦に長い風景を上下逆にした風景(映画の「ノストラダムスの大予言」みたい)の奇想がまず魅力。
上の地球に住む住人を含めた物体は上の地球の引力に従うので、磁石のSN極ごとの引っ張り合いみたいな図になるという形でさまざまなバリエーションの不思議な光景を展開して、監督の才気とデジタル技術の成果を見せる。
あと、画面構成の全体的な奇想だけでなく、色彩や細かい調度品といったディテールにまで美意識が行き渡っている。
「上」の世界の女の子と「下」の世界の男の子の格差を超えた恋が話の軸になるのだが、本来ふたつの星はどっちが上とか下とかいうのではなくて同格で視点を変えれば上下が簡単にひっくり返ってしまうわけで、ここで設定とお話の間にちょっと無理が出てくるのと、アクション・シーンの空間処理にさすがに混乱するところがある。
父親の日本公開作というとピアソラ三部作とでもいうべき「タンゴ ガルデルの亡命」「スール」「ラテンアメリカ 光と影の詩」があるわけだが、ちらっと「上」の世界のボールルームでタンゴを踊っているシーンがある。そういえば「ガルデルの亡命」の主人公の名前はJUAN=ホワンでした。
(☆☆☆★★)
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アップサイドダウン 重力の恋人 - シネマトゥデイ
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